第二章開幕第二話「疑惑と暗鬼と駆け引きと」
「ふむ。銃を向けられてもその余裕振り、しかもこういうパターンは初めて、ね」
紅葉は瑠璃の言動を読み取り、思考を廻らせる。
その結果。そうした類の能力について少し心当たりがあった紅葉は、眉間に皺を寄せつつも、疑念の解消も兼ねて瑠璃に問い尋ねる。
「もしかしてループ能力者か何かって事? それなら素直に降参するけど」
その紅葉の様子は瑠璃の大寒波の様な冷たく鋭い気配とは違うものの、また別の、得体の知れないおぞましさを漂わせており、中身が読めない。
とはいえ、瑠璃にとってはやはりそれも恐るるに足らない些事らしく、片手を腰に当て、もう片方の手を軽く紅葉に向けながら呆れた様に聞き返す。
「おや、自信満々に銃を突き付けて来た割には弱腰ですね。仮に私がループ能力者か何かだったとしたら不都合なんですか?」
その口振りは瑠璃がループ能力者ではない事を宣言する様なものである為、紅葉としてはやはり謎が深まるが、ここで情報を出し渋った所で意味は無いので、紅葉はもしも瑠璃がループ能力者だった場合の降参理由を述べる。
「……いや、もしループ能力者だとしたら私詰んでるから。何せ、今日出会った時点だと私、何の知識も無い上に気絶して介抱されてるしね。もしその時点にまで遡られてトドメさされたらそこで終わる」
その紅葉の台詞に、瑠璃は紅葉の正気を見て取りつつ、紅葉に向けていた手を引き戻して、顎に当て、少し考えた後に返答する。
瑠璃の側も、紅葉を探っているのだ。
「……あぁ、それもそうですね。それにあの状況なら事故死扱いでしょうし、私には何の影響も出ません。介抱せずに見捨てれば良いだけですからね」
そうして返された台詞は当時の状況を鑑みても的を得ており、そうした所からも瑠璃がよくある自分の能力に胡坐をかいて、その場の感情を元に脊髄反射で行動する様なタイプの存在ではない事がよくわかる。
「それで? じゃあ結局、貴女は何者なの? 敵? 味方? それともそれ以外? 少なくともループ能力者の類じゃないみたいだけど……」
その紅葉の質問に、瑠璃は顎に手を当てたまま、身体ごと大きく横に傾いて首を傾げ、疑問を述べる。
「そこがわからないところですね。私としては貴女が今回の仲間だと思ったので、味方として振舞っていたはずなんですが……。一体私のどこがそんなに不審だったんですか?」
その表情は紅葉の返答が不愉快だとかそういうものよりも、純粋な疑問が勝るらしく、口をへの字に曲げながらの顰め面をしている。
(仲間だと思ったから味方として振舞っていた……? 安易に信用するのもどうかと思うけど……、少なくとも敵ではなさそう、か……?)
紅葉はその瑠璃からの遠回しな推定味方であるとの返答に、少しだけ銃の角度を下に下げ、警戒を緩めるポーズを取りながらに返答する。
「今回の? 言ってる意味がわかんないけど……、どう考えてもおかしいでしょ」
「……?」
とはいえ、そう言われても瑠璃としては首を傾げるばかりであり、そもそも紅葉が何を言っているのかがわからない。
そう、この状況の異常さが、瑠璃には認識出来ていないのである。




