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第一章幕間第二話「価値と認識」


 夕陽の差し込むヘリポートにて。


 上空の鴉の「アホーアホー」という間抜けなBGMと共に、アリシアが魔法で用意した野外カフェテリアの椅子に腰掛けながら、二人が綾夢とアリシアの説明を聞いたところ、内容は以下の通りである。


 まず、この世界では、全体的に徹底した実力主義の社会構造が敷かれており、依頼所は犯罪者等の危険人物を除いて、駆け出しであろうと実力者には実力者向けの依頼を渡し、その成果によって実力者が即戦力として、その本来あるべき実力の階級まで一足飛びで伸し上がれる制度になっているらしい。


 そして、今回渡された依頼はSランクと呼ばれる番外依頼も含めた全一般依頼12ランク中、上から3番目の難易度の依頼であり、それをこなすと一気に市民階級そのものが上昇するのだそうだ。


 これにより二人の階級は、現在二人が位置する必要最低限の権利しか持たない無産階級から、その上の階級に移る事になるのだが、無産階級は元々階級としてカウントされていないので、計算上は無視する事になり、二人は下流階級からの昇格として、中流階級に入り込む。


 ここまでは、この世界の通常の制度通りであり、この後、依頼達成手続きの後、二人の身分証は中流階級序盤であるブロンズランクに更新され、それと同時に統一政府ヴィールドによる国際銀行からブロンズのキャッシュカードが贈られる事になるはずだったのだが……。


 どうやら、初めからこの程度の依頼は軽くこなせると予想されていたらしく、綾夢による危険度無し判定と獣好きのアリシアからの働き掛けにより、ブロンズよりももう1ランク上のシルバーランクレアリティへの昇格とシルバーキャッシュカードの発行が先に行われていたという事だそうだ。


 そこまでの事柄を、主にアリシアが説明し終えると、アリシアは隣に座ってむしゃむしゃとケーキを頬張る綾夢の頬を軽く引っ張りながら綾夢を問い詰める。


「少なくとも依頼のランクと報酬金額の提示ぐらいは依頼所側でやっとくべき事なんだけどねー? ねー? 綾夢ー?」

「忘れてたなう。てへぺろ!」

「反省の色がないなー」


 元々この二人はかなり仲が良いのだろう。綾夢のミスに対してアリシアはそれ以上に追及したりせず、じゃれ合っている。


 とはいえ、ミスについては別に良いとしても、それらの説明の中で気になった点があった為、瑠璃がそれについて尋ねる。


「しかし、実力者、ですか? 綾夢さん。私達って今どのぐらいのランクだと認識されてます? 二人共役所の検査ではアンノウンだったので、この世界でのランクを把握していないのですが……」

「おや? そうだったなうか?」


 その質問に対し綾夢は、「まぁアンノウンは計り難いんだけど……」と前置きしつつ二人のランクを告げる。


「私の見立てだと瑠璃ちゃんと紅葉ちゃんは二人共SS(ダブルエス)ランクなうね。つまりは最高位であるEXイーエックスの2ランク下。そこそこ強いと思って良いなうよ」


「上に後2ランクあるんですか……」


「正確には基本範囲外のレジェンドランクがあるから3ランクなうな。といってもレジェンドなんてこの世界でもそうそういないから覚えなくて良いなうけどな」


 シロの探索クエストがSランクの依頼だった事を考えると、瑠璃と紅葉が本来受けるべきSSランクの依頼は更に難易度の高いものである事が伺える。


 そう考えると、それをこなせるSSランクより更に上がまだ三段階もあるというのは最早、現実味が無いどころか完全なる狂気の沙汰としか思えない。


 とはいえ、少なくとも綾夢とアリシアにとっては、それらの事柄は至って普通の事らしく、世間話の一環として流して本題である依頼の達成報告について話を戻す。


「それで、凶暴化の原因って何だったの? その品物がどうとか言ってたみたいだけど……」

「あぁ、それはこれです」


 そう聞かれた瑠璃は、まだ先程の話が名残惜しいものの、仕事の一環として話を戻し、手に持っていた創誓の欠片にかけていた布を取って二人に見せる。かなりのエネルギー物質である為、移動中に破片等が零れて周囲に散らばらない様に布で包んでいたのである。


「! これは……! ふむ? うぅん……?」

「創誓の欠片なうな。しかも結構でかい。瑠璃ちゃんこれ何処で手に入れたなう?」


 二人共割と珍しいものを見たような反応。しかし、アリシアはそれを見て考え込み、綾夢も詳しい情報を知ろうとする。


 紅葉が中空の文章による解析から得た情報によれば、この物質はその保有するエネルギーの分だけどんな願いでも叶える事の出来る力を持つ、ある種の願望器の筈だが、二人共その存在を認知しており、珍しがってはいてもほとんど驚いていないところを見るに、稀少ではあってもそこまで凄いものではないらしい。


