第二章第二十二話「連携戦闘!有能警察!」
「喰らえ悪党! これが正義の力だ!! 行くぞ皆!!!!」
「「「「「ジャスティース! キーック!!」」」」」
混沌とした戦場の中、プロトメシアと名乗る戦隊ヒーローやら魔法少女やら正義怪人やらが寄せ集まった様な色物集団の跳び蹴りが一斉に一匹の兎に突き刺さり、そのリンチの様な戦法で、また一匹の兎が爆発四散する。
だが、戦場にいる兎の数はやはり変わらず、倒したはずの死体も何時の間にやら何処かに消えている。
「んんー? あれもハズレですかー、本体はどれですー……?」
「チッ、斬っても斬っても湧いて出る。まるで組み飴の様で御座るな。もしかしてこれ、全部一気に倒さなきゃダメなタイプで御座るか?」
「あっはっはっはっはっはっはっはっ!!!! ミンチミンチィ! って、いえ? 一時的には数が減っている時もあるわ。本体を見つけなくても、敵の分裂速度を殲滅速度が上回れば勝てる筈だけど……」
「うわぁ! いきなり正気に戻るなでござる!! 逆に怖い!!!!」
「相変わらず失礼ねあなたっ!?」
なんだか眠そうな赤髪アホ毛のウェイトレスさんの近くで醤油御前と猛毒魔女がじゃれているが、彼女らを始めとして、既に戦場にいる者のほぼすべてがその事態に気付いており、ライベリーと合流した瑠璃と紅葉もまた、戦場で本体を探して兎狩りを続けるが、一向にその本体を捕らえる事が出来ない。
「ふむ? おかしいですね……。こー言うタイプなら私の能力で捉えられない筈は無いんですが……」
「もしかして目に見えてる兎達の中には本体はいないって事なのかな? ううん、でも赤外線や光反射視覚でも他に生命体はいないし……」
「都市衛星から複合スキャンかけてもいませんよぅ? 遠隔操作の様な形跡も無いですしぃ、やっぱりこの中のどれかが本体なんじゃないですかぁ~?」
そうして各々は独自に兎の本体を探しながら戦いを進めるが、そんな機動警察が到着してから数秒程度の攻防の内に、突然キレて癇癪を起こす者も出始める。
「あーもう! しゃらくさいわね! へんしーん☆」
―ギャルルルルルルルルr!!!!!―
「きゃー!! ……って! ちょっとそこの兎!! 変身中の魔法少女を狙うのは反則でしょ!? どうなってんの!? 警察呼んで!!!!」
「もう呼んでるし来てんだよ!! そして今はサツの準備が整うまで時間稼いでんの!! わかったら邪魔だからおうち帰れ!!!!!!」
「ふふん、そうなったら私の出番ですね!! 見よこの大魔導……」
―ギャルルルルルルルルr!!!!!―
「のわー!!」
「帰れっつってんだよ!!!! この馬鹿ガキ共!!!!!!!」
それは全身を重火器で武装した傭兵らしき男とプロトメシアと呼ばれる変人集団の一部の会話だが、それはそれとして、その兎による重機関銃の連射を喰らって吹っ飛びながらも何故か無傷なあたり、そうしたちびっ子達も間違いなくSランク以上なのだろう。わーきゃー騒ぎながらも的確に術式を撃ち込んで兎の邪魔をしているのが伺える。
「くっそ、ちょろちょろと!」
が、それでもやはり本体を倒さない限りは討伐には至らない。
また、それらの攻撃のほとんどを兎は回避、あるいは撃墜して致命傷を悉く避けている為、分身の討伐すら、割と難しい。
(…………やっぱり、あの兎にもなんかあるよね)
昨日の戦闘の際もそうだった。まるで攻撃される場所があらかじめわかっているかのような回避軌道。銃口が向けられる前から避けている。
(とはいっても対策方法は……)
現状、紅葉には無い。昨日の瑠璃との戦いでナノマシンを損耗し過ぎたのだ。
そうでなくとも、ここまで広い空間だと、囲み切るのも難しい。先程、ライフルの兎を瞬殺出来たのも、ライベリーの店で兎のライフルを発射直前に刺し通せたのも、どちらもただの偶然だ。
(ん? 偶然? って事は……)
瑠璃の権能ならば通用するのではないか。そう、紅葉が思い至った所で、唐突に知らない声が、頭の中に響き渡る。
【お待たせしました! こちら機動警察本部です!! 今、皆さんの頭の中に直接話しかけています!! 今より、こちらで皆さんの集めた情報を統合し、返信致しますので、集めた情報を一度念話でこちらにお送りください!!】
それは、先程到着したばかりの機動警察からのお達し。
それによると、この機動警察が開いた念話回線によって、今まで戦闘に参加していた個々人が集めていた兎の情報を機動警察側で統合、精査し、統合後の纏まった情報を機動警察側から個々の人々に返送してくれるのだという。
そうした情報が、機動警察からの声を皮切りに、声だけでなく知識として、念話の方法や送信方法と共に、瞬時に、この場にいた全員の頭の中に流し込まれる。
(!! 念話ネットワーク……! こんなものまであるのか……!!)
