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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第二章『咎人と断罪者』
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第二章第三十六話「暫定的な結論と対処」


「と、まぁ、そういう関係で、正規ルートである冥府を通じて移動していたのなら私に感知出来ない筈は無いし、確実にあれはそれ以外のルートで外界へ逃げたのでしょうね」


(まぁ、確かに。瑠璃の幸運を使ってもそのルートになるんなら、他のルートっていうのは厳しそうな気がするよね……)


 理論上不可能な移動を行って逃げた『観測知性』を捕らえる方法。


 それにはまず、理論上不可能である事を覆す為の、何らかの特殊条件、ないしはそうした不可能を可能にした、特殊な権能の存在を突き止めなければならない。


「うーん、そういえばさっき、次元が歪んで入って来る事もあるって言ってましたけど、そっちはどういう仕組みなんです?」


 そうして、その打開策を探る為、まず瑠璃は、冥府に繋がる飛び地以外の全てを覆っているという、この世界の『次元の狭間』と呼ばれる結界の仕組みについて、疑問を持つ。


 それに対して黄泉は、まず次元の狭間というものが、この創誓世界から溢れ出る大量のエネルギーからなる強靭無比な時空間結界の類であり、物理的にこじ開けるにはRクラスが数人がかりで一時的に開くぐらいしか方法が無い事を説明してから、その例外について説明し始める。


「んー、そうね。それについては水を掻き混ぜた時に出来る泡を想像して欲しいんだけど、『次元の狭間』にはこの世界からの膨大なエネルギーが常に供給されてる関係上、それらのエネルギーが幾つもの箇所から湧き出て入り乱れ、一種の乱気流みたいな力場の状態になってるのよ。それが結界を力尽くで破壊するのを不可能にしてる理由でもあるんだけど、実はその気流の乱れのせいで『次元の狭間』の内部には、稀に泡の様な空間の隙間が出来る事があるの。それで、その空隙の泡の中に入り込んで移動した場合、出現場所や時間は完全にランダムで飛ばされる事になるけど、一応は外から中に移動する事が出来たりするわ。完璧な偶然で、だけど。後、この方法だと気流を構成するエネルギーは循環した後に、再度創誓世界に吸収される関係で、泡は全てこちら側に吸い込まれて、外から中に入る事は出来ても、逆に出る事は出来ないから、やっぱり『観測知性』みたいに外に出るのは無理ね」


 つまりそれは、偶然発生してる泡の中に入って移動すれば創誓世界側の何処かにランダムで移動出来るというもの。そして、中から外へは出られない。


 実の所、そうやって創誓世界にやって来た異世界人は数多く、各国に異世界人用のマニュアルが整備されたりする程度には創誓世界の側でも異世界人の存在は浸透しているものの、その背景には、この世界から出る際には必ず冥府を通らなければならないので、結果的に根付くしかなかったという事情も存在する。


 とはいえ、その偶然というワードが何処か引っかかり、紅葉は瑠璃に質問する。


「偶然……。ねぇ瑠璃、もしかして瑠璃の権能なら、この方法と瞬間移動を使って世界の行き来も出来たりする?」



 それは、瑠璃の幸運と瞬間移動で泡から泡に移動する事により、逆に外の世界に出られないか、という質問だが、それを聞いた瑠璃は少し考えた後、否定も肯定もせずに首を横に傾け、微妙そうな表情で結論を呟く。


「む、私のは無意識化で発動してるものなので、そうした方が私にとって有利になる場合でないと無理そうですが……、理論上だけなら可能、かも……?」



 だが、その多少なりとも可能性があるという結論に黄泉は驚き、何時の間にか机で寝ていたライベリーまでもが身を起こして「え゛、まじですかぁ?」と寝ぼけた目をぱちぱちとさせつつ、唯一そこまで驚かなかった常夜の袖を引っ張って、事の真偽を問う。


 そして、それを聞いた常夜がノートパソコンで計算してみる事、数秒。


 今度は常夜もまた驚いた様にノートパソコンの画面を見た後、ノートパソコンを裏返して、その計算結果を皆に見せる。


「出来る、みたいね。しかも確率は98%以上。SSランクの事象系権能と瞬間移動能力として測定してるから、どちらか片方でもそれ未満なら無理になって来るけど、逆にどちらか片方でもそれ以上なら確率は100%になるようね……。私も初めて知ったわ……」


 そうして常夜もまた「まじか」という感じで驚き交じりに今回の計算結果を見るが、それもその筈。そもそも『次元の狭間』に空隙の泡などというものがある事は一般的にはまず知られておらず、更に通常の壁や結界と違い、超エネルギーの奔流で出来ている為、本来であれば、触れるどころか近付くだけでも消し飛ぶ『次元の狭間』に挑戦しようと思う者自体もまずいない。


