第二十七話「敵影遭遇」
庇った筈の相手が腕の中におらず、むしろ鈍い金属製の刃の様なものをもたげ、襲撃者を切り倒している。
そんな意味の分からない状況に遭遇した紅葉は驚きに満たされつつ、瑠璃を見る。
(なにあれ……)
それは襲撃者と瑠璃、どちらに向けて放たれた思いであろうか。
とはいえ、呆けている場合ではない為、その場で態勢を立て直し、即座に次のナイフと銃を構えて瑠璃に話しかける。
「………………やったか!?」
「フラグ立てないでください。やってますよ」
そんな完璧な戦闘態勢でありながらもユーモアを忘れない紅葉の姿勢に瑠璃は多少冷ややかな視線を向けたものの、すぐに肩を竦めて戦闘態勢を解き、紅葉に話しかける。
「見た事無い生物ですね。びっくりしてつい私も攻撃しちゃいましたよ」
そうして瑠璃は「はぁ……」と溜息をつきながら何時の間に回収したのか、先程その生物の眉間を貫通させたはずの紅葉のナイフを柄を向けて投げ返す。
そんな瑠璃に対し、紅葉は投げられたナイフをキャッチしてスカートの下にしまいつつ駆け寄る。
「瑠璃も見た事無い生物?」
そして、近寄って瑠璃の足元に転がる生物の残骸をまじまじとよく見る。
それは人型ではあるものの、どう考えても人ではなかった。
その頭はどうみても……。
「玉子焼き、だよねこれ」
「ですね。なんか緑色でカビ生えてますけど」
身体は人間、頭は腐ったでっかい玉子焼き。
「なんか街中で似た様なのがいた気もするけど……」
「寿司の人……の亜種ですかね……? 身分証で確認してみた所、エネミーって出てますけど」
「見た感じゾンビっぽいし知性体じゃないのかもね」
何故かTシャツと短パンを着て、槍を装備しているが、この生物からは意思というものがあまり感じられない。
それは今しがた殺したこの死骸からも、そして今、瑠璃と紅葉を包囲するように周囲に現れ始めた同生物からも同様である。
「気付いてますか紅葉さん。囲まれてます」
「ん、気付いてる」
(しかしどうしたもんかな……、情報が少なすぎて対処の仕方がわかんないや……)
はっきり言って戦闘能力としては大した事は無さそうだが、初見の相手である以上、警戒するに越した事は無い。
そうして、紅葉が相手の事を見定めようと目を凝らしたその時、
[対象認識:《水路モールド玉子焼きテラーEX改武王弐式》
水路モールド玉子焼きテラー:水路玉子焼きがテラー(恐怖)化した上、モールド(カビ)化した恐怖の魔物。
推定能力値:
AP:25?0~2?00(???)
EP:0
攻撃力:1?00~80?(?kg⋅m/s²?)
防御力:10??~8?0(?kg⋅m/s²?)
機動力:70~65(?km/h?)
武装:トンファー+10、ノーマルアニメシャツ、ダメージジーンズ、サンダル
特徴:暗視、毒躰
技能:格闘技LV40、回避LV30、防御LV30
特能:速攻、陣形、突撃、連舞、空振、縮地
推定総SP:約5000 危険度LV:約50
*?**???*?? 腐ってるから食べられない。]
(!? これって……!!)
その中空の文章に新たに映し出された情報は、内容にところどころエラーが出ているものの、紅葉が欲したこの生物の情報だった。
(今のはあっちのトンファー持ちの情報? じゃああっちの奴等は……)
[《水路モールド玉子焼きテラーEXニンジャソウルMKⅢ》]-詳細割愛-
[《水路モールド玉子焼きテラーEX改参大魔導将軍AAX》]-詳細割愛-
[《水路モールド玉子焼きテラーEX改重装侍将軍5512》]-詳細割愛-
[《水路モールド玉子焼きテラーEXガトリングキリングマシーンβ》]-詳細割愛-
(……………なにこれ?)
こっちが聞きたいが、恐らく水路モールド玉子焼きテラーEXだと思われる。能力値は名前に沿って多少違うが初めの奴とそう変わらない。
「なんでも水路モールド玉子焼きテラーEXって付けとけば良いってもんじゃないから!?」
「なんですかいきなり!?」
中空の文章から齎されるあまりにも色物なこの世界の生物の情報に、遂に紅葉がツッコミを入れるが、瑠璃からすれば単に突然叫び出した異常な人である。
そして世は無常。
その叫びを好機とみたのか、水路モールド玉子焼きテラーEXが一斉に襲い掛かる!!




