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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第二章『咎人と断罪者』
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第二章第六十話「認識と存在の差」


 何か些細な様で些細でない、割と重要なアクシデントがあった気がするものの、一行は聖成伽を加えて冥道要塞を進む。


 そんな中、聖成伽の正体を知った瑠璃と、自分で察した上に瑠璃から聞いて確証した紅葉は、前方でレルゥシャをぐるぐると振り回しながら進む聖成伽を傍目に、その後ろを歩きながら、セラフィリアに聖成伽の詳細を聞く。


「『平和』と『安寧』の権能ってどんなものなんです? なんか名前の響き的には安全そうな気もしますけど……」


「安全、ではないわよ? 『平和』は一切の戦闘行為を禁止する権能で、『安寧』はあらゆる攻撃意思を剥奪して多幸感で満たす権能だもん。元々安全な聖成伽以外が使ったりしたら相手に何もさせずにフルボッコにする能力に早変わりね」


「なにそれこわい」



 ……セラフィリアの説明は端的に過ぎるが、確かに、相手の攻撃能力や攻撃意思奪う能力であれば、使い方次第で相手を一方的に蹂躙出来る能力になるだろう。


 そして、その威力は、先程から聖成伽の粗探しをしようとして観察している紅葉や、本能的危機感を抱いて聖成伽を見つめる瑠璃ですら、何故か聖成伽を敵対者や危険人物として見る事は出来ず、むしろ好意的に見てしまう所からも、その権能の強さが伺える。


(……真っ白な小袖にミニスカートみたいな白袴、長い白髪とサイドテール。ハイソックスみたいな長い白足袋に白のニーソックス……。帯と髪留め、袖を襷掛けにして括ってる紐とかは緋色だけど、瞳も含めてなんか全体的に真っ白……)


/(確かに何処となく黄泉さんに似てる気もしますね……。デザインが違いますが、二人共巫女服なのは何か意味があるんでしょうか……)/



 そうして、二人は聖成伽を見つめるが、その思考はあまり冴え渡らず、二人してぽわぽわと霧がかかった様に遮断されており、目の前にいる性格以外は極めて危険な存在を見ていても、とりあえず(可愛いなぁ……)とぐらいにしか思わない。



 その辺りが、黄泉と聖成伽の違いであり、そうしたRランクと、一般に比べれば異次元の強さを誇るとはいえ、やはりSSランク程度に過ぎない瑠璃と紅葉の存在の違いでもある。


 というのも、元より存在の格が違えば見える世界も全く違ってくるものであり、通常、その存在認識の差は、たった1ランクの差ですら、その存在を格上と格下に認識させ、2ランクで寒気と恐怖を生み出し、3ランク違えば上位存在と下位存在、5ランク違えば至高と低劣へと、認識の差異を生み出す。


 そして、6ランク以上の差になれば、存在を認識する事すら危うくなり、上位の者を見れば思考が認識を阻んで混乱や発狂を引き起こし、下位の者を見れば、それが劣り過ぎている事により、目の前にいても眼中に入らなくなる。


 それは、常世界の民草における基本ランクであるFランクを基準に見てみれば、自身より3ランク上位に位置するCランクの天使や魔神はFランクにとっては上位存在であり、5ランク違うAランクは常世界人の成長限界にして認識限界でもある、勇者や魔王のランクとなる。


 そして、その逆に、3ランク下ともなれば、それは2ランク下のLである死体より更に下であり、下位生物である動物などが当て嵌まり、5ランク下は蟲である。


 また、更に6ランク下ともなれば、それに当て嵌まるのは細菌やかびの類となり、普通、肉眼では物理的に見る事も出来ないので眼中から消える。



 これをAランク以上に当て嵌めれば、常世界の民草であるFランク程度の存在が細菌の様な存在にしか感じられないのは至極当然であり、まして、Rともなれば、AA以下は全て、潜在的には、細菌かそれ未満の存在に見えているものである。


 それを、黄泉や常夜の様に、自らの身を低めて目を凝らし、細菌の声すら聴いて便宜を図ろうとする者は、はっきり言ってそちらの方がRランク的に見れば狂っているともいえる。



 そして、聖成伽は善良で優しい存在ではあるが、紅葉に対して恩赦という言葉を使っていた事からもわかる通り、黄泉や常夜とは違い、瑠璃や紅葉と同じ領域には降りて来てくれていない為、瑠璃や紅葉はその存在の違いから、権能など関係無くとも、本能的に委縮し、その考えまでもが制限されて、刃向かうなどという事柄は、思考の隅にも存在する事が出来なくなっているのである。



 これが、瑠璃や紅葉の思考を靄の様に妨げる、権能以前の存在の差であり、


 この様に、3ランク以上ランクに差がある場合、相手の側が降りて来てくれない限り、同じ土俵に立つ事は、決して出来ないのだ。


[同じ土俵に立つ事は、決して出来ないのだ。]



(つまり、同等の立ち位置として扱ってくれてないから、存在の差から、本能的に思考が制限されて、敵対意思すら発生しなくなってる、って事か……)


 勿論、その存在の差による思考の靄はあくまでも本能的なものなので、人が天使に牙を剥き、獣が人を噛む様に、また、人が勇者や魔王を排斥し、蟲が人を刺す様に、3ランクや5ランク程度の差であれば、まだ認識の範囲内である為、その本能を上回る何かがあれば、その思考の靄も霧散し、大半がAかAAに過ぎないこの街の人々が、SS相当の『観測知性』に立ち向かって行った様な事も起こるが、基本的には、この思考の靄が起こるまでに存在の差がある相手には、立ち向かわない方が良いだろう。


 それは通常、本能が警告する程の、立ち向かい得ぬ差を意味しているのであり、その先に待つのは、只の死だからである。


(なるほど……)


 そうして、紅葉が中空の文を読み、思考の靄の正体を知った所で、唐突に、その思考の靄とは違う範囲で、紅葉に寒気が起こる。


(あれ、って事は……)



 そこで紅葉は気付く、今まで瑠璃と紅葉に接していたRランクの者が、皆かなりの温情派であったという事を。


 それは何も、目線を瑠璃や紅葉の位置にまで下げて接してくれていた、異常な程に情け深い黄泉や常夜の様な者だけでなく、普通に振舞いつつも、ある程度は瑠璃や紅葉を気遣ってくれている聖成伽やレルゥシャ、それに、セラフィリアに関しての事も、である。


 この三人は、靄の正体に気付いた紅葉がよくよく観察してみれば、誰に対しても思考の靄が発生し、SSである紅葉に思考の靄を発生させられるのはRランクしか存在しない為、全員Rランクである事がわかるが、この誰も、彼女等の側から敵対したり、差別したりする者は誰もおらず、むしろ親切にしてくれているからだ。


 それは、少なくともこの国に差別等は無く、上位者であればある程に善良であるという、この世界の性質から来るものかもしれないが、それでもやはり、疑り深い紅葉としては、全員が全員、そうであるなどという事は、当然信じられない。


 いや、それ以前の問題として……、元より、ある種の特殊な異常者を除き、自らの身を伏せてまで、蟲にも満たぬ微生物の声を聞こうとする者など、まず、いない……。


(これ、Rの中に敵対的な相手がいたりしたら……、かなり不味い、ね……)


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