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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第二章『咎人と断罪者』
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第二章第六十二話「急転落差Rapid turn!」



「おはよう♪ 瑠璃、紅葉。昨日ぶりね!」


「おはようございます。瑠璃様、紅葉様。私は今朝ぶりですね?」



 櫓状の大会議室の中。


 玄関先の廊下から顔を覗かせた瑠璃と紅葉に対し、真っ先に話しかけて来たのは、瑠璃と紅葉も良く知る相手。


 昨日の依頼の依頼人。


 外見的に闇のお嬢様こと、アリシア嬢である。


 そして、その隣には、その従者たる龍人メイド、レティアの姿も存在する。


[その隣にはその従者たる龍人メイド、レティアの姿も存在する。]


(! レティアさんとアリシアさん!? ……! そうか、『超越』と『消失』の権能持ち……、しかも『超越』はこの世界でも最強格の権能って言ってたっけ……、じゃあ残りのR二人って……)


 とはいえ、その姿は、玄関先である瑠璃や紅葉の位置からは、銀の網が張られた縦格子の間仕切りが邪魔になって良く見えず、二人は多少混乱して、声だけを頼りに、廊下に留まったまま「「お、おはようございます……?」」と挨拶だけを返すが、その二人をとてとてと追い越し、少しだけ開いていた襖を勢い良く全開にした聖成伽がその名前を呼んだ事で、ようやく声以外の要素も合致する。


「あれ? レティアとアリシアも知り合い?」


「うん。昨日シロを捕獲してきてくれた子達だけど。聖成伽も?」


「ううん。私はさっき知り合ったばっかり! レルゥシャと一緒に来てた。なんか黄泉に用事があるみたい?」


「あぁ。黄泉ならさっき会議資料取りに行くって言って常夜と一緒に情報蔵の方に行ったから、すぐ戻って来ると思うけどー」



 そうして、やはり初めから知り合いだったらしき聖成伽とアリシアの会話の最中、一行が入って来た南西側の玄関とは対角線上にある玄関側の襖がシャッと開き、それまでその場にいなかった、残りの二人も顔を出す。


「おや、噂をすれば影ー」


 そして、先に入って近くの座布団に座っていたレルゥシャの、そんな気の抜けた声と共に、開かれた襖の奥にいた存在、今会話の話題となっていた、黄泉と常夜はこちら側の襖に目を向け、瑠璃と紅葉に視線を合わせる。



「………………再会早すぎない? さっき会ったばかりよね?」


「ふむ、瑠璃の『幸運』の権能が聖成伽やレルゥシャに対して発動出来るとは思えないけれど……」



 そうして、二人の口からは、再会に驚く声と共に、妙に不穏な言葉が聞こえた気がするが……、それはそれとして挨拶しようと、「えっと、まぁ色々ありまして」と言いつつ、紅葉が黄泉と常夜の元へ行こうとして、大会議室の敷居を跨いだ所で……、


 ふと、紅葉の視界が暗転する。


(え……)


[理性値判定100/10000][理性値判定100/10000][理性値判定100/10000][理性値判定100/10000][理性値判定100/10000][理性値判定100/10000][理性値判定100/10000]

[上方4、下方3][理性値100以上を消失][精神崩壊開始]


「わっと! 大丈夫!?」


「え、何!? あっと、治療!!」


「! そうか、まだ私達に慣れてないから……」


[聖成伽による精神崩壊解除][常夜による存在改変、認識負荷軽減、精神固定]


―ジジッ……―



 ……それは一瞬の出来事。


 強力な精神負荷を受け、精神の崩壊と共に視界の暗転した紅葉は、崩れる様に前向きに倒れるも、背後にいたセラフィリアがすぐさま手を差し伸べて紅葉を救助し、瞬間的に何が起こったのかを把握した聖成伽と常夜が紅葉に治療と対策を施した事で、紅葉は危うく一命を取り留める。


「……!? 一体何が……」


 そうして、まだ少し眩暈の様なノイズにふらつきながらも自分の足で立ち上がる紅葉に対し、横から紅葉の腰と胸に手を回す形で支えていたセラフィリアはそっと手を放して紅葉を解放し、常夜が紅葉の手を取って引き起こしながら、解説を行う。


「存在差の認識による精神崩壊よ。この部屋だと私達、基本的に本体で活動してるから精神が耐えられなかったのね」


「本、体……?」


 その言葉を聞いた紅葉は、まず目の前の常夜を見、その後、周囲の他の6人を順に見回して行くが、確かに皆、始めて会った時とは様子が違う。


 簡単に言うと、皆、心が壊れそうになるほどの、寒気に満ちている。



 そう、今まで接していた彼女等は皆、分霊や制限体と呼ばれる、能力を制御する事で存在格を一段落とし、EX程度にまで減少させた分身的な状態での存在だったのだが、ここにいる彼女等は皆、先程、常夜が述べた本体。神格そのものに当たる存在なのだ。


(!! ……なるほど、EX……、そういえば、中空の文にも、2ランク差で寒気と恐怖を生み出すって書いてあったっけ……、って、いう事は……、これが本当の、3ランク差による……、存在格差……、なのか……)


 その事実は、残り二名のRランクがアリシアとレティアだと判明した現在でこそ、そこまでの精神的ダメージにはならないが、この部屋に入った途端に分霊体から本体に戻り、気配の変わった聖成伽や、制限体からある程度力を戻したレルゥシャやセラフィリアに対しても、その存在格差による恐怖は存在しており、その存在は、紅葉には、心臓の痛みに似た、生物的な怖気おぞけを抱かせる。


 それに気付いた紅葉は、一瞬びくっと毛を逆立てて小さく飛び跳ねるが、先程の常夜による存在改変の影響か、その猛烈な寒気はすぐに朧気に認識出来なくなって行き、意識が途切れた瞬間に丸まった尻尾と伏せられた耳も、ゆっくりとふんわりした毛並みを取り戻して、元に戻る。


 そうした紅葉の様子を確認してから、解説を続ける常夜によると、生物の精神には許容出来る存在の限界があり、ある程度の差であるならば、まだ想像や推定などで自身の許容範囲内に納める事が出来るものの、それを遥かに越えた存在を相手にした場合、精神はそれを認識出来なくなり、その相手を得体の知れない存在として仮認識し、並々ならぬ恐怖を感じる様になるのだという。


 そして、その恐怖による精神負荷は、相手と自分との差が大きければ大きい程に増大し、場合によっては、今回紅葉が体験した様な、意識の喪失や精神崩壊、または狂気による錯乱や廃人化を引き起こし、最悪の場合は死に至るらしい。


「今回は元々知り合いだったからちょっとした意識喪失と精神崩壊で済んだみたいだけど、流石にS級とRでは存在格差が有り過ぎた様ね。特に、Aランク以下ならランク差はかなり緩やかだからまだしも、Sランク以上からは一つランクが変わる毎にかなり急勾配な雲泥の差が付くし、紅葉は生まれたてだから尚更よね」


「とりあえず私達については認識調整しといたから、もう本体で遭遇しても大丈夫だけど、私達以外のRランクと会う時には気を付けなさい。SSランクだからって油断してると死なないにしても一時的な狂気に陥って錯乱したり精神が欠落する事は稀によくあるからね?」



 そう言って、常夜は紅葉の頭を優しく撫でるが、紅葉としては、それよりも別の事が今は気になる。


「……ちなみに瑠璃に影響が出てないっぽいのは何故?」


「……、何故か瑠璃には耐性があるみたいね?」


「どうも、耐性のある瑠璃です」



 ……何故か瑠璃には耐性があるらしい。理不尽!!

 

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