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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第一章『異界からの来訪者』
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第九話「役所神社」


 目の前には赤い大鳥居とその奥には荘厳な和の社。


 その社は紅葉の知る物とは少し違い、複数階建てで幾つもの社殿が周囲に併設された壮大なものだったが、基本的な作りの外観とその雰囲気は変わらない。


 優し気な緋色のお姉さんに役所と呼ばれて案内された、その場所は明らかに神社の様相をした建物であった。


「ここが役所?」

「神権政治なんでしょうか?」


 鳥居の神額しんがくには『禊祓第一神宮』の文字がある。この神社の名前だろうか? ここが通常の神社ではなく、神宮であるというのならこの大きさにも納得出来なくはないかもしれない。


 そんな疑問を抱きながら二人は赤い大鳥居を超えて神社の境内に入り、そこにあった案内書きに従って正面にある拝殿に近付く。


 どうやら、こちらに役所の入り口があるらしい。


 しかし、拝殿に入口などあるものなのだろうか? と紅葉は頭の中で自身の知る拝殿を思い返して頭を捻るが、そこはやはり異世界故か、それともそもそもの定義と認識が異なるのか、遠目で見ればわからなかったが、近くで見ればその拝殿は紅葉の思い描いていたものとは少し違った様相をしていた。


 まず、拝殿の前に賽銭箱の様なものは無く、頭上に鈴はあるがその下には紅白の布鈴緒ぬのすずお暖簾のれんの様に釣り下がっているだけで、引いて音を鳴らす様なものではない事が分かる。


 そして、その奥、本来賽銭箱があるはずの位置の向こう側には格子状の装飾の付いた赤い金属扉が鎮座していた。


「はて……?」

「入口、ですよね?」


 扉と壁が厚すぎるのか、内部の様子が一切わからない。


 時刻は午前十時頃。あたりは閑散としており、周囲には特に人もいないので聞く事も出来ない。


 二人は顔を見合わせ、しょうがないので、なんとなしに扉の前に立った。


――ガション、ヴィィィィン――


 すると何かの機械音がして、拝殿の扉が自動で左右に開いた。それと同時に入客を告げる音なのか、頭上の本坪鈴ほんつぼすずが小さくガランガランと鳴る。どうやら自動ドアだったらしい。


 此処まではまだ普通の神社の範囲内だ。



 しかし、その内装は二人の想像していたものとは似て非なるものであった。


 まず目に入ったのは中央に一定の間隔で整頓して並べられた木の待合席の列であり、その周囲を囲む様にして様々な部署の受付が社務所しゃむしょの形で並んでいる。


 床は何かの金属のインゴットが板張り床の様な形で敷き詰められており、その佇まいには所々神社らしい和の風格が垣間見えるものの、やはりその内観は外観とは裏腹に完全に行政機関のそれであった。



 二人はとりあえず、入口から少し離れた通路の脇に絵馬掛けの様な形の各課の案内と役所内部の見取り図が書かれた案内板が設置されていた為、まずはそちらに赴く。


 その案内板には、それらの部署の役割やその課が何処に属するのかなどが丁寧に記されており、脇にはそれと同じ事が書かれたリーフレットやこの場所から他の国営施設へ移動する際の地図などが置かれている。


 紅葉と瑠璃はそれらの地図とリーフレットをそれぞれ紅葉は一式、瑠璃は地図と案内板の内容と同じリーフレットだけ手に取って貰ってゆく。


 それから二人は、入国等の手続きは何処ですればいいのかと案内板を確認するが、その時、紅葉はそこに書かれた各課の組織表に幾つか自身の知る各部署の法則と異なる点を散見する。


(省の下に更に省や庁がある……)


 見れば総務省の下に逓信省があったり、軍務省の下に防衛省があったりしている。紅葉の知る記憶によれば省は一番上の行政区分であり、その内部組織は省ではなく庁や局になるはずだが、此処では区分分けの定義が違うらしい。


 更に、紅葉は普通役所であればあるはずの部署がない事にも気付いた。


(福祉課や税務課がないな……)


 はて、国と言うのは国民から血税を踏んだくって福祉と称し自分達の懐に投げ入れるのが仕事ではなかったのか? そんな思念が何処からともなく耳に響いた気がしたが気のせいだろうか?


 そんな紅葉の思案を他所に目的の課を見つけた瑠璃が紅葉に声をかける。


「身分登録は市民課見たいですね。それで、市民課の窓口は、あそこみたいですけど……」

「けど?」


 案内板から目を離し市民課を確認した瑠璃の言葉尻が澱む。


 何かあるのだろうか? そう思い紅葉は瑠璃の視線を追って市民課の受付に目を向ける。


「……えっと?」


 瑠璃と紅葉の視線の先。広い拝殿内の端の方にある市民課のスペース。


 そこでは周囲の神社の風格に妙にマッチする黒い軍服を纏った軍人が受付をやっていた。

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