第二章第四十三話「魔剣の迷宮、らしきもの!」
「え……? 『量産型エスカリあずきアイスバーソード+1000』? なんです? それ?」
「え? 普通の量産型エクスカリバーにあずきバーとアイスソードを合成して強化しまくっただけのよくある魔剣ですけど」
よくある魔剣らしい。んな馬鹿な。
そんな頭のおかしい事実を平然と受け入れ、その事実が受け入れられない瑠璃と紅葉に首を傾げているアレックスに対し、その魔剣とついでに魔剣の迷宮について詳しく聞いてみるが、どうやらこの世界にはそうした魔剣の類はどこにでもあって、何処にでも売っているものらしい。
祇祁にも聞くと、単体の量産型エクスカリバーなどであれば、黎明学園の売店にも売っている代物らしい。なるほどふざけんな。お値段一億? ちょっと高い。
また、その剣のついでに聞いたものの、今回の本題である魔剣の迷宮については、その名の通り、剣が生み出す迷宮らしい。
もっとも、今回の『量産型エスカリあずきアイスバーソード+1000』が魔剣なので、魔剣の迷宮という呼び方だが、別に高度な魔力や妖力、その他のエネルギーを持った代物なら何でも迷宮を作れるらしく、魔銃の迷宮や魔盾の迷宮などは元より、魔漬物石の迷宮や魔爪楊枝の迷宮などもある様だ。わけわからん。……いや、誰が作ったんだよそんなの。
[わけわからん。……いや、誰が作ったんだよそんなの。]
(ツッコミの多い中空の文だなぁ……)
そうして、紅葉は所々意思がある様に思える中空の文を読みながらアレックスの話を聞いて行くが、そうした様々なアイテムが迷宮を形作るのは、自分の持ち主にふさわしい相手を探す様に設計されていたり、破壊されない様に自身や持ち主などを守る為の防御機能だったり、インテリジェンス化して意思を持った為、気まぐれに迷宮を作って遊んでいるだけだったりと、様々なのだそうだ。
「そういう迷宮はこの世界ではごろごろしてますね! また、迷宮を形作っているアイテムを回収したら、それと同時に地殻変動起こして消えちゃう迷宮も多いので、私達の拠点は攻略だけした後、魔剣の魔力が切れない様に定期的に魔石を補充しつつ、中だけ使用してる感じです!」
「元々はここの氷室っぽい感じの地下冷凍庫だったみたいなんだけど、その冷気を求めて移動した魔剣が迷宮を作ったらしくって、丁度良いから利用してるの」
「そこなら食糧とかも保存出来ますし、迷宮内には回復ポイントもありますからね! 稀にモンスターも湧きますけど!!」
「それ拠点じゃなくてダンジョンだよね!? え、モンスターとか大丈夫なの?」
「美味しいですよね? モンスター」
「食べるんですか……。いや、魔剣が作り出した魔法生物ならありかもしれませんけど……」
「食糧が保存出来て、食材も出て来る。一石二鳥」
何かアレックスと鴉亜がうんうんと頷いているが、何をどう取り繕おうとそれは拠点ではなくダンジョンである。
とはいえ、湧いたモンスターはしっかりリスポーン地点に罠を仕掛けてアイテムに変えているらしく、その迷宮からモンスターが這い出て来る事は無いらしい。
そして、もう一つ。紅葉はその話の中に少しの光明となる疑問点を見出した為、それについて二人に質問する。
「ん? 冷気を求めて魔剣が移動したって……、氷室がまだ生きてるの?」
そう、それは設備稼働に関する疑問。
もし、設備が稼働している所があるとすれば、その周囲には損壊の少ない場所もあるかもしれない。
そんな紅葉の予測に対し、特にその辺りの事は考えていなかった鴉亜は、そんな紅葉の予測より、更に凄い事象を瑠璃と紅葉の前で実演する。
「あぁ、このあたりはエネルギーの供給が途絶えただけで、配線は生きてるみたいだから、魔剣の魔力で稼働するの。ほら、こんな感じ」
そういって鴉亜が少し壁に触れて魔力を流し込むと、近くの街灯が点灯する。
「!」
「これは……」
