第十話「違和感」
「軍人?」
「に見えますけど市民課ですよね?」
よく見ると、ほとんどの職員は神社らしく白小袖に緋袴姿の所轄巫女服スタイルで受付をしているが、その中でも幾つか課では、紅葉の目から見てはどう見ても軍服や警官服に見える官服を着た者が受付をやっていた。
「そういえばリーフレットの中に組織票があった様な……」
そこで、二人はそこの課の看板と先程手に入れたリーフレットを照らし合わせてみる。
法務省・警務課、軍務省・災害課etcetc。
なるほど、警務課や災害課など警察や軍が管理している部署の窓口もあるらしい。
もっとも、目の前の市民課はパンフレットには総務省の管轄と書いてあり、軍の上役となる軍務省とは別の部署のはずだが、恐らく何かしらの繋がりがあるのだろう。少なくともその受付の頭上に掲げられた案内板には間違いなく『市民課』という文字が書き記されている。
「とりあえず、間違ってはいなさそうなので行ってみますか」
そういうと瑠璃は迷う事無く市民課の受付の中でも特に美人のお姉さんが受付をやっている場所にとてとてと駆け寄っていく。
(さっきの赤髪のお姉さんも美人だったけど……あれってやっぱ狙ってやってるのかな?)
紅葉はそんな出会って1時間ちょっとの見た目と言動はクールだが、中身は実は面白い系なのではないかと思い始めた猫耳少女を観察しながら後を追いつつ、周囲の人々にも目を光らす。
自身に関する記憶が無くなった上、この場所が自身の全く知らない異世界である以上、少しでも情報が欲しいのだ。
それに気が付く事がある。ここに来るまでに出会った人々も含め、総じて容貌が良すぎるのだ。尚、中にはそもそも人の形をしていない変なのも幾らか混じっていた気がするが、それは無視する事とする。
(そう言えばエルフとかはみんな美人って聞いたっけ……)
現に今瑠璃が話しかけに行ったお姉さんも魔性とはまた違う何かしらの神秘性を持っている様に感じる。
所々に銀の縁があしらわれた黒い軍服姿に紫がかった長い黒髪と紫色の瞳。
外観はただの人型である以上に角や翼などの特徴が無い為、何の種族かはわからないが、よく見ると髪や皮膚の表面がうっすらと虹彩を放っているので、少なくとも人間や獣人などの種族ではないだろう。
また、軍帽と腕章にはトライデントの槍先の様な三本柱が中央で繋がった様な紋章が見える。紅葉が周囲の職員を確認してみた所、この紋章を付けているのはこの市民課にいる軍人だけらしい。
横目で他の部署の紋章も確認してみると、各課の軍人の中には何かの花の様な黒い紋章を付けた軍人が存在しているのが見え、それ以外の職員は全て同じ赤い四角形の中央に黒い正円の付いた紋章を付けていた。
(何かの紋章……所属? でも部署の所属とは違うみたいだし……)
そんな思考をしながら瑠璃の隣の席で辺りを見回していた紅葉に瑠璃から声がかかる。
「……と、いうわけなんですよ。紅葉さん?」
どうやら、紅葉が周りに気を取られている内に瑠璃は起きた事柄を職員に粗方説明してくれていたらしい。
「ごめん。聞いてなかった。なに?」
「いや、ちゃんと聞いてくださいよ。私は正規入国扱い、紅葉さんは緊急避難扱いで入国手続き出来ましたよ」
「まじか」
訂正。経緯の説明どころか手続きそのものも瑠璃が終わらせてくれていた。




