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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第二章『咎人と断罪者』
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第二章第十六話「紅葉という謎」


 先程まで確実に軍事機密や国家機密の類がふんだんに混じっていたであろう瑠璃の情報を、極めて詳細な所まで流暢に話していたレティアが、紅葉の話となると、途端に情報が無いという。


 そんなおかしな事態に、瑠璃は勿論、紅葉までもがジト目でレティアを見つつ、レティアを問い質す。


「それは……、この世界の情報網、ないしレティアさんの持つ情報網をもってしても私の事はわからなかったって事?」


 自身の記録が赤裸々に語られるのは微妙に怖いものの、推定、記憶喪失の紅葉にとっては自身の情報も出来るだけ欲しいものなのだ。


 だが、実際の所、そのレティアの答えは、そんな単純なものではなかった。


「あー、そう言われるとわたくしとしましてもとても凹むのですが……、紅葉様に関しましては、『紅葉様がこの世界に顕現するまでの情報は一切存在し無い』という事がわかっております」


「……………………え゛」


 紅葉に関する情報は無い、とレティアは言った。


 だがそれは、情報を入手出来なかったのではなく、「紅葉に関する情報は無い」という情報を手に入れていた、というのが正解だった。


 そして、その事実を知った紅葉はそれに対する様々な推測を頭の中で立てて沈黙するが、流石にそれだけでは情報不足だと思ったのか、レティアは一応の現状から推測できる、紅葉の正体を話し始める。


「そうですね、これは推測なのですが、恐らく紅葉様も瑠璃様と同じく顕現召喚によって生み出された存在なのではないかと思われます。そうであれば、世界の情報は存在するものの、自身の記憶は存在しないという紅葉様の状況も、その召喚者が予め必要な情報だけインプットしていた、という事で説明が付きますので」


 そうして話すレティアの言葉は、彼女の驚異的な情報網から、恐らくそれが正解なのであろうという事は理解出来ても、肝心の所が抜けている。


「え、いや、じゃあ、召喚者は?」


 そう、召喚されたなら、召喚した者がいる筈である。だが、レティアの話には、その召喚者の存在が出てこない。


 しかし、それを聞かれたレティアは、やはり「あはは……」と、困り気味に笑いながらも、それに関しての彼女が知っている範囲の事を教えてくれる。


「それが……、わからないんですよね。何故か。私の権能は私の知り得る範囲の事であれば全てその情報を取得する過程を丸ごと消失させて答えを得られる効果もありますので、普通はそれでわからない事はほとんどないのですが……。今回の場合では、時限崩壊式の召喚術が使用されており、私がそれを調べようとした時には既に使用された召喚陣が消滅していて追跡が不可能だったようです……」


 そうしてレティアは両手の人差し指の先をつんつんと合わせてとしょぼくれるが、逆に言えば、それは召喚者が意図的に追跡を断ったという事でもある。


 それも、レティア程の権能の持ち主ですら、追跡出来ない様にして。


「むむむ、何か紅葉さんの方は色々と謎いですね」


「うん、私にも訳がわからない。でも、そんな感じで自分の正体を隠しながらに、私をここに召喚した誰かがいる、か……」


(……って事は、稀によくある幾つもの慟哭みたいな声と中空の文もその召喚者が設定した可能性が高いって事……?)


 何故、何の為に。謎が謎を呼ぶミステリー。


 とはいえ、思った以上の収穫があった事は事実なので、紅葉は素直にレティアに礼を言う。


「ありがと、レティアさん。色々参考になった」


 そうして笑う紅葉に対し、レティアはこちらも微笑んで「いえいえ、微力ですがお力に成れたのなら幸いです」と、メイドらしく優雅な仕草と共に頭を下げる。


「と、もうこんな時間ですか。お二人との会話が楽しくてつい長居してしまいましたよ。それでは、私は帰りますね? また会いましょう!」


 そして、レティアがどう考えても勤務契約範囲外の深夜労働を終えて帰宅する頃には、時刻は既に深夜二時頃。


 部屋はレティアが修復を早めたからか、奥の方はまだ修復されていないものの、今いる辺りはすっかり綺麗に復元され、当たりに散らばっていた瓦礫も、小さな蟲の形をした清掃マシンと、目に見えない清掃用微細菌によって分解処理され、最早埃や塵の一つも見えなくなっている。


(水路が妙に綺麗だったのはこういう仕組みか……)


 そうして、一先ずの全てが片付いた事を確認した紅葉は、色々あった長い一日を振り返りながらも、就寝する為、そのまま瑠璃と共に近くの寝室へと足を運ぶ。


 清掃マシンや微細菌は、人物には作用しないらしく、戦闘による僅かな塵や埃は未だ付いたままだが、今日はもう眠い。風呂は明日入れば良いだろう。


 そう考えたのは瑠璃も同じ様で、紅葉と共に寝室近くの洗面台で歯磨きをして、一応の塵と埃を濡れタオルで拭った後は、ひょこひょこと寝室に直行し、勢い良くそのドアを開ける。


「はぁ~、濃い一日でしたね紅葉さん。それじゃ寝ましょ……、って、およ?」


「お?」


 が、その扉を開いた所で、瑠璃はその中を見て立ち止まり、次いで紅葉もその中を見て声を上げる。



 とはいえ、それは別に部屋が元に戻っていないとかそういうわけではない。部屋はきちんと元に戻っている。


 だが、問題は、そもそもこの部屋がツインのロイヤルスイートルームであった、という事である。


 この世界のロイヤルスイートは、部屋が非常に広く、風呂と同じく、寝室も二つある。


 そして、奥の方の部屋は、まだ修復されていないので、寝室は今、一つしかない。


 そう、普通の部屋であれば、ツインルームの寝室には、ベッドが二つ置いてある筈なのだが、ここはロイヤルスイートであったが故に、寝室ごと、ベッドの場所も二つに分けられており……。



 そこにあったのは、ふかふかのシングルベッド、一つだけだったのである。


「えっと、一緒に寝る……?」


「……まぁ、そうなりますね」



 まぁそうなりますね!!


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