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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第二章『咎人と断罪者』
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第二章第五話「流動戦術、電光石火」


 吹き荒ぶ電雷、弾ける熱波。


 瑠璃が撒き散らした血の様な赤い宝石は、不規則に空を舞い、大小様々な爆炎を引き起こす火球を放ち、周囲を絨毯爆撃の嵐に曝していく。


 それは、同じく瑠璃が放って操っていた雷を纏う水針の雨をも巻き込み、猛烈な放電と水蒸気爆発の炸裂によって紅葉の操るナノマシン生成物を撃ち落とし、蒸発、溶解させて行く――



 それにより、本来であれば幾ら斬られようと破壊されようと再度集合させれば元の形に戻して使用出来るナノマシンの粒子が、見るからに目減りしていく。


 恐らく、瑠璃は単に銀龍牙の機動砲台を邪魔に思っただけでなく、その銀龍牙や振動砲を形成しているものが、初めに紅葉がこの部屋に散布した銀の砂、即ち銀砂ぎんさと呼ばれるナノマシンである事に気付いたのだろう。


 爆炎は、単純に砲台や紅葉を狙うだけでなく、部屋全体に満遍無くばら撒かれており、その高熱のせいで、初めに部屋の中に紅葉が散布したナノマシンは元の量の半分以下にまで目減りしている。


(……亜空間技術で数百t規模の物量が格納されてた筈なんだけど……。それが、半分以下、か……、これはもうのんきに様子見とかしてられない、かな……)


 そうでなくとも、瑠璃の側には、今も尚、爆炎を撒き散らす血の様な赤い宝石、即ち『完全な賢者の石』が大量に存在し、エネルギー枯渇を狙った持久戦においては極めて分が悪い事が見て取れる。


「でもこれってある意味チャンスかもね……?」


 そんな危機的状況の中、紅葉は爆炎をすり抜けながらに、不敵な笑みを浮かべてぼそっと呟く。


 そして、それに続けてまたもや小声で「≪---銀装転換ぎんそうてんかん時空間砲じくうかんほう---≫≪---銀装転換ぎんそうてんかん電光粒子剣でんこうりゅうしけん---≫≪---銀装転換ぎんそうてんかん銀龍牙ぎんりゅうが光刃こうじん---≫」と矢継ぎ早にナノマシンの指令ワードを呟くと、手持ちの電光銃を砲身が太くて角ばった大型拳銃に、太腿のアダマンタイトナイフを持ち手が異様に長い短剣へと変化させ、更に空気中に散布したナノマシンの大半をナイフと同程度の大きさしかない電光の刃が突き出ただけの小型の銀龍牙へと造り変える。


 それを見て取った瑠璃は、雷を纏った水針の雨を再度大量生産し、紅葉の元へとけしかけるが、紅葉はそれを、振動砲を盾に、かなりのダメージを喰らいながらも真正面から突き破り、それと同時に大型銀龍牙による荷電粒子砲と小型銀龍牙による電光刃で攻撃を仕掛ける。


「≪電光格子柵でんこうこうしさく≫!」

「げっ……! またあのビーム砲ですか!!」


 瑠璃は咄嗟にその何百もの小型の銀龍牙が隊列を組んで形成した網目状の光の柵を、大型のものと同じ荷電粒子砲であると誤認し、不可視の盾で防御しようとするが、光刃と呼ばれるそれは撃ち切りのビーム砲ではなく一定の長さにビームを照射し続けるビームサーベルと同じものである為、一度ビームを途切れさせる事は出来ても盾を過ぎれば再度照射されたビームが現れる為、防御出来ない。


 その事柄を、光刃が不可視の盾に命中すると同時に悟った瑠璃は、自身の周囲を囲む柵に捕らえられぬよう、瞬間移動を繰り返しながら移動し、雷を纏った水針の雨と賢者の石の一部は銀龍牙本体の攻撃に回して、照射元となる砲台自体を叩いて柵そのものを破壊しにかかる。


 それによって、歯抜けにされた柵では瑠璃を捕らえ切れず、また、回避不可能な攻撃でもないので瑠璃にダメージを与える事も出来ないが、紅葉としてはここでもまた少しわかった事がある。


