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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第二章『咎人と断罪者』
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第二章第四十二話「拠点製作☆地質調査!」

 勇者『ああああ』と勇者『アレックス』。


 その名を持つ彼女らがどのような能力を持つのかは不明だが、先程祇祁が言っていた勇者の概念存在としては、彼女達ほど的を得た相手はいないだろう。


 ……え? 二人共その事に驚いてたんじゃないって? 知るかそんなもん。


[知るかそんなもん。]


(…………、相変わらず雑だな、この中空の文……)


 紅葉が何か色々と雑な中空の文を胡乱気な瞳で見ているが、そうして驚く二人に対し紅葉が勇者『アレックス』と勇者『ああああ』に関する自身の持つ知識を簡単に説明した所で、その様子を後ろで見ていた祇祁が合流し、事情を説明する。



「かくかくしかじか!」


「まるまるうまうま、というわけですね! わかりました!」



 …………は?



「え? わかったの? 何が?」


 その唐突な未知の言語に対し、紅葉はつい真顔で返答してしまうが、アレックスの方は先程の双方8文字だけのやり取りでおおよその事態を把握したらしく、どんと胸を張りながらに、紅葉達への協力を申し出る。


「えぇ! 圧縮言語は基本ですから! この辺りに拠点を探してるんですよね? お手伝いしましょう! 何せ私! 勇者ですので!!」


 何も納得がいかないが、とりあえず話は伝わっており、勇者なので手伝ってくれるらしい。


 そのあまりの物分かりの良さに、割と豊満なボディに対して、実はこいつ頭の中はスカスカなんじゃないかと紅葉は危惧するものの、説明を聞いたアレックスの方は既にやる気満々らしく……、


 収穫の手を止め、鴉亜の肩に両手をつくと、軽い身のこなしで曲芸師の様に鴉亜の後ろで開脚して足を肩から外し、一度手を支点に、身体を伸ばして、鴉亜の上で逆立ちしてから、ハンドスプリングの要領で空中に跳び上がり、瑠璃と鴉亜の間に着地すると、胸を張ってにっこりと笑いながら、瑠璃に向かって手を伸ばす。


「勇者とは助ける者! どーんとお任せください! ね? 鴉亜ちゃん!」


「え、やだけどメドい」


―ガシッ―


「さぁ! 行きましょうか!」


「あ……、私の意見は聞かれない感じ。でも何処探すつもり? この辺住める場所なんて無いよ?」


「………………………どこを探しましょうか!」


「考えてなかったかー」


 随分陰陽の激しい凸凹コンビだが、鴉亜の方も本気で断ったわけではなく単なる冗談だった様で、明後日の方向を向いて進撃しようとするアレックスを逆に引き止め、上着のポケットから携帯端末を取り出して、周辺の地図を確認しつつ、瑠璃に希望の所在を聞き始める。


「瑠璃ー、……さん的にはどんな感じ? 仮小屋で良いならその辺の木材ですぐに作れると思うけど、しっかりした拠点が欲しい感じ?」


 そうして聞く鴉亜は、多少瑠璃に気後れしている様子があるものの、よく見ると既に知っているらしき祇祁やライベリーに対しては平然としており、単に人見知りのきらいがあるだけらしい。


 それを見て取った瑠璃は「あ、私の事は瑠璃で良いですよ! 紅葉さんの事も呼び捨てで!」と、紅葉を巻き込みつつ明るく接し、画面を覗くアレックスとは反対側から鴉亜を挟んでアレックスの肩にまで手を伸ばしつつ、要望を伝える。


「んー、とりあえず快適に住めればなんでもいいですし、既存の施設が使えない様なら私が魔法で新築しても良いんですが……、なんかこの世界、魔力だけじゃなくて色んな力が渦巻いてる関係で、その辺の物質も変な合成物になってるみたいなんですよね。これで作成するとおかしなものになりそうな気がしまして……」


 そうして、わちゃわちゃと密集する3人に対し、祇祁がその辺の石を拾って分析しながらに会話に混ざり、ライベリーも足元の土から小さなゴーレムを作りつつ、紅葉に伸し掛かりながら、それらの知識を補足する。


