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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第一章『異界からの来訪者』
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第三十九話「雨降って地面がなんとか」


「---エクステンデット、オールキュア!---」


 放心しながらも空に向かって蒼熱線を放つシロに対し、間髪入れずに浄化の魔法が放たれる。


 そう、原因を取り除いただけでは暴走状態はまだ解除されていないのである。


 しかしそれも今の浄化で解除された。


 これでもう安全である。



 そう思った矢先、シロの放った蒼熱線を受けて崩れた天井が瑠璃の上に落ちて来る。


「!?」

「危ない!!」



 ……。


 瑠璃の瞬間移動には欠点がある。


 それは周囲の空間を認識できていなければ移動できない事。


 崩落する天井による瓦礫と砂埃で周囲の空間が認識できていない今、瞬間移動は使えない。


 しかし瑠璃はそれでも狼狽(うろた)えたりはしない。


 瑠璃を余裕たらしめる最大の力は瞬間移動などではないから。


 その強大な力に守られた瑠璃にとって、生き埋めの絶望など、恐るるに足りない。


 だが、その瑠璃の顔立ちが今は蒼白とし、過呼吸を起こしたかの如く口をぱくぱくとさせている。


 瑠璃自身は一片の傷も負っていないのに。


 崩れ落ちる瓦礫の中で瑠璃を守った存在がいたから。


 その存在の顔が近くにあり、その身体と翼が瑠璃を守り切った。


 しかし、瑠璃の顔や身体にはその存在の髪色と同じ、赤い液体が垂れ流れて来て……。


「紅葉さん!!!!!!!!」

「いや、耳元で叫ばれるとうるさいから」

「は?」


 紅葉にとっては何度目になるのか、今日の瑠璃の救出劇。


 流石に今回は危なかった気もするが、紅葉は自身に伸し掛かる瓦礫を拳一発で吹き飛ばし、瑠璃を抱き抱えながら瓦礫の上に這い上がる。


「……………………は?」

「いや、さっきから何なの。鳩がビームライフル喰らった様な顔して」

「それたぶん消し飛びますよね!?」


 紅葉のいつものふざけた発言に瑠璃の蒼白感は吹き飛ぶ。


「はぁ……。なんか心配して損しました……。慰謝料払ってください。相場の十倍で良いですから……」

「相場を知らないからあれだけど、たぶん高い」


 そうして安心したのか、瑠璃も紅葉の冗談に乗っかってくだらない事を話しつつ、紅葉の血でべたべたになった身体のまま、自身をお姫様抱っこする紅葉に抱き着き、しな垂れかかる。


―ぐちょ……―


 本来であれば(すこぶ)る不快な嫌がらせに近い行為だが、既に二人共血塗(ちまみ)れなので問題は無い。むしろ、瑠璃の頬はクールながらも多少にやけて紅潮しており、紅葉の方も可愛い女の子に抱き着かれてまんざらでもない。


 紅葉については今日一日スキンシップを仕掛ける度に軽くあしらわれていたというのもあってか、背後で尻尾を軽く振りながら、むしろ積極的に瑠璃を持ち替え、密着度を上げた上で瑠璃にすり寄っていたりする。


 そんな紅葉を瑠璃は咎める事無く大人しくしていたが、しばらくして瑠璃の方からもおずおずと紅葉にすり寄ろうとして、ある事に気付く。


 紅葉の身体は細くしなやかで、構造上は女のものと酷似しているが、それにしては脂肪が少なく、妙に筋肉質で、何より胸が無い。よくよく触れてみると、骨格もなんだか違う気がする。


/(あれ……? 女の人、でしたよね……? さっきは胸あった気がしますし、ブラもしてるし……)/


 しかし、一度気になってしまうとそのもやもやは晴れず、妙な高揚感と共に頬と身体が更に熱くなって、それを聞かずにはいられなくなる。


 そして、耐えられなくなった瑠璃は紅葉を逃がさない様にがっちりとホールドした上で聞いてみる。


「…………………………えっと、紅葉さん。もしかして男の方ですか?」

「…………………………え゛っ」


 その言葉を聞いた瞬間。紅葉は蒼褪めつつも固まり、自身の現在の身体を確認しようと瑠璃に密着した自分の胸を見る。


 が、そこで紅葉は目にする。


 平らになっていた自分の胸がどんどんと膨らみ、同時に筋肉質だった身体が少ししぼんで女の子らしくなる様子を。


 ついでに背中にあった翼もその変化と同時に消え去る。


(これは……)


 そして、身体が変化し終わったのを見ると、胸が膨らんだ分遠くなった瑠璃に対し、真顔で返答する。


「ううん。女の子ダヨー」

「いや、今絶対変化しましたよね!? 何か翼も消えましたし!?」


 そうしてツッコむ瑠璃に対し、自分も良く分かっていない事をあまり深く追及されたくない紅葉は、名残惜しみつつも瑠璃をお姫様抱っこから地面に降ろしてお茶を濁す。


「ま、まぁそこはそういうものって事で……」


 しかし、瑠璃の方は降ろされても紅葉をホールドしたまま離さず、紅葉の耳元で意味深に囁く。


「……男の娘なら守備範囲内ですよ」


 それだけ言うと、瑠璃はそっぽを向き、詠唱無しで紅葉に回復魔法をかけて癒し、その後はホールドも解除して紅葉の元を離れて正気を取り戻しながらも崩落に巻き込まれて瓦礫に埋まったシロを掘り起こしに行く。


 そんな瑠璃を見送りつつ、紅葉はボソッと呟く。


「男の娘…………」


 紅葉はかつての自分の性癖を知らない。むしろ今の自分の性別も知らない。だが……。


 今ここに確実に歪みそうなのは間違いが無かった。

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