第二十話「選んだ先は」
前回、依頼を受けようとして民間依頼所へ赴き、それっぽい神殿に入ったら中はアニメショップだった。
改めて振り返った所で、何を言っているのか全くわからない。
おい、私の緊張感を返せ。依頼受領所っていうから冒険者の店みたいな荒くれものの集まりみたいなのを想像してたじゃないか。っていうかなんでアニメショップが依頼所なんだこのやろう。
そんな思考が一瞬、扉を開けた紅葉とその後ろにいた瑠璃の脳裏に浮かんだが、そこで引き返すわけにもいかないので、二人はその神殿の中の膨大な商品棚で形成された迷宮の中を恐る恐る進んで行く。
「まぁ、メイド喫茶の隣にあった建物なんだしアニメショップでも不思議はないけど……」
「なんか想像してたのとは全然違いますねー。あ、あのフィギュア可愛い」
そうして、二人が割と広いはずなのに情報量が多すぎて何故か圧迫感のする通路をかなり奥まで進んで行くと、そこで誰かから声がかかる。
「おや、お客さん? いらっしゃいませなうー」
その声は通路の奥。少し広くなっていると思われるスペースから聞こえる。恐らくはカウンターか何かがあるのだろう。
店員さん発見。そう思い二人は返事をしつつそちらに向かう。
「はーい。お邪魔してまー、すっ?」
「おや、これは」
しかし、そこで紅葉の思考はフリーズする。
(あれ? 店、員……?)
その店員はカウンターと思わしき木製のテーブルに囲まれた場所に座ってロリポップを舐めている。
いや、それはまだ良い。
確かに行儀は悪いが別に紅葉はそんな些細な事は気にしない。
そもそも世界が違うのでこちらの世界ではそれが普通なのかもしれない。
この店もそうだが、異世界に対して自世界の先入観を持ち込んではいけない。
ただ……、その店員は黒を基調とし多数のレースやフリルで飾られた、如何にも高そうな貴族っぽい服装をしていて……。
……更にその背中には御伽話の天使のそれに限り無く類似した八枚の白い大翼があって……。
……そして、先程危険なルートだと予測して回避した筈のアルシエルと呼ばれる邪神的存在には、堕天使だとかいう伝承もあるらしく……。
今、目の前にいる存在はその特徴に悉く合致している。
「えっと、どうも……?」
(入る店、間違えた……?)




