第二章第三十一話「断定名称『観測知性』」
『観測知性』の呼称が決定して数分後、暫くノートパソコンを操作して国際指名手配と今迄の各国の指名手配統合を終えた常夜は、一度その情報を纏め始める。
「さてこれで、国際指名手配は完了したわけだけど……、実際何も進んでないわね。思った以上に『観測知性』の情報が少ないわ。今の所分かってるのってその能力の一部と狙ってる対象が推定SSって事ぐらいかしら? その辺りは『観測知性』自体が情報を総合しても推定SSぐらいの能力だから、狙える限界がその辺って事なのかもしれないけど……」
そうして常夜は各国の情報からも『観測知性』の情報を纏めてみるが、実際の所、それは先程から話されていた「超長距離移動能力」と「時間操作能力」、そして「推定『未来予知』の能力」等の根幹的な能力を突き止めていた国はほぼ存在せず、あったとしても部分的に「超長距離移動能力」か「時間操作能力」の一端を突き止めているに過ぎず、肝心の対処法やそれを行う目的の類は今迄のどの国や地域も一切突き止められていなかった。
[どの国や地域も一切突き止められていなかった。]
(まぁ一撃離脱型の犯行なら対処して即効反撃してる今日みたいな状況の方が絶対珍しいんだから当たり前か……)
そうして、常夜の話と共に中空の文を見ながら状況を理解する紅葉は、ついでにそれらの状況から創誓世界の他の国々の実力や情報能力をも図ろうとするが、今回の状況が特殊過ぎてあまり参考にはならない。
(ただまぁ、そんな特殊な状況にも対応出来てるこの緋煉皇国っていう大国はこの世界の他の国々よりもかなり発展してるんだろうって事ぐらいはわかるか……)
そうやって、紅葉が目の前の問題とは別に、この世界の事情を考えている横で、瑠璃の方はすっかりこの『観測知性』の問題にのめり込んでしまったらしく、身を乗り出して顎に手を当てながら頭を捻り、『観測知性』の目的に関して考察する。
「ふーむ、強い相手ばかりを狙うってなると、バトルジャンキーとかですかね?」
そうして出された瑠璃の考察は、確かにある意味では的を得たものであり、特に瑠璃の出身である魔界ではそうした犯罪者は多かったのであろう事が推察出来るが、明確な証拠があるわけではないので、常夜がそれに補足する。
「そうね。そうかもしれないし、もしくは何らかの形で強者に恨みを抱く者やそれとは別の目的を持つ者の可能性もあるから、目的そのものは今の所は不明ね。ただ、共通点としては直接狙われた者は全員Sランク以上、SSSランク以下。その中では辺境国程度とはいえ国の主要人物クラスにも死者が出ているから、社会情勢の混乱を目的とした計画犯罪の可能性もあるかもね?」
だが、その常夜の補足に対し、紅葉としてはやはり目の前の『観測知性』の情報以上に気になる情報がある。
(! 国の主要人物にも死者が出てるのか……)
昨日ジャンクファーストで綾夢とアリシアに聞いた話では、この世界は徹底した実力主義社会であるという。
そうであるのならば、例え辺境国であろうと、その主要人物ともなればかなりの実力者である事は想像に難くない。
そして、その紅葉の予測を裏付ける様に、瑠璃の隣に座るライベリーが嫌そうな顔をしつつ常夜の特殊な大型携帯端末を操作して、その死亡した主要人物とやらを探し当てた上で、こう呟く。
「うぇ……、あんなのにやられた主要人物とか言うからどんな雑魚や間抜けの類かと思えば……、これSSSランクじゃないですかぁ……。これ他にも変な特殊能力持ってないでしょうねぇ……。やだー……」
そうして画面に映し出された相手は、なんだか人相の悪い禿げた爺さんだった為、やはり特段『観測知性』に対する怒りは湧いてこないが、それでも、推定SSと評価されていた存在が、確定SSSの存在を撃破して死亡させているという事実は、その『観測知性』という存在の推定脅威度を底上げする。
だが、そこで、それを聞いていた瑠璃は話の内容そのものは理解しつつも、その中で少しわからなかった事があるらしく、「はて?」と首を傾げ、耳をぴこぴこと動かしながら、小さく手を挙げて質問する。
「ふむ? 少しいいですか? ここまでの話でランクの話が何回も出てるんですが、実は私ってまだその戦力ランクっていうのをあんまりよくわかってなくって……、そのSSSって具体的にはどのぐらいヤバいんですか?」
今迄は紅葉も、なんとなく話の流れでランクによる脅威の度合いを測っていたが、それは確かにこの創誓世界に住む者と、そうではない瑠璃と紅葉の間で話の食い違い兼ねない部分でもある。
それを理解した紅葉は、瑠璃のその疑問に感心しつつも、昨日の綾夢との会話を思い出して、ある事に気付く。
(そういえば、私もちゃんとしたランクの説明とか聞いてないな……)
そう、そもそも戦力ランクの説明。
ちゃんとされてないのである。




