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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第二章『咎人と断罪者』
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第二章第二十八話「摩訶不可思議な犯罪方式」


「…………どういうこと?」


 本来、国際指名手配犯である筈の相手が、何故か国際指名手配はされておらず、各国による個別の指名手配に留まっている。


 そんな異常事態に対し黄泉は顔を顰めるが、常夜の方は既に情報を集め終わっているらしく、率直にその不自然さの答えを述べる。


「まぁ、簡単に言うと何処の国もこいつの足取りを掴めてなかったのよ。かくいう私達ヴィールドも今回の事件で初めてこの兎を認識した形になってるから、他の国だと被害が大きい所でも単なる通り魔扱いなんでしょうね」


 そう言いつつ、常夜はその会話の内容に興味を示していた瑠璃と紅葉に気付き、「貴方達も見る?」と、テーブルの上に特殊な大型携帯端末を載せ、瑠璃と紅葉にも画面の地図が見える様にしながら、兎がいままで襲撃して来た場所を、襲撃順に説明しつつ指でなぞる。


「んん?」

「これは……」


 そうして分かる兎の襲撃順は、蚯蚓がのたくったかの様に無意味に蛇行しており、時折思い出したかの様に超長距離に飛んでいる。


 それを見て、そこから得られる情報に気が付いた瑠璃と紅葉の二人は、つい耳をぴこぴこと動かしながら、その気付いた点を呟く。


「……おや? これってもしかして、一ヶ所に留まらないタイプですかね?」


「に、見えるね。国の範囲がこのパズルピースっぽい記号の中だけなんだとすれば、長距離移動してなくてもほとんど襲撃毎に国を超えて移動してる……」



 そうして、各々読み取った事柄を呟いた瑠璃と紅葉に対し、常夜は感心した様に「ふぅん?」と二人を一瞥しつつ、その内容を肯定する。


「鋭いわね。何故か今回だけは当て嵌まっていないのだけれど、他の襲撃に関しては全てそうよ。どうもこいつは一度襲撃したら対象の生死を問わず即座に移動して、同じ場所では二度と犯行を行わない手口を取るらしいわ。それがこいつが今まで逃げ延びて来た理由の様ね」


「あぁ、だから国際指名手配されてないのね。移動したって気付かれてないから」


 そう、そうした手口であれば、被害を受けた側からすれば一度事件が起きただけに過ぎず、大抵は内部を捜査した後、懸賞金だけ掛けて迷宮入りしているのだろう。珍しい形ではあるが、辻褄は合う。


(なるほど、超長距離移動能力を持った一撃離脱型の連続殺人犯か……。それで、一度襲撃したらその国の捜査能力の及ばない範囲にまで逃げて、そこでもまた襲撃を繰り返す、と……)


 基本的に犯人の逮捕にせよ討伐にせよ、警察等の捜査当局は、事件が起きてからでなければ動けないので、始めの事件だけ起こされて、その後は逃げられていたのでは動いた時にはもう遅いのである。


 そうした絡繰りを把握した所で、瑠璃が今回の事件について、疑問を呈す。


「ん? そうなると、なんで今回は同じ場所を襲撃して来たんでしょう? その辺は何かわかってるんですか?」


 その瑠璃の常夜に対する質問に、紅葉は内心(え、瑠璃の能力のせいじゃないの……?)と思いつつ、何も知らないポーカーフェイスを決め込んで、自分も常夜の方に顔を向けて、その返答を待つ。


 そうして聞かれた常夜は、何故か瑠璃ではなく紅葉の方をじっと見た後、視線を地図の方に戻して、今の所の推察を語る。


「さて、それはまだわからないわね。今迄の統計からすると、確かにこいつは事件を起こした後にすぐさま移動するんだけど、それは逃げてるんじゃなくて何か別の目的で移動している、という事も考えられるから。今回はその目的が原因で移動を止めたのかもしれないわ。その辺りはまだ情報不足ね」


 そう言いつつ、常夜は片手を外向きに広げて、これ以上知らなさそうなポーズを取るが、実際にはある程度目算がついている為、再度、その兎の目的となりそうな瑠璃と紅葉、そしてライベリーに視線を送る。


(! やっぱり私達が何か関わってると思うよね……。私でも疑う、間違いない)


 だが、その常夜の視線に気付いたのは、何も中空の文を読んでいる紅葉だけではなかったらしく、それらの事柄を興味無さげに聞き耳だけ立ててお菓子を摘まんでいたライベリーが、お行儀悪く常夜をフォークで指しながら率直な感想を述べる。


「いや、目的がどうとか言ってる時点で、多分狙われた私達があの兎の目的っぽいって事ですよねぇ? で、どうなんですかぁ? 今までの被害者と私達で何か共通点とかありましたぁ?」


 そう話す、割と態度が失礼なライベリーに対し、常夜は怒ったりはせず、むしろ笑って、ククク……と、喉の奥を震わせながら、「今日は鋭い子が多いわね」と、愉快そうに呟き、それが正解である事を示す。


「そうね、実際、あの兎の目的が人物である事は間違い無いと思うわ。というのも、ほら。こっちの被害者リストを見てみて?」


 そう言いつつ、常夜は画面を指先でスライドさせ、別のページに切り替えてから、その被害者リストを見せる。


「どう? 何か共通点があると思わない?」


 そうして、その襲撃を受けた被害者達の簡易なプロフィールと顔写真が並んだ、データベースの様なページを覗き込んだ皆は、その共通点に一目で気が付き、頭の上に【!】とエクスクラメーションマークを浮かべるが、その中でも瑠璃は何故か特に衝撃が大きかったらしく、「こ、これは……!」と身を乗り出しながらに立ち上がって、その瑠璃が気付いた共通点を叫ぶ。


「美男美女ばっかり!!!!!!!!」


 うん、たぶんそれではない。

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