第二章第十九話「市街地での激戦」
即応即戦。
極めて迅速に行われた戦線の構築と対応攻撃は全て上手く行っていた。
しかし、戦線構築後、早くも十数秒。その戦闘様相に揺らぎが生じ始める。
――ガガガガガッ――ガギィンッ!――
――ドゥンッ――ドゥンッ――ド――ドゴォァン!!――
兎が強すぎるのだ。
最上階で瑠璃と紅葉と相対した時もそうだったが、あの兎は幾つもの種類の武器を使用し、様々な戦闘スタイルで、様々な場所に転移して攻撃してくる。
[様々な場所に転移して攻撃してくる。]
(! 昨夜の戦闘じゃわからなかったけど、あの兎も転移するのか……!)
中空の文によってそれに気付いた紅葉が広場で戦っている兎に目を凝らして見ると、確かに、瑠璃程頻繁には使用しないものの、兎は幾つかの瞬間でその姿を掻き消し、全く別の所から出現して、民衆に攻撃を仕掛けている事がわかる。
そして、その攻撃に単純な一点特化型と思われる者達は、様々な弱点となる攻撃を喰らって徐々に負傷していき、数を減らして行く。
また、飽和攻撃が行われていた最中は兎もかなりのダメージを負っていた様だが、そうした特化型や単純に戦力が足りない者を優先的に倒す事により、攻撃の手数が減り、じりじりと兎の回避力に周りの攻撃がついて来なくなる。
「……これ、ちょっと不味いんじゃないですかね」
「うん。あの兎、滅茶苦茶強い」
圧倒的優勢だったはずの状況が、ものの十数秒で切り崩されて行く。
一応、構築された戦線の中には多数の治療術師が存在し、その治療術師達は歴戦の市民や防衛兵器達が守っている為、負傷者はすぐに癒され、今の所は死者も特に出ていない様だが、中央で兎と戦える者の数は見る間に減少して行き、戦線もまた実力差による撤退から徐々に薄くなる。
そんな中、瑠璃と紅葉や、その他の歴戦と思われる市民、また複数の防衛兵器に守られた、初めに狙われたウェイトレスのお姉さんがぽつりと呟く。
「おやぁ……? これはー、もしかして、狙われたっぽい私が直接戦った方が良い感じですかねぇ……?」
その手には、何時の間にか二本のガンブレードが握られており、その気迫からは、この相手もまたかなり強い事が伺える。
だが、その言葉に誰かが答えるよりも早く、警報の音がいままでのけたたましい低い音から甲高い音に変わり、同時に機械音声によるアナウンスが流れる。
――ヴヴヴヴヴン――ヴヴヴヴヴン――ヴヴヴヴヴン――
――ビー!――ビー!!――ビー!!!!――ビー!!!!!!!!――
――敵性存在の推定ランクをSランク以上と確定――
――敵性存在の推定ランクをSランク以上と確定――
――コールレッド!――
――緊急招集発令!!――緊急招集発令!!!!――
――出会えい!! 出会えい!!!!――
――繰り返します! コールレッド!!――
――緊急招集発令!!――緊急招集発令!!!!――
――出会えい!!!! 出会えい!!!!!!!!――
――60秒以内に機動警察が、180秒以内に軍が急行致します――
――60秒以内に機動警察が、180秒以内に軍が急行致します――
――Sランク未満の市民の方はお下がりください――
――Sランク未満の市民の方はお下がりください――
そのアナウンス音が流れると同時に、今まで動いていなかった範囲の高層建築群からの射撃と砲撃も始まり、街中で赤い警告灯が点滅し始める。
また、それを合図に、周囲の空気も一気に騒めきだし、至る所から様々な個性的な恰好をした色物集団が姿を現したかと思いきや、戦闘には加わらず傍観に徹していた大半の人々がアナウンスと共に開かれた避難シェルターの中に撤退し始める。
そして、またもや戦局が変わる。