(……やっぱり、瞬間移動から瞬間移動までの間にちょっとだけラグがあるね……。それに、ナノマシンが撒かれてる場所だけじゃなく、砂礫や粉塵の濃い場所にも移動せず、電光柵は確実に破壊しようとする、か……)


 それだけではない、先程から瑠璃が手動で操っていると思われるのは、基本的に雷を纏った水針の雨ばかりで、賢者の石は大部分がこの状況でもただ無作為に爆炎を引き起こす火球を撒き散らしているだけなのだ。


(つまり賢者の石のほとんどはオートで動いてるだけ、と……)


 そうした状況を、瞬間移動する瑠璃を追跡しながらに把握した紅葉は、電光柵に合わせて銀鎖をも操って、瑠璃を攻撃しつつ、その行動を制限し、密かに先程変化させた大型電光銃を操作して、銃の口径を小さく、10mm程度にまで減少させてから、瞬間移動直後の瑠璃に向けて引き金を引く。


――キィン……――


 瑠璃の瞬間移動後、次の瞬間移動にまで移るタイムラグはおよそ0.5秒。


 その間、瑠璃は連続して瞬間移動出来ず、不可視の盾と賢者の石、そして自動的に発動していると思われる魔法障壁を除けばほとんど無防備になる。


 それを見越して紅葉は銃を撃ち、その直後。


 紅葉の持つ大型電光銃の銃口を起点とし、そこから射程約10mまでの距離にある全存在に、唐突に、直径1cm、つまり、10mm程の、穴が開く。


 ……それは、瑠璃のディメンジョンシールドを含めた多重防御だけでなく、周囲の瓦礫や厚さ数mの金属柱までも。



 だが、そこに瑠璃はおらず、驚いた様な声が紅葉の後ろから聞こえる。


「え……? なんですかね、その銃……? 私のディメンジョンシールドが、貫通された……?」


「≪時空間砲≫……。銃口から射程限界までのあらゆる存在を口径分だけ、丸ごと消し飛ばして消失させる、大砲。物理学的に11次元を超える神話的存在に対しても有効な攻撃……、の筈なんだけど、避けられるのか。そっか……」


 引き金を引いた時点で射程先の物体には防御力など関係無く口径分の穴が開く為、腹部を狙って引いた時点で勝負は決した筈だったのだが……、どうやら今回紅葉が狙った相手は瑠璃の幻術によるダミーだったらしく、腹部に穴が開いた時点で、ダミーは揺ら揺らと掻き消え、紅葉の一撃は虚空を射抜く。


 如何に次元を超えて撃ち貫く銃弾であったとしても、撃つより前から避けられていたのであれば意味がないのだ。



 ……とはいえ、それも計算の内。


 周囲が光刃と荷電粒子砲の光線で囲われている今、如何に瞬間移動を行使しようとも逃げられる場所など限られている。


 そうして、瑠璃の瞬間移動による転移先を予め全て推測していた紅葉は、瞬時に光刃と荷電粒子砲の向きを変えて他の瞬間移動可能な場所を潰しつつ、身体を反転させ、銃を持つ手とは逆の手に忍ばせておいた電光を纏う短剣、即ちビームナイフで背後の瑠璃に向かって必殺の一撃を喰らわせる。


「まずっ……! ---リベレーション---!!」

「? 遅い。≪駆動超加速くどうちょうかそく≫」


 その瞬間的な動作にも瑠璃は対応し、何らかの魔法を放った様だが、もう遅い。


 紅葉は既に最小の動作で、瑠璃の展開するディメンジョンシールドの内側に入り込んでおり、慌てた瑠璃が反射的に振り下ろした両手のディメンジョンソードも、片方は瞬時に生やした翼で、もう片方は電光銃の先で瑠璃の手首を弾いて無効化し、至近距離まで接近した上で瑠璃の肩元へと刃を振り下ろす。


「取った。≪銀砂振動剣ぎんさしんどうけん≫」


 そうして、戦闘時の紅葉の無機質な声と共に、高速で振動するナノマシンの荷電粒子を纏ったアダマンタイト製のナイフが瑠璃の肩を抉る様に突き刺さった。

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