「あぁ、この世界だとその辺の石や砂も全部魔石や妖石の類だし、いちいち分別とかやってらんないよね。うん、これも氷系の魔石だ」


「かといって、一時的なものならまだしも、永続する物質をエネルギーのみで作り出そうとするとかなりの魔力を消費しますからねぇ……」


 そう言いつつ、ライベリーが作り上げたゴーレムも、やはり不純物混じりなせいか、作ってすぐに至る所からひび割れ、崩れ落ちてしまう。


 どうやら、この世界の物質は不純物が多く、魔法で固めてもその不純物のせいで亀裂が入り、すぐに壊れてしまうらしい。


 そうした物質変化に興味を持った紅葉は、自身に伸し掛かって来たライベリーを軽く引き剥がしながら、その詳細を尋ねる。


「ふーん……、それってどれぐらい持つ感じ?」


 そうして尋ねられたライベリーは、ぐへぇーと引き剥がされながらも立ち直し、腰と唇に手を当てつつ、その詳細を語る。


「んん? そぉですねぇ……。物質が元素を持っていない世界のものだと、簡単なものでも、一度固めてしまえば風化して崩れるまでは持つんですけどぉ……。この世界のものを使用した場合は、簡易なものだと持って数分、割と硬めに練れば数時間って所でしょうかねぇ? 本気でガッチガチに固めても一週間は持たないと思いますよぉ?」


 また、そのライベリーの意見に加え、祇祁が携帯端末を取り出しながらに、新築する場合の材料の入手手段を教えてくれる。


「学園の方に戻れば単体金属の販売もしてるけど、それ買ってここまで運ぶー?」


 そうして見せられた、恐らく教材用と思われる金属塊は、1g単位から1t単位まで様々な計量で様々な種類が取り揃えられていたが……、仮に常世界の基準で、木造1階建ての家を作成した場合、家の重量は10m²で約1.5t程度だと言われている。


 それを金属で作成しようとすれば、木材をかしだとすれば比重は0.9、すぎひのきだとすれば比重は0.4であり、金属の方はただの鉄なら比重は7.8、銑鉄であれば比重は7.0である。


 すなわち、鉄は樫の約7倍、杉や檜の約14倍の重さがある。


 この為、もし、鉄か、それと同程度の金属を買って来て、10m²程度の家を作ろうとすると、その重さは10.5tから21t程度。


 現実的に考えれば、建材として使用されるのはだいたい杉や檜の方で、樫は強度を補強する目的で一部に使われる程度である為、実際に鉄の家を製作したとなれば、10m²で20t程度のものになるだろう。


 この重さは、瑠璃や紅葉なら軽く指先程度で持ち上げられる重さとはいえ、物体の大きさ的に、教室の扉と同程度の大きさしかない学園内の転移門を抜けさせるのはなかなかに面倒なものとなる。


(それは木材でも同じだよね……。いや、木材の方が比重が小さい分、余計に嵩張って邪魔か……)


 また、輸送手段として、瑠璃の持っている亜空間ポーチはなんでも入るが容量100kg程度の代物であり、紅葉の亜空間鞄は最大1万tの量が入るがナノマシン専用である為、こちらを使うのも難しい。


(私がナノマシンで家を建てても良いけど、ナノマシンによる結合は本体である私からの電光力が補充されてる間じゃないと働かないんだよね……)


 つまり、紅葉のナノマシンもまた、紅葉本人がいる間は良いものの、紅葉が家を出ると、その家は崩れる事になるのである。


(金属塊を削って組み立てる……? 一応、加工や溶接は出来るけど……)


 だが、紅葉は建築家ではないので、仮にそれで組み立てたとしても、仮小屋程度のものにしかならないだろう。


 その程度なら、先程鴉亜が言っていた様に、その辺の木材で組み立てたとしてもそうは変わらない。


 そうした様々な考えを紅葉は思い巡らすが、結論は瑠璃も同じらしく、新築には二の足を踏みつつ、瑠璃は別の場所に視点を向けて質問する。


「うーん、その辺りの問題から考えると新築より既存のものを改造した方が楽なんですが……。そういえば、鴉亜さんとアレックスさんの拠点はどんな感じなんです?」


 そうして向けられた知的探求は勇者ペアの拠点に対してのものだったが、確かに、今まで存在せず、最近登録されたという彼女等の拠点であれば何かの参考になるかもしれない。


 だが、それに対し、アレックスは顎に手を当てながら「私達の拠点……、は……、どうでしょう、ねぇ……?」と、歯切れ悪くお茶を濁し、鴉亜が率直にその答えを話す。


「……私達の所は参考にならないかも、魔剣の迷宮だから」


「魔剣の迷宮?」


「うん。この区画は昔警備区画だったんだけど、そこで警備機械用に量産されてた『量産型エスカリあずきアイスバーソード+1000』が作った迷宮」


 なんかヘンテコな名前の魔剣が出て来た。

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