表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第二章『咎人と断罪者』
55/340

第二章第六話「ひとまずの決着」


 周囲に巻き起こる血の様な赤い宝石による爆熱と銀の砂嵐の中。


 紅葉は瑠璃に肉薄し、荷電粒子と超振動により高熱鋭利化したアダマンタイト製のナイフを瑠璃の右肩に突き立てる。


 その重量は紅葉の全体重860kgと共に戦闘中に体内に取り込まれていた肉体強化用のナノマシン約100kg強を含めておよそ1t。


 その力が一時的に身体強化され、普段の音速機動より更に早い、超音速の早さでほぼ単分子に等しいナイフの刃先に込められる。


 通常の生物の身体であれば、それはいとも容易く切り裂かれるだろうし、如何に魔法や魔力と呼ばれる紅葉の知らない技術系統の力が使われていたとしても、流石にこれほどの純粋な運動エネルギーによる一撃は防げない。


 そのはずである。


 が、紅葉のナイフは瑠璃の肩に突き刺さり、その半ば辺りで動きを止める。


「!」  


 確実に切断できるはずだった。しかし、出来なかった。


 その理由は、紅葉が切断しようとした場所にあった。



 瑠璃は現在、バスタオルを一枚撒いているだけの姿である。


 その為、紅葉が突き刺した肩もよく見えるのだが……、丁度、その首から鎖骨、そして肩に当たる部分までが、何時の間にか、先程までは無かった青い皮膜の様な肌に覆われているのである。


 その瑠璃の髪色と同じ色の、宝石の様に煌めく瑠璃色の肌が、紅葉の渾身の刃を防いだのだ。


 そして瑠璃は、肩の痛みに少し呻きつつも、その紅葉の動揺と一瞬の隙を見逃さず、自身の背後に魔力を集中し、勝ち誇ったかのような勝利の笑みを浮かべながら、その魔法を解き放つ。


「虚無の力に服しなさい……! ---星屑の無の地平線スターダスト・ゼロ・ホライゾン---!!」


 瑠璃が虚無の力と呼んだその力、その黒い無の地平線の正体を知っていた紅葉は咄嗟にその名を口から漏らす。


「!! 縮退しゅくたい……、ほう……!」


 当然、その力を察知した紅葉は避けようとするものの、先程の一撃による反作用の衝撃で、体が硬直して動かない。


「っ……! くそっ……!」


 ようやく動いたのも束の間、瑠璃が放った無数の黒い星屑、即ち圧倒的な魔力によって一時的に生成された幾つもの小型ブラックホールによる魔弾は、紅葉の四肢を容易く捻り切り、空間に穴を開けて消滅する。


 その後には、その消えた空間に引き摺られる様に突風が巻き起こり、周囲の砂とナノマシンを巻き上げる。


「はは…………、これで、どうです……? 死ぬとまではいかなくても……、達磨だるまぐらいには……、なったんじゃ……、ないですか……?」


 流石に先の一撃はかなり効いたのだろう。


 瑠璃は右肩に突き刺さったナイフを抜き捨て、傷口を左手で押さえて治療を施しつつ、砂煙の向こう側を見る。


 だが……、そこにいたのは、瑠璃の予想したものとは大きく違った。



 煙の晴れたその向こう側にいたもの。


 それは……。



 龍の様な尾を持ち、陸鳥か竜脚類の様な後ろ足と、羆の様な腕を持つ、獅子の様な体躯の、緋色の獣。


 その背には、紅葉が付けていたものと似た鷲の様な翼が四枚あり、頭には鹿の様な枝分かれした四本の大角が生えている。


 そして、その頭部だけが、紅葉のものだった。


 その肉食獣らしい体躯にまで膨れ上がった紅葉の頭が、その顎を喉から首の辺りまで裂いて、内部に幾つもの巨大な牙を覗かせながら、瑠璃に話しかける。


「……いや、うん。流石にここまでやるとは思わなかった……。ちょっと舐めてたかも……」


 そうして話す紅葉の様子はある種の悟った感じがあり、最早攻撃意思は無さそうに思えるが、その先程までの少女に近い体躯とはまるで似つかない、巨大で奇怪な魔獣の姿には流石の瑠璃も驚いたらしく、口を栗の形にあんぐりと開けてぽかんとしつつ、紅葉に話しかける。


「え、いや、……それはこっちの台詞ですよ。おかしいとは思っていましたが、そっちも本体は別だったんですね……。かっこいいじゃないですか」


「ほんと? 照れる」


 そう言って紅葉は前足でくしくしと顔を洗うそぶりをするが、よく見ると周囲には先程千切れて落ちたままの紅葉の手足がある為、その手は恐らく何らかの超再生能力で新たに生えたものなのだと理解できる。


