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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第一章『異界からの来訪者』
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第二十九話「直感の道」

 時刻は三時頃。


 何処までも続くかの様な暗い地下水路の中。激しい銃声と剣戟の音が水路に響き渡る。


―ガルルルルルル!!―


―ギィン!ギィン!グシャッ!!―


 しかし、それも束の間。


 激しい発砲音は肉の潰れる様な破砕音と共に徐々に消えていき、やがて聞こえなくなる。


「これで最後っ!!」


―ギィン―


 そうして、紅葉の掛け声と共に、最後の発砲音が消失し、安全を確保した二体の獣が会話を始める。



「……やれやれ、ここってこんなのも住み着いてるんですか? そりゃ確かに危険だとは聞きましたけど」

「うん、正直予想外だね」



 そうして話す二体の獣、瑠璃と紅葉の周囲に散らばるのは鎧の様な蔦と機関銃の様な茨植物で武装されたヘルハウンドの群れの死骸。それ以外にも遠くの方には榴弾の様に爆発する木の実を矢の先に装備したクロスボウの様な蔓植物を装備した群れも倒れている。



「ヘルハウンドなんて魔界の中層あたりの生物、街中の水路で出て良い存在じゃないはずなんですけど……」



 そう言って、地面に倒れた体長3m程の全身から炎が燻る黒い犬を瑠璃は片手で摘み上げる。


 そんな瑠璃を横目に、紅葉はナイフについた血を振り払いつつ、情報を整理する様にその犬の特徴を語る。


「それにこいつら、武装してるだけじゃなくて明らかに兵法に通じてる。足止め役の重装兵の後ろから榴弾撃ってきてたし、突撃に対して長槍で対抗してきた。後、個別に武器咥えてた奴等はその武器ごとの技能も使えてた。ただ……」


「ただ、やっぱり指揮官らしき奴はいませんでしたね」


「うん。一匹一匹が目配せしながら連携してたし、指揮官がいるんじゃなくて個々がちゃんと兵法を学んで実用化してたって線が強いかな」


「ですね。いや、厄介過ぎるでしょ。まじで」



 とはいえ、この様な襲撃を瑠璃と紅葉は先程から水路を進むたびに何度も受けていた。


 それも今回のヘルハウンドだけでなく、初めの卵焼きの様なヘンテコ生物や鰐、虎、鼠、海豚などの様々な種族が時には種の垣根すら超えて連携し、攻撃を仕掛けて来ていたのだ。


「襲撃タイミングはバラバラでしたし、時には勢力同士での争いの様なものも見かけました。これはそれぞれの群れの縄張りに私達が入っちゃったから襲撃して来たって感じなんでしょうね、やっぱり」


 そうして、非常に厄介な現状を確認した所で、瑠璃がある非常に重要な懸念を上げる。



「っていうか、これ保護対象のシロちゃんはちゃんと生きてるんですかね……。一応貰った機械に生体反応は表示されてますけど……」



 はっきり言ってこれ程の難度の場所でただの愛玩用生物が生き延びている可能性は低い。


 いや、これが普通の世界の事であれば、その生存率は絶望的と言っていいだろう。


 とはいえ、ここは明らかに普通の世界ではない為、紅葉が瑠璃の懸念に解りやすい光明を差し込む。



「まぁ、こんなヘンテコ生物が一杯の世界ならシロちゃんの方も何らかの技能とか持ってても不思議じゃないし、その辺じゃない?」



 実際、依頼所で渡された発信機に映し出された生体反応は非常に明るく、それはシロが元気だという証拠でもある。


 また、これだけ不可思議な生物が罷り通る世界であれば、愛玩動物だからと言って普通の犬とは限らないだろう。


(ま、それはそれで捕まえる時、面倒になるって事でもあるんだけどね……)


 そうして、一つの懸念の解消に対して新たな懸念を抱えつつも、それとは別の要件で紅葉は瑠璃に話しかける。



「それと瑠璃、もしかして武器ないの? 流石に銃相手にいつまでも投石じゃかなり不利だと思うんだけど……」

「ん? まぁそうですね。といってもありあわせのもので大抵何とかなりますし、私は魔法も使えるから大丈夫ですよ?」

「そうなんだ? でもこれ貸してあげるから使って」

「?」


 そう言って紅葉は自分の手持ちの銃を瑠璃に手渡す。


「え? これって役所で出してたやつですか? いや、いいですよ、自分で使ってください」

「いいからいいから。使い方わかる?」

「それはわかりますけど……エネルギー転換式……電力や光力だけでなく魔力でも使えるタイプみたいですね……」


 魔法用の魔力が銃に使えるのだろうかという疑問が湧くがどうやら使えるらしい。瑠璃の銃を持つ構えは素人そのもので、まるで様になってはいないが、少なくとも撃つ事が出来るのなら連射すれば投石より有効なのは確実だ。また、一発当たりの魔力消費量はわからないものの、充電分だけでワンカートリッジ[1000発分]が丸ごと残ってる為、弾数が瑠璃の負担になる事も無いだろう。


「使えそう?」

「当然使えますけど……ほんとに良いんですか?」

「いや、私どっちかっていうと近接戦の方が得意みたいだし」


 そう言って手に持ったナイフを掲げる。実際に銃よりナイフの方が得意なのかと聞かれると、今の紅葉はまだ銃を一度も撃った事が無い為、判断のしようがないが、先程の水路生物達の襲撃もナイフ一本で難なく退けられたので銃が無くて困るという事は無いだろう。


「じゃあ、その、使わせて貰います。ありがとうございます……」

「ん。どういたしまして」


 瑠璃は少し目を逸らしながらではあるが、ぺこりとお辞儀をして礼を言ってくる。元が大変律儀な性格なのだろう。紅葉としてはそれほど対した事をしたつもりはなかったので、まともにお礼を言われると少し気恥しい。なので、ぽりぽりと頬を掻きつつ返答し、それとなく話題を変える事にする。


「っていうか、この地下水路予想以上に長いね……。マッピングはしてるけど全然シロに辿り着ける気がしない」


 通路そのものがかなり複雑に絡まり合っている上、奥地に進むにつれて崩落していたり、現地生物による罠が仕掛けられていたりで異様に進みづらい。


 実際、発信機の上ではシロに近付いては来ているものの、紅葉にはまるで実感が湧いていなかった。


 が、それに対し瑠璃はぽんっと指先を合わせて叩き、笑顔で答える。


「あ、それなら大丈夫ですよ。任せてください」

「お? 瑠璃、なんか秘策とかあるの?」


 そうしたアクションを取る瑠璃に、紅葉は薄々何らかの空間把握能力がある事は察知していたが、それが全く理解出来ていなかった為、顔を明るくさせて瑠璃の方を向く。


 そうして紅葉が顔を輝かせたのを見た後、瑠璃は自信ありげに、もちろん。と胸を張って答える。


「こういうのは勘に頼って行けばだいたい良い感じに行けるもんなんですよ! ほらっ! こっちです!! ついてきてください!」

「ちょっとー?!」


 完全に当てずっぽうであった。


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