 そんな中、極めてレアな事象系権能と、取得者自体は多い者の基本は低ランクで収まる瞬間移動能力を、どちらもSSなどという高ランクで取得して運用し『次元の狭間』に挑戦するなどという者は……、普通は存在しないのである。


(出来る者が限られてる上、失敗したら一発アウトな事柄への挑戦……、か。私達の場合は前情報があったから特定出来たけど、ノーヒントでやれって言われたら、そりゃ無理だよね。……というか、方法自体ある意味バグ技に近いし……)


「とはいえ、そうなると……、恐らく瑠璃ちゃんと同系統の事象干渉能力である、推定『未来予知』の権能を保有していると思われる『観測知性』もそうした偶発的な次元の空隙を使って移動している可能性はあるわけか……」



 そうして、常夜はその結果に感心した様に独り言ちるが、やがて常夜ではなく、黄泉の方が、この結果から『観測知性』への対策を考案し始める。


「ふむ……、でもまぁ、消極的で癪だけど、この感じなら討伐は出来なくても被害を出さない事は出来そう、か……」



 その、何かを思い浮かべたらしき黄泉の呟きに瑠璃が反応して問う。


「? どうするんです?」


 そうして、特に誰に話したつもりもなかった呟きについて問われた黄泉は、ん? と瑠璃の方を振り向いてから、その答えを告げる。


「あぁ、簡単な事よ。何処から出て来るかわからなくても、標的がわかっているのなら、単にそれを守ればいい。……相手の権能がどういうものかはわからないけど、どうも無効化や結界そのものは通用するみたいだし、結界を突き破る様な権能が無いのなら、この際、この禊祓にいるSランクからSSSランクまでの全員をEX以上の結界で覆われた保護施設に一時避難させるわ」



 そうして話された対策は、思った以上に強引で力尽くの方法だったが、確かに、それが出来るのならば『観測知性』の移動距離や出現場所などを考えずとも、この緋煉の国民を守るという目的自体は達成される。


 そして、黄泉は自身の携帯端末を操作しつつ、顎に手を当て、その方法が可能かどうかを確認しつつ、その方法の利点を話す。


「どうも観測知性は同じ個所には長く留まらないタイプみたいだし、幸い大会議による疎開と別行動でこの禊祓のS~SSSまでの能力者は現在極めて少ない。これぐらいならすぐにでも避難できるでしょ」


(……大会議?)


 そうして話された内容には、一部瑠璃や紅葉が知らない情報が混ざっていたが、黄泉はそれには気付かなかった様で、それが可能である事だけ確認すると、自身の携帯端末を閉じ、それを持ったまま手前に伸びをして、今回の会議の結論を出す。


「まぁ、単に逃げ足が速いから討伐出来ないってだけで、あれぐらい瞬殺出来る奴はごろごろいるんだし、大会議中にまた別の所で討伐機会があるか、勝手に変なのと出くわして自滅するのを待つ方が今回は建設的でしょうね」


 そう言いつつ、黄泉は隣の常夜に自身の携帯端末を渡し、常夜がそれを元に、今黄泉が言った内容を手配する事、数分。


 会議終了の雰囲気も漂ってきたところで、準備の整ったらしき常夜が黄泉に携帯端末を返却すると、黄泉はそれを受け取って、常夜のノートパソコンの中を確認しつつ、喫茶店のナプキンを何枚か取って何かを書き記し、瑠璃と紅葉とライベリーの3人に手渡す。


「ん、というわけで一先ずでも結論が出たなら有言即実行ね。常夜、SランクからSSSランクの市民達に避難勧告出して。それと、これにより貴女達三人も今より保護対象になるから、ここの軍の基地に移動しなさい。そこなら常時EXレベルの結界が張ってあるし、唐突に寝首を掻かれるなんて事も無いわ。私と常夜はこれで帰るから、後はその基地でゆっくりしてなさいな。今日は協力ありがとね」


 そう言って黄泉は立ち上がり、それに続いて常夜も3人に「それじゃ、またね」と挨拶しつつ、ノートパソコンや特殊な携帯端末を片付けて、黄泉と共に店を後にする。……もうここに用はないという事だろう。


 また、それと同時に、他の軍人や警官達も立ち上がり、順次撤退し始める。


 

 そうして、彼女等の撤退が完了し、辺りには瑠璃と紅葉とライベリーの他は、まだ少しだけいた色物集団の残りと、ライベリーの部下であるウェイトレスさん達だけになった所で、三人は渡されたペーパーナプキンの中を見る。



 そうして移動するよう指し示された場所は、禊祓の南部にある特別区画。



『私立黎明学園』



(………………学校?)


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