そんな紅葉の衝撃とは裏腹に、紅葉の思考は極めて安定しており、即座にそれを理解して、流し込まれた方法を元に、兎に関する戦闘情報を片っ端から機動警察へと返信する。
(さて、これでどうなるか……)
それは、機動警察の実力を疑う思考でもあったが、そうした考えも束の間、数秒の後に機動警察からの念話は返信され、そこには大量の有益情報が記されていた。
その内容は以下である。
~~~
・兎は恐らく武器の種類毎に分裂している事。
・同じ武器種の兎は同時には存在しない事。
・恐らく武器種は全部で100種程度だが、兎は多くてもだいたい40匹前後までしか分裂せず、分裂している数が増えれば増える程、単体は弱くなる事。
・兎は一匹の兎から分裂する事で増えるが、同時に複数体の兎が分裂する事は無く、必ず一匹からだけ増えている。恐らく、その分裂する一匹が本体。
・武器は壊しても無駄。兎が分裂する際に武器ごと復活し、元の武器と死体はその時に消える。
・どうも分裂する本体と別の奴が接触すると、本体が移るらしい。分裂した直後の二体を追っていたが、別の奴と接触した後、その別の奴の方が分裂した。
~~~
これは、その他の紅葉が既に知っていた事や、戦闘に直接関わらない情報は極力省いて抜粋したものだが、その情報は極めて有益なものだった。
(つまり、分裂した直後の奴を狙って撃破すればそのどっちかが本体、と)
そうした情報を受け取った紅葉は、再度全体の兎を確認し、分裂した直後の兎に当たりを付けて追跡を始めるが、同じく機動警察から情報を貰ったであろう瑠璃は、何故かその場で立ち止まって、何やら術式を展開し始める。
そして、分裂した兎が思ったよりも遠かった為、追跡を視覚だけに留め、紅葉が瑠璃の護衛に回った瞬間、背後から瑠璃の凛とした声が聞こえる。
「---確率固定・ターゲッティング---!」
その声と共に、瑠璃が分裂直後の兎の方に腕を伸ばし、その両方の兎を包み込む様、球体の魔法陣を展開すると、その魔法陣は急速に周囲に収縮して、両方の兎を丸ごと光で包んだ後、片方の光は掻き消え、もう片方の光は包み込んだ兎を身分証を透かすと見える、エネミーマークと同じ赤いマークで印付ける。
「皆さん! 本体を特定しました! エネミーマークの奴を狙ってください!」
「「「「「!!!!」」」」」
その声に反応したのは、何も味方だけではない。兎の方も、それにビクッと反応し、即座に指定された本体を守る様に、周囲の兎が防御陣形を取り、それと同時に、本体から遠く離れていた兎は、一斉に瑠璃へと攻撃を集中する。
――ギギィン――ドガッ――ガッ――ガッ――ゴゥン――
――ギギギギギギギギギギギギギギギギィン!!!!――
だが、周りもターゲッティングを成功させた瑠璃が狙われる事はわかっていたのだろう。即座に高防御力を誇ると思われる重装集団や防御術師が瑠璃の周囲に防御陣形を敷き、瑠璃に向かって来た兎を打ち払う。
また、それは紅葉も同じ事であり、そうした瑠璃の防御集団を丸ごと粉砕しようと、遠くで重機関銃を構えていた兎を紅葉は見逃さず、その兎と集団の間に入って、その弾丸を全てナイフで斬り落とす。
「! 危ねぇ、速射貫通散弾だあれ……。 助かった! 犬の嬢ちゃん!!」
「凄っ……、ナイフ二本で速射貫通散弾のフルオート全部叩き落しちゃった……」
それは名前の通り、防御の効かない貫通散弾を、機関銃並みのフルオートで速射するものだったのだろう。
周囲からは、瑠璃に対する「猫耳お姉ちゃんナイス~!!」「素晴らしいぞ! 猫君! 君もジャスティス!!」というような声だけでなく、そんな紅葉に対する賞賛の声も聞こえて来る。
実際、その弾丸を紅葉が打ち落とさなければ、瑠璃のディフェンスに回った集団には少なくない被害が出ていた事だろう。
だが、防御側に紅葉が回っている事で、最早その心配はない。
それを確認した瑠璃は、遠目に本体を叩こうか、それとも瑠璃の防御に回ろうかを悩んでいる幾つかの集団に向かって、叫ぶ。
「こちらは大丈夫です! 本体の攻撃を!」




