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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第一章『異界からの来訪者』
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第十五話「身分証と国籍」


 そうして、二人がある程度の質問と自身の情報提示を終えた後、受付のお姉さんが机の上の機材をしばらく操作すると、受付の後ろにある機械から2枚のカードが発行され、それが二人に手渡される。


「はい、発行出来ました。こちらがお二人の身分証になります」


 渡されたカードの中央に描いてあるのは恐らくこの世界の言葉だろう。その上に瑠璃のカードには物質界語。紅葉のカードには冥府語で翻訳が書かれている。


 そして、そのカードを二人に手渡した後に受付のお姉さんは瑠璃のカードを裏返し、そこにあった瑠璃の正面からの顔写真の隣に書かれた番号を指さして説明する。


「こちらの数字がそれぞれの個人番号になります。個人を識別する為の数字ですね。他の国家機関における登録や認識はだいたいこの番号を使用すればいけます」


 そこにはこの国における個人を識別する為の、4桁ずつ「―(ハイフン)」で区切られ、4列に並べられた80桁の数字が記載されている。


 が、そこでその数字のかすかな違和感に瑠璃が気付いて質問する。


「あれ? この数字、今同時に作ったのに私と紅葉さんので連番じゃないんですね」


 瑠璃の言う通り、瑠璃の番号と紅葉の番号はそのほとんどの数字は同じだが、最後の数桁の数字が違っていた。これが登録した者の番号順に並べられた数字だとすればその数字は最後の数字が連続した番号で変化しているだけのはずだ。


 とはいえ、その謎については受付のお姉さんの説明によって解決される。


「あぁ、それは死亡したか消息不明になってから1000年が経過してデータが抹消された方の番号を随時新規の方へと割り当てて再利用しているからですね。80桁ぐらいですとすぐになくなってしまいますから」


 だが、その説明は瑠璃と紅葉にとっては少し予想外のものであった。


(80桁の個人番号がすぐになくなる……?)


 それはすなわち、その個人番号で管理している範囲の人数が80桁もの数字を埋め尽くすだけ存在するという事である。


「瑠璃、80桁って幾つ?」

「いや、知りませんよ。そんな桁数」


 その多すぎる桁数に困った紅葉は瑠璃に話を振るがこれについては瑠璃も知らないらしい。そうして、二人がひそひそと話しているとその内容が聞こえたのか職員が困った様に口元に手を当てながら補足してくれる。


「んん、確かに常用数字外の数ですからね。那由他算で行くと1垓那由他なんですけど」


 しかし、その補足すらも二人にとっては聞きなれない言葉であった。


(那由他算?)


[ 検索:《那由他算》


那由他算:那由他算とは那由多(10⁶⁰)を基準に再度1から那由他まで数え直す手法で、10⁸⁰なら1垓+1那由他(10²⁰+10⁶⁰)で1垓那由他(10⁸⁰)となり、10¹⁰⁰なら1正+1那由他(10⁴⁰+10⁶⁰)で1正那由他(10¹⁰⁰)となる。この手法で1那由他那由他(10¹²⁰)を超える場合は、また1から数え直し、10¹⁴⁰なら1垓+1那由他那由他(10²⁰+10¹²⁰)で1垓那由他那由他(10¹⁴⁰)となる]


「なるほど」

「え゛? 紅葉さんは那由多算でわかるんですか?」


 空中の文による検索機能で理解した紅葉に対し、自身だけが理解出来ていない瑠璃は少し置いてきぼり感を喰らって固まるが、そんな瑠璃は気に留めずに紅葉は別の質問を飛ばす。


「この上の『緋煉皇国煌領No』ってなんですか?」


 緋煉皇国というのが、この国の名前である事は先程の説明で知っている為、煌領は恐らく地域名であり、発行場所か何かだと予想は出来たが、現在自分達の存在する場所の確認の為にも聞いておきたかったというのが本音である。


 しかし、職員の返答は紅葉の予想していたものとは少し違うものであった。


「これは下記の80桁の数字が緋煉皇国の煌領地域内だけのものであるっていう事ですね。他の地域や国へ行った場合はまたそれぞれの地域や国のナンバーが割り当てられます」


 発行場所ではなく管理地域名。


 つまり、この世界で大国の一つであると言われているこの緋煉皇国にはその内の一つの地域だけで80桁もの数字の個人番号を死者の分を再利用しなくては行けない程の人数の国民が存在しているという事になる。


(まじか……)


 だとすれば、今のこの場所は恐らく煌領と呼ばれる地域の中には違いないが、その煌領と呼ばれる地域は紅葉が想像していたこの都市や、その周辺地域の名前ではなく、もっと広大な範囲を指す事になり、現在地域の場所名は把握出来ない。


 そして今聞いた点について、もう一つ。気になる事がある。


「あれ? そうなると国籍とかはどうなってるんですか? 私達って異世界人……この世界風にいうと来訪者のはずだから国籍的には無国籍なんじゃないですか? ここには緋煉皇国って書いてありますけど……」


 それを聞いた職員は「あぁ」と顔の前で両手の指先を合わせ、常なる無表情のまま重大な事実を告げる。


「ここで登録したのでお二人は緋煉皇国民ですよ?」

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