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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第二章『咎人と断罪者』
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第二章第六十一話「一抹の不安」


 Rと自身の存在の差による思考の靄。


 それと、そうした存在の差による、認識の差異。



 それを中空の文により理解した紅葉は、自身を脅かしかねない、Rランクという存在に考えを向け、思考する。


(とりあえず、常夜さんと黄泉さんは確実に安全だとして……、ここにいる三人も普通にしてるだけだから、一先ずは安全な訳だけど……)


 事前に知り得た情報では、大会議に集結しているRランクは七人いる。


 その内、レルゥシャは確定で、黄泉と常夜も確定。そして、先程試した思考の靄による判定と、腕力でレルゥシャに競り勝っていた事実から、セラフィリアもほぼ確定であり、立場的には聖成伽も確定である。


 だが、後二人。後二人の情報が、何処にもない。


(綾夢店長の話だと、Rランクは本来存在を覚えておく必要もないぐらいに稀少な存在の筈だし、その七人が集まる為に都市のエネルギーバランスを調整しなければいけないって話もあったから、少なくとも、今、この街にいるRランクは、後その二人だけだと思うけど……)


 はっきり言って、ここまでで、Rランクは誰も敵意無く、むしろ極めて好意的に接してくれていたからこそ、瑠璃や紅葉はまだこれだけの余裕が保てている訳だが、恐らく逆に、これ程の力の持ち主に、好意的なもの以外の感情を向けられる場合があるとすれば、その時点で、瑠璃や紅葉の命は容易く手折られるだろう。


 何せ、先程のレルゥシャの悪意の無い転送、しかもそれはどちらかというと好意的なものであったにも関わらず、瑠璃と紅葉は死にかけたのだ。


 そうであれば、やはりほんの些細な事柄でも、二人は死にかねない。


(さっきの聖成伽さんの突撃ぐらいならまだしも、基本的にRランクは怪獣みたいなものなんだろうしね……)


 無論、明らかに正義感の強そうな黄泉や、公正規則にうるさそうな常夜、また、先程からにこにこと瑠璃と紅葉の頭を撫でている世話好き……、というか、獣好きそうなセラフィリアや聖成伽などがそれを赦す筈はないだろうし、単に配慮が無いだけで悪意がある訳ではない、善性存在である、レルゥシャもそうだろう。


 また、この世界では、上位に位置する者は皆優しいというかなり理想的な体制が敷かれている為、それによる安心感もある。


 だが、それでも、実力が違い過ぎる事への不安と恐れは拭えない。


(そもそも、この世界は確かに瑠璃の言う様な理想世界の様相をしてはいるけど、私達はまだこの世界の概要を全然知らないし、法律も知らない……、気を付けないと自分の首が飛びかねないよね……)


 そうして、元より他者に心を開かず、尚且つ疑心暗鬼な節のある紅葉は、目の前の思った以上に危険な状況を想像し、頬に一筋の汗を垂らすが、そんな紅葉の心配事はよそに、要塞内でも幾つもの転移門をくぐりながら、レルゥシャの転移も連発して進んでいた一行は、そう長くない時間の間に、目的の場所へと辿り着く。



 そして、何時の間にやら辿り着いていた場所は、大会議室前。


 始めの大広間の様な広い和風作りの部屋の中央、櫓の様に高く立てられた天守の様な外観の建物に、一行はその四方の角から対角線に伸びた階段の一つを使って、櫓に上り、同じくその角の部分に当たる入口の一つから中に入る。


 その際、先陣を切ったのは聖成伽で、「みんなーっ! ひっさしぶりー♪ お客さん連れて来たよー!」と、どたばたと元気良く鉄下駄を脱ぎ散らかしながら中に入ろうとしたが、それは「待ちなさい! 靴は片付けるのっ!」と、セラフィリアに小袖の首根っこを掴まれて止められ、その隙に、レルゥシャが「失礼するよ」と、そこに備えられていた玄関で靴を脱ぎ、座敷用の大足袋の様なものに履き替えて、思ったよりもお行儀良く中に入る。


 それを見たセラフィリアは、「あら」と、少し拍子抜けしつつ、瑠璃と紅葉の方に目をやって、「と、ここで靴脱いで内足袋に履き替えてね。この先畳だから」と、横の聖成伽に脱ぎ散らかした鉄下駄を渡しつつ、二人にはその隣の下駄箱からレルゥシャが履いていたものと同じ、くるぶしまでを覆う、白い室内用の大足袋を取り出して渡す。


 しかし、その用途を知らない瑠璃は、それを受け取りつつ、首を傾げ、その用途を問う。


「? 何か儀式的なものですか?」


「ううん。この先の部屋には畳っていう藺草いぐさの布団みたいな素材で作られた敷物が敷いてあるの。その上では寝転がったり出来る代わりに土足厳禁で綺麗に使う形になってるの」


「???」


「簡単に言うと全面ベッドの部屋って感じかな? まぁ、入って見てみて?」


 そうして、二人は、瑠璃は畳や内足袋の用途と作法を知らない故に悩み、紅葉は畳や内足袋の用途と作法は知っているものの、Rランクの存在について悩みつつ、その内足袋を受け取って、セラフィリアを見習い、玄関に靴を脱いで揃え、靴下の上からその内足袋を履いて、玄関から、中の部屋へと繋がる廊下へと出る。


/(むむむ……、畳の作法とか知らないんですけど、大丈夫でしょうか……?)/


(後二人のRランク……、一体どんな相手なんだ……)



 しかし、そうして出た先。


 細かな銀の網が張られて視界の通らない縦格子の間仕切りと、少し開いた片開きの襖に阻まれた、金属塊張りの廊下にて。



 その格子と襖の奥から、二人の聞いた事のある声が響いた事により、二人の悩みと緊張は、夜に光が差す様に、後光が差して、消え失せる。


「あら、あの二人はそっちのルートで来たのね。私達のルートもあったんだけど、これは面白い展開になりそうね♪」 


 そうして聞こえた声の主。


 即ち、残り二人のRは、二人の良く知る相手だったのである。


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