/(! あれは、さっき引き千切った腕……? ……殺してから蘇生しようと思ってましたけど……、そもそもそんなに再生能力があるなら消滅させる以外に殺せるかどうか怪しいですね……)/


 それに気付いた瑠璃が戦慄すると同時に、ここで再び二人の間に拮抗状態が発生する。


 それは端的に言うと、瑠璃の側としては、術式と魔力量で圧倒しているものの、紅葉の異常な再生力と戦闘技術を前に殺さず削る事が難しく、紅葉の側も戦闘技術では上回っていても、ナノマシンの残量的に瑠璃を捕らえ切る事が難しいのだ。


[ナノマシンの残量的に瑠璃を捕らえ切る事が難しいのだ。]


(後、なんだこの身体……。使い方はわかるけど、さっきまでよりパワーが段違い過ぎる……。良い事だけど、これで手加減出来るかどうか……)


 勿論二人共、奥の手はまだ残してあるものの、流石にこれ以上の力で殺り合うとなると本気で相手を殺しかねない。


 先程紅葉が肩を狙ったのも、瑠璃が紅葉の手足だけを吹き飛ばしたのも、二人共本気で相手を殺すつもりはないからである。


 そう、これは今の所はまだ殺し合いではなく、ただの喧嘩なのである。


 そして、その喧嘩を始めに吹っ掛けた紅葉の側としては、この戦いで幾度となく刃を交えた感想から、もう既に瑠璃が本人の言う通り恐らく味方であるという事がわかっている為、これ以上の交戦もあまり意味を持たない。


 そこで紅葉は仲直りしようとして「あー、っと……」と話しかけながら、徐々に身体を人型に戻して立ち上がりつつ、握手しようと瑠璃に近付くが、瑠璃は不可視の剣を構えながら後ろに跳んで紅葉から距離を取り、無意味な戦闘の続行を告げる。


 今の紅葉は立ち上がると身長が5mぐらいあるので、威嚇だと思われたのだ。


「おっと、私の勝ちは揺るぎませんよ? 何せ私の場合、こういう時は何時も援軍が……」


―キィンッ―


 援軍が来る。そう瑠璃が言い終わらない内に、激しい閃光と共に炸裂音が響き、二人の間に何かが落ちて来る。


―ドォォォオオン……―


「ほらっ!」


 その爆音と共に現れた何かを、瑠璃は話どおりの援軍だと思ったらしく喜ぶが、それとは別に、その得体の知れない何かは落下と共に生じた煙の中で瑠璃と紅葉の両方に向けて年代物のライフルを構え……。


 躊躇無く引き金を引いた。

[一口メモ!]

紅葉の普段の巡航速度は0.3音速程度で時速約300~350km(それ以上で走ると周囲にソニックブームの問題が出る為。シロとの追いかけっこの時もこの程度。


今回の様な真面目な戦闘時の速度は基本遷音速の0.8~1.3音速程度で時速約950~1500km。


また、戦闘時の瞬間加速では一瞬だけ超音速に突入し、1.3~5音速の時速約1500~6000km程度の速度を出す時もある。


また、一部の特殊な環境下の戦闘では極超音速で5音速以上、時速約6000km以上の速度を出す時もあるが、周辺力学の問題で地上で行動するのには問題があるのと、消費エネルギーが大き過ぎる上に隙が出来、単なるエネルギーの無駄で終わる事が多い為、10~20音速、時速約12000~24000km以上は実用的ではなく、紅葉が戦闘でその速度を出す事はまずない。

※約1音速(時速1200km)で音(空気)の壁が、約3音速(時速3600km)で熱の壁が発生するので危険。



[おまけ!]

――そこを踏まえて今回の紅葉の攻撃を一部計算すると……?――

運動エネルギー = 1/2 x 質量 x 速度の2乗なので、紅葉の最後の一撃の威力は

1/2×1000×(1500×1500 ※時速5400km程度と推定)=11,2500,0000[熱量]


比較すると、

紅葉の攻撃=11,2500,0000[熱量]

1kt核爆弾=4,1840,0000,0000[熱量]

120mm戦車砲=1280,0000[熱量]


=紅葉の攻撃はだいたい1t爆弾やバンカーバスター程度の威力が一点に集中したものと推定される。後ついでにビームナイフと振動剣分。


つまりは思ったよりも手加減してる感じが伝わってくれると幸いですの!


尚、紅葉の時空間砲や瑠璃のゼロ・ホライゾンは空間ごと捩じ切り消滅させる攻撃である為、威力としての換算は基本的に無理です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