# 第三話 ## 「空から女子高生が降ってきた日」
# 第三話
## 「空から女子高生が降ってきた日」
「ぎゃああああああああ!!」
夜空に響く絶叫。
全員が見上げる。
空から、
何かが落ちてくる。
いや、
“誰か”だ。
「はぁ!?」
レオンが目を見開く。
「人!?」
アレンも叫ぶ。
「落ちてきてますけど!?」
女子高生は泣きながら落下していた。
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅ!!」
ドゴォォォォォン!!
ものすごい音と共に、
屋台通りの真ん中へ墜落。
土煙。
屋台が吹っ飛ぶ。
店主が叫ぶ。
「俺の焼き鳥ぃぃぃ!!」
静寂。
誰も動けない。
やがて。
煙の中から。
「うぅ……いたた……」
制服姿の少女が、
ふらふらと立ち上がった。
長い黒髪。
見慣れない服。
スカート。
そして、
明らかにこの世界の人間じゃない雰囲気。
少女は周囲を見回した。
鎧姿の騎士。
ローブ姿の魔王。
剣を持つ勇者。
壊れた屋台。
そして。
「……え?」
数秒止まってから。
「ここどこ!?」
大パニック。
騎士たちも混乱。
「新手の魔術か!?」
「いや空から降ってきたぞ!?」
「勇者様! 指示を!」
「いや僕も混乱してる!!」
アレン、珍しく大声。
レオンは頭を抱えた。
「なんなんだ今日……」
少女は涙目だった。
「スマホ圏外なんだけど!? え!? 夢!? ドッキリ!?」
「すまほ?」
「けんがい?」
全員知らない単語。
少女はさらに混乱した。
「え、待って待って待って!! なんでみんなコスプレしてるの!?」
騎士たちが傷つく。
アレンは恐る恐る聞いた。
「……君、誰?」
少女は息を整えてから言った。
「天野ひまり。高校二年」
誰もわからない。
「こうこう?」
「二年?」
「天界の階級か?」
「違うわ!!」
ひまりは叫んだ。
「日本! 東京! わかる!?」
全員首を傾げる。
ひまりの顔から血の気が引いた。
「……うそでしょ」
静かになる。
夜風だけが吹いた。
レオンは、
少しだけ真面目な顔になる。
「……異世界転移、か」
「え?」
「昔、文献で読んだことがある」
アレンも驚く。
「本当に存在したんですか」
「たぶん」
ひまりは青ざめた。
「い、異世界……?」
レオンは頷く。
「多分、お前は元の世界から飛ばされた」
数秒沈黙。
そして。
「いやいやいやいや!!」
ひまり発狂。
「そんなわけないじゃん!!」
「でも現実だ」
「帰る!!」
「方法は知らん」
「最悪ぅぅぅぅ!!」
ひまり、
その場に崩れ落ちる。
騎士たちは困惑していた。
だがその時。
「……魔王」
騎士の一人が剣を向ける。
空気が変わる。
現実に戻る。
勇者と魔王。
敵同士。
ひまりはきょとんとした。
「……魔王?」
騎士が叫ぶ。
「危険です! 離れてください!」
ひまりはレオンを見る。
黒いローブ。
赤い瞳。
確かにラスボス感ある。
でも。
「……え、この人?」
ひまりは首を傾げた。
「めっちゃ疲れてる顔してるけど」
沈黙。
レオン、地味に傷つく。
アレンが吹き出した。
「ふっ……」
「笑うな勇者」
「いやだって……」
騎士たちは混乱していた。
勇者が笑ってる。
しかも魔王相手に。
意味がわからない。
ひまりは今度はアレンを見る。
「で、そっちは?」
「……勇者です」
「えっ」
ひまりは二人を交互に見た。
「……魔王と勇者?」
「はい」
「……戦わないの?」
レオンとアレンは顔を見合わせた。
そして。
同時にため息を吐いた。
「できれば休みたい」
「今日はもう帰りたいです」
ひまりはぽかんとした後。
「なにその人たち」
と、
めちゃくちゃ素で言った。
その瞬間。
レオンとアレンは、
なぜか少しだけ笑ってしまった。
たぶん。
この少女だけだった。
“魔王”でも、
“勇者”でもなく。
ただの疲れた人間として、
二人を見たのは。