そう、別に、動力源や動力システムなどなくても、配線に直接エネルギーを流し込めば、この世界のものは動くのである。
(そういえばレティアさんも、壊れた部屋に魔力流して再生させてたっけ……)
そこで、紅葉は思い付く。
「! って、配線だけで稼働出来るなら再生能力も使えたりするんじゃ……」
「「!!」」
その言葉に、瑠璃とアレックスは、頭の上にエクスクラメーションマークを発生させて驚き、祇祁と鴉亜とライベリーも、それぞれ「あー、損傷の少ない場所なら在り得るかも?」「探して見る?」「まぁ、多少住む場所、程度ならいけるかもしれませんしねぇ」と、互いに顔を見合わせて、ある程度肯定的な意見を述べる。
ただ、後者三人の答えが肯定的なだけで、そこまで煮え切らないのは、街灯の灯や氷室の冷気などとは違い、再生能力については、それを動かす神経配線の他に、建材となる蔗糖を主成分とした都市血液と、それを運ぶ血管となる都市導管の存在が不可欠である為、都市本体からの血液補充が停止している以上、導管内に残った都市血液の分だけでは、そこまでの再生は期待出来ないからである。
[そこまでの再生は期待出来ないからである。]
(都市に血液が流れてるのか……、なんか完全に生物って感じ……。しかも主成分が葡萄糖じゃなくて蔗糖って事は、動物系じゃなくて植物系……?)
とはいえ、ライベリーの話していた通り、多少の再生は見込める為、一行は周囲を手分けして、現状は住めなくても、半壊程度の損壊で、おおかた形の残っている校舎を捜索する。
「ここなら……」
そして、それに該当する校舎をいち早く発見した瑠璃が、その壁に触れて魔力を注いでいくと……、その校舎は、息を吹き返したかの如く、みるみるうちに再生し、元の形を取り戻していく。
「お、行けた?」
その様子は、昨日見たのと同じ。
中枢となる部分からは、脊椎の様な構造物が生え出て柱を成し、その柱から肋骨の様な構造物が生え出て梁を成す。
そうして、骨の枠組みが出来た後、その骨からは、根の様な繊維が生え出て壁を成し、よく見ると天井や床には、蔦の様な繊維が伸びて来てから、葉がその隙間を覆い、やがて壁の根と同じ様に膨れて同化し、一枚の白い殻の隔壁となる。
勿論、今回の場合は全ての配線が無事というわけではなく、都市血液も不十分なので、その再生は途中で止まり、校舎そのものは未だ半壊したまま、幾つかの教室と廊下が再生した程度だが、再生した教室の方は、住むのに十分な余裕がある。
その、ある意味何処か神秘性と荒廃性を兼ね備えた、独特のノスタルジックさを醸す光景に、一行は暫し感嘆と共に目を奪われるものの、ある程度の再生が完了し、再生の速度が落ちて来た所で、祇祁がこの場所を瑠璃と紅葉の共同私有地として登録し始める。
「ん! 大丈夫そうだね! おっけー♪ それじゃ、この校舎を瑠璃ちゃんと紅葉ちゃんの共同私有地として登録しとくね♪」
そうして流れる様に登録された土地は、よく見るとその言葉通り、この半壊した校舎一つを丸ごと大雑把に登録してあったりするが、よくよく考えると、この黎明学園の敷地は全て祇祁のものであり、周りに土地の争奪が起こりそうな相手もいなければ、先程のライベリーや勇者ペアの土地に関しても、正確に工場や氷室の形を登録してあるのではなく、その工場や氷室を囲む様に雑な四角形が登録されているだけだったので、その辺りはそれで良いのだろう。
もし何らかの事件を起こそうものなら、事件を起こした者が追放される。
貸し与え地とはそういうものである。
(……もしかして土地の権利が制限されてるのって、その辺りでも諍いが起きない様にしてあるのかな……)
そうして、紅葉はこの世界の裏事情にも考えを及ばせるが、何はともあれ、これで瑠璃と紅葉は、ようやく自分達の拠点を手に入れる事が出来たのである。
*拠点『廃校舎』を手に入れた!*




