第十一話「法と税と異世界人」
「えっと、入国料の税金とか手数料とかは……」
「あぁ、お二方は重税下の国から来られた方なのですね。大丈夫ですよ、緋煉は企業型国家ですので税金は国を守る為の関税、噸税、通行税の3種類だけですし、身分登録の際の手数料は無料です」
受付に対応してくれた職員は無表情ながらも流暢にその事を説明してくれるが、紅葉にはそれらの用語があまり理解出来なかったらしく、そっと瑠璃に助けを求める。
「えっと……?」
「関税は国内産業の保護を目的として輸入貨物に対して課される税金の事です。簡単に言うと自国の品より安い品が大量に入って来ると自国の物が売れなくなるので課される貿易用の税金です。私達には関係ありません。噸税は外国の船や商隊などが自国の港や基地に入って来た時に、そこにある施設のサービスを受けられる様に払う税金の事です。これも大体貿易用の税金ですので、私達には関係ありません。通行税は門や関所などを通る時に発生する税金で時空を転移してきた私達にかかるのかどうかは不明ですが、もしかしたら関係があるかもしれません。応対変わりましょうか?」
「ごめん。助かる……」
どうやら瑠璃はこの手の事には詳しいらしく、そこからはまた紅葉に代わって瑠璃が受付の職員と話し始める。そして得られた結果はこうである。
まず、この国は国王が社長として経営し、国家機関が社員として運営する企業型国家と呼ばれる形式の国家であり、国民はその国家に属する民であると同時にその企業型国家の資金を内部で流通させる事で内需により企業型国家の質を高める役割を持つ、いわゆる内部顧客に当たる存在であるという事。
次に、企業型国家の国家運営は基本的に国民によって納められる税金によってではなく、国家機関の経営によって出された純利益によって運営される為、土地税や人頭税を始めとする税金はいらない事。また、特にこの国、緋煉皇国を始めとしたこの世界での大国や地方大国はその傾向が強く、貿易によって国が崩壊するのを防ぐ為に外国から税を取る他は国民からは一切の税を取らない事。
そして、瑠璃や紅葉に関わりがあるかもしれなかった通行税についても、あくまで貿易商隊が門や関所を通過する時に掛けられる税であり、民間に対しては国民だけでなく、外国人や異世界人であっても税を取られる事は無い事。
また、都市間を移動するのに便利な高速道路などを通行するのに必要な通行料についても、それは道を通るのに必要な料金であって、道を通過したわけではない転移者に対しては不要である事。
そして最後に、この世界では統一政府ヴィールドと呼ばれる国際統制機関が管理し、その統一政府に認可された緋煉皇国の様な各大国や地方大国発行する、あらゆる国で共通の身分制度が存在しており、それに登録する事で様々な場所で自身の身分が保証される為、物の購入や緊急時の食糧配給の際などに役立つが、逆に登録して置かないと様々な面で不利になるという事について知る事が出来た。
「なるほど、役所での手数料というのはどういう時にかかるんですか?」
「主に無形財産、つまり発明品や創作品の登録及び更新の際と国家情報資料の作成、つまりその国の年度毎の作物の出来高や降水量のデータなどの資料を印刷して提供する際に発生します。それ以外では、身分証紛失の際の再発行時ぐらいですね」
そこまでを聞くと瑠璃は「ふむ」と納得した様に頷く。恐らくはおおよその内容を把握し、理解したのだろう。実際、彼女は見た目の通りに頭は良いのである。
「じゃあ、すいませんが私と紅葉さんの分の身分登録と身分証の発行をお願い出来ますか?」
「わかりました。ではこちらの身分登録表に必須事項をご記入ください」
だが、ここで手渡された書類を見て瑠璃が言葉に詰まる。如何に彼女の頭が良くともすぐには克服出来ない問題がそこにあったのだ。
……
…………
………………
……………………そう、読めないのである。




