第三章第百十七話「通信不安の解除法」
時刻は午前十一時半。
議論が戦場での通信環境について、悩みを抱え始めた時。議員席側のジオネールから、それならば陣形都市のパスを使ってはどうか、という提案が出る。
が……、
はて? パスとは何ぞや。
そうして、その情報を知らない地の分と紅葉は揃って首を傾げるが……、
それとは別に、その情報を知っているらしき執政官のミスティリアや、空軍将のエアーシア、戦略魔導師長のウェルフェアなどは、それを聞いた瞬間、
「お、流石ジオ。良い案だね」
「なるほど、陣形都市のパスですか……、確かに、あれを使えば拠点通信ぐらいは確保出来るかもしれませんね」
「わー! ジオちゃんあったまいいー!!」
と、その案を評価し、賛同を示し始める。
……ふむ。どうやら、その案はそうした面々から見ても、今回の必要要素を十分に補う事の出来る案ではある様だ。
が、しかし、その案は現状すぐ使えるというものではないらしく、そこで先程の三人と同じくその案を完全に理解したと思われるティンクルの方から、発言ボタンの音と共に、ジオネールへの質問が飛ぶ。
―ぴぽーん―
「はい! ティンクルちゃん!」
「はいはい。んー、私としてもジオのその案には賛成だけど、今の陣形都市って、内仁樹セフィロトの方しか機能してないわよ? 今回の作戦で必要になる私達第一結界の中核都市は、外殻樹クリフォトに紐付けられてるから、セフィロトだけ機能しててもパスは繋げられない筈だけど、そこはどうするつもり? 鏡面領域や置換術式を発動させるには流石にコストが高い気がするけど……」
そうして、ジオネールの提案を理解したティンクルは、そうした提案そのものには賛成するものの、それを行う上での不備を指摘し、
それに対するジオネールは、こちらもまた発言ボタンを押しつつ、
―ぴぽーん―
「はい! ジオちゃん!」
「ひひ……、そうですね……。確かに、鏡面領域を展開して、現在も稼働しているセフィロトの鏡像としてのクリフォトを生成して稼働させる事も……、置換術式を発動し、セフィロトとクリフォトの接続を置き換える事で、稼働中のセフィロトを停止して、クリフォトの側を動かす、という事も出来ますが……、それはどちらもコストが高い上、そんなにすぐ使用出来る物でもありませんね……。ひひっ……、エアーシア様やウェルフェア様がやるというなら話は別でしょうけれど……」
と、その方法の不備を認め……、
そのジオネールの言葉を聞いたエアーシアとウェルフェアは、そこで「おや?」「あれ? 私かエアーシアちゃんがやるって話じゃないの?」と、首を傾げるものの、それも読んでいたらしきミスティリアは不敵に微笑み、
ジオネールは、その二つではない、第三の選択肢を、提示する。
「でも……、ひひっ……、今なら、ありますよね……? ひひっ……、その、鏡像でない……、本物のクリフォトを使用した、クリフォトの実体が……、私達の通信を阻む形で、次元樹イグトフェルナスの周りに……、くひっ……」
そうして、ジオネールが示唆したそれは、正に今、この通信問題に関する問題源となっている、次元樹イグトフェルナスを覆うクリフォトの結界の事であり……、
それを聞いた周囲は、「あぁ……!」「なるほど!」「え゛? あれ使うの? 本気?」と、エアーシアとウェルフェアは乗り気であるものの、ティンクルはそれを理解した瞬間、少し嫌そうな顔をし、
初めからそこまで全てを理解していたミスティリアはというと、「ま、現状最速最短でクリフォトを稼働させようとしたらそうなるよねー。……尤も、あれにそのパスが繋げられれば、の話だけど」、
と、軽く溜め息を吐きつつ、半眼でにやりと微笑みながら、発言ボタンを押し、ジオネールに質問を投げかける。
―ぴぽーん―
「……で、そのパスを繋げる役割は誰がやるの? 少なくとも、現状のクリフォトによる結界の解析が出来て、尚且つ次元樹イグトフェルナスの内部構造体を突破、或いは、その外壁を駆け上がれるだけの人材が必要だけど……、あたしがやる? それとも、何処かから丁度良い感じの部隊を用意するつもりなのかな?」
そうして問いかけられたジオネールは、そんな、自身がこれから話す内容も全て見通した上で行われた、師匠からの優しいパスに内心小躍りしつつも、表情は平静を装って、ゆっくりと発言ボタンを押し……、
予め決めて置いた、予定通りの言葉を、口に出す。
―ぴぽーん―
「ひひっ……♪ あぁ、そこはご心配なく……。それぐらいでしたら、私と友人達がやりますので……。くひひひひひっ……!!」




