第三章第百十八話「新たな思惑と陣形都市の補助機能」
さて……、何故か、本来この会議には特に何の関係も無かった筈の貴賓席にいたジオネールが、今、本作戦に関するかなり重要な部分に関して介入し、それは自分と友人達が行う、と言い始めた訳だが……、
そうした、ミスティリアとジオネールのなんだか色々と含みのある、腹黒そうなやり取りを聞いていた紅葉は……、そこで、ある重大な事実に思い当たる。
というのも……、今、ジオネールが友人達と共に作業する、と、主張し始めた、その場所は……、
今回の修学旅行において、ゲーム制作用に珍しい世界樹とその内部ダンジョンの資料を探していた『五色令嬢歌姫』の面々が、最も行きたがっていた……、次元樹イグトフェルナスそのものなのではなかろうか。
それに気付いた紅葉は、一瞬目を見開いて、不敵にほくそ笑むジオネールの顔を見つめ、内心、(こいつ……! やりやがった……!)、と、思いはしたものの、それを口には出さず、表情もすぐに戻して素知らぬ振りをし、
かくいう、今ジオネールに質問しているミスティリアの方も、恐らくそうした所も全て把握した上で行動しているのか、そんなジオネールの主張を聞くと、クスッと小さく笑って発言ボタンを押し、
―ぴぽーん―
「あぁ、なるほどー? 確かにあたしの可愛い愛弟子のジオネール君とその友人達がやるなら安心だー。これならクリフォトの疑似起動だけじゃなくて、陣形都市側の攻略まで手伝ってくれそうな感じだねー? ねー? ジオネールくーん?」
と、かなり棒読みな上、少々からかう様なニュアンスでそれが安全に可能な事を肯定しつつ、ついでにジオネールに陣形都市の方も手伝えと圧をかける。
うん。どうやらミスティリアは、圧をかける際は愛称ではなく普通に本名呼びになるらしい。実際コワイ。
ちなみに、それを聞いたジオネールの方は、「へ……? いえ……、陣形都市側は別に……」と言おうとするものの、ミスティリア側からの「ねー?」という圧の強い可愛い追撃により、「ひっ!? ひ、ひひ、ひひひ……、し、師匠のお言葉とあらばー……、善処シマス……。くひっ……」と、黙らされてしまう。強い……。
尚、そうして、なし崩し的にそうした都市間通信に関するあれこれはジオネールとその仲間達が担当する、という事になった所で、その作戦の通釈がミスティリアから全体に対して入れられるが……、
その内容はこうである。
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<陣形都市のパスを利用した限定的都市間通信について>
まず、この森林都市レインフィートがその飛び地である次元樹の森に持つ、陣形都市というのは……、具体的には、その北部を常世界の内仁樹セフィロト、南部を常世界の外殻樹クリフォトに対応させ、それぞれその十のセフィラに呼応する様、十の要塞都市と、その中間となる一つの要塞都市で作製した、合計二十一の巨大な要塞都市群であり……、
その各都市は、そうしたセフィロトとクリフォトのセフィラ……、つまりは端的に言うとそれらの樹の各部位、を司りつつ、そうした都市同士を繋ぐ外郭交通路をパス……、つまりは経路として持っているのだが……、
この陣形都市のセフィロトとクリフォトとしての機能、及び、それらのセフィラとパスの機能は、このレグナ樹海全体を覆う都市間大結界、森林大結界『十重方陣デカグラムフォレスト』の方とも複合的に連動しており、
それは、その内仁樹セフィロトと外殻樹クリフォトの名の通り、
内仁樹セフィロトを構成するセフィラとパスは、樹海の内側から順に『一重結界ヘクサオクタグラム』と、『三重結界アハトエックシュテルン』を構成する国家の主要都市群に対応しており、
外殻樹クリフォトを構成するセフィラとパスは、樹海の外側から順に『四重結界ツヴァイクアドラート』を構成する国家の主要都市群に対応しているらしく、
今は陣形都市南部の外殻樹クリフォトに当たる陣形都市群が占領されている為、その機能が失われているものの……、そのクリフォト側の陣形都市群の機能で生成された、次元樹イグトフェルナスを覆うクリフォトの結界を解析、ハッキングし、そのクリフォトの結界を疑似的なクリフォトとして成立させた状態で、今ある本物のセフィロトの陣形都市とパスを繋いで連携させれば、それと連動している『十重方陣デカグラムフォレスト』のクリフォト側と繋がっている主要都市にも疑似的な魔導回線が繋がって、今作戦に必要な、『四重結界ツヴァイクアドラート』を構成する主要都市との連絡網が作成できるのだそうだ。
……ちなみに、そうしたクリフォトの結界は相手が張っているものなのだから、その結界が解除されてしまえば、この疑似連絡網もまた切断されてしまうものの、そうなったらそうなったで、今度はまた、次元樹イグトフェルナスを中心とした、精霊柱廊と呼ばれる、『十重方陣デカグラムフォレスト』の各主要都市を柱として次元樹イグトフェルナスに同期接続し、それら全域を繋ぐレグナ樹海本来の超広域光速通信が復活するので、それもまたよしである、との事らしい。
尚、そうした事柄をジオネール達に任せるのと同時に、ミスティリアが陣形都市の方も手伝えと脅したのは、単純に陣形都市戦での戦力強化だけでなく、その結界を掌握したのなら……、結界を解く事そのものはクリフォト側の全ての陣形都市を解放してからでなければ出来ないのだが、それとは別に、現在占領されている陣形都市とその外郭交通路を一つ解放する毎に、その陣形都市の司るセフィラと、それを繋げる外郭交通路の司るパスにリンクしている国家の主要都市を、そのセフィラとパスの内容通りに強化出来る為、各地の負担がかなり減るからの様だ。
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(……要するに本来のクリフォト側の陣形都市の機能を相手が張ったクリフォトの結界に肩代わりさせる事で、元々あった都市の連動機能が取り戻せる、って事か。なるほど……。で、その上でジオネールさん達がいれば、結界の魔導回線が使えるから、それで陣形都市の攻略状況に応じて味方が強化出来るし、陣形都市側の攻略も手伝え、って事ね……。まぁ、そんな事が出来るなら、そりゃ使わない手はないよね……)
そうして、始めは割とチンプンカンプンだった紅葉も、そうしたミスティリアの説明を聞いて、徐々にその話に納得していくが……、
そんな便利なものを今迄誰も使用しようとしていなかったのには……、
当然……、それ相応の理由がある訳で……、
そうしたミスティリアの通釈講義が終わった所で、それら全てを理解した司会のリディアから、ミスティリアに質問が飛ぶ。
―ぴぽーん―
「えっと……、内容は理解したんですけど……、それ、危なくないですか? 今の私の本体って、外側は<星雲の勢力>の皆さんが濁流の様に流れ落ちて来てる状態ですから、当然外壁を駆け上がるのは無理ですし……、内部は私の免疫体や共生体がうようよしてるんですが……」