 そうした二人の反応を見てか、それとも単なる瑠璃の性質なのか、瑠璃はその入手先を特に偽る事無く率直に答える。  


「シロちゃんの胃の中から出てきました。間違って食べちゃったんですかね?」



「へぇ……。シロ?」


―!!――キュゥゥゥゥン……―


正解らしい。


「はぁ……。動植物の凶暴化の影響をシロまで受けたのかと思って来てみれば……、まさか食あたりが原因で暴走してただけなんて……まったく、お馬鹿ー」


 アリシアにちょっと怖い笑顔を向けられ、すっかり縮みあがってしまったシロを撫でながらアリシアは頭を抱える。


「しかし、そうなると今回もまたハズレね。動植物達の凶暴化の原因がまるでわからないわ」


 そう呟き項垂れるアリシアの言葉が少し気になった紅葉はケーキを食べる手を止め、隣の綾夢に話を聞く。


「うん? 他の動植物の凶暴化はこの石が原因で起こったわけじゃないって事?」


 それを聞かれた綾夢は片手で携帯端末を操作し、もう片方の手で達成の判子が押されたシロの依頼書に「原因:誤飲」と書き込みつつ紅葉の質問に答える。


「あぁ、今回の凶暴化現象は創誓世界に限らず他の異世界でも広く頻発してるものなんなうけど、その創誓の欠片はこの創誓世界にしか存在しない上に数もそこまで多いものじゃないんなうな。具体的に言うと常世界における金と同じぐらいの産出量なう。それに、シロを暴走させたそのレベルの大きさのものになるとかなり珍しいなうから、まず間違いなく今回の凶暴化現象とは別のものなうな」


 広くみられる災害に、稀少物が原因である可能性は低い。それもこの世界にしか存在しないものであるのならば、異世界で同等の現象が起こるのはおかしい。


「まぁその創誓の欠片だとだいたい10kg分ぐらいだし、100万SP分くらいの願いが叶えられるなうから大事にしとくと良いなうよ。もし売る気ならその時は相場は1グラム当たり1億ヴィストだけど、それならその10倍の1グラム当たり10億ヴィストで私が買い取るから売る時は言って欲しいなう。別に他の店で売っても良いけどある意味危険物だから政府直轄の店以外には売っちゃだめなうよ。危険物取締法で捕まるなう」


 今回、回収した創誓の欠片は約10kgで1グラム当たり1億ヴィストと考えると全部で1兆ヴィスト、それを綾夢に売るとその10倍で10兆ヴィストになるらしい。


「えっと、1ヴィストの価値がどれくらいかわかんないんだけど、それ店長元取れてる?」

「ん? 私の心配なうか? 大丈夫なうよ。創誓世界では基本買取時は販売価格の10分の1で買い取るっていうのが基本相場になってるだけなうから私は単に店頭販売額で買い取るって言ってるだけなう。割と珍しい品だからそこから更に値段の吊り上げも出来るし、別に損はしてないなうよ」


 つまりは普通の店では1億で買い取って10億で売るところのものを綾夢は10億で買い取って10億以上で買い取ってくれる相手に売るらしい。なるほどそれであれば損はしていない。


「それとヴィストの価値はだいたい何処の国でも雑穀1kgで100ヴィストぐらいなうな。詳しく知りたいなら店のメニューでも頼むと良いなう。うちの店のお勧めはバーガー類とスイーツだから高いなうけどな?」

「なるほど……。え? 雑穀1kg100ヴィストって物価安くない?」

「農耕技術は割と安定してるなうからな」


 そうして紅葉の質問に答え終わった綾夢は、詳細まで書き終わった今回の依頼書の一部を切り取り、残りをアリシアに渡して依頼の完了を告げる。


「はい、依頼完了なう。データ入力の方も完了させといたから後は役所の自動取引装置に身分証とキャッシュカードを差し込めば身分証の更新と支払い現金の確認が出来るなうけど、他に何か質問あるなうか? ほんとは情報料とか必要な事も今なら初回サービスって事で答えてあげるなうよ」


 その言葉に対し、幾つかの情報入手を考えたものの紅葉は遠慮して首を振ったが、瑠璃の方はかなり図太いのか、遠慮する事無く小さく手を上げ、質問する。


(? なんだろ……)


「あ、それでは個人的な事なんですが少し質問が」


 そうして、すっと手を上げた瑠璃に注目が集まる中、瑠璃は問う。


「お二人は次元を渡る黒い天使について何か知りませんか?」


 この世界の根幹に関わる質問を。

―基本依頼12ランク―

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