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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第二章『咎人と断罪者』
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第二章第五十四話「虹色の導き手」


「!? ほんとに誰か来た!?!?」


 瑠璃の予想通り、何者かがこの窮地に颯爽と現れるが、そのお決まり台詞と共に地学室の扉を開いて現れた何者かは、なんだか自信満々そうに胸を張ってふんすと鼻息を立てているものの、瑠璃と紅葉の方には、その人物対して見覚えが無い。


 だが、瑠璃と紅葉以外のメンツはそれが誰だか知っているらしく、一人を除いて残りの全員が声を揃えて後退る。



「「「げぇ(げっ(……))!? レルゥシャ!?!?」」」


「あ、レルゥシャ君だー♪ 久しぶりー♪」


 そうして、一人、祇祁だけに好意的に返答されたその相手は、他の三人の反応を特に気にする様子も無く、右手を前に突き出して、元気良く自己紹介をする。



「はっはっはっ! その通り! 久しぶりだね、黎明の妖魔嬢。それに常界と特異の勇者に機神の娘君達。そう、僕が始龍の祖、レルゥシャだよ♪」


 そうして、何処か厨二チックな喋り方で自己紹介したその相手の容貌は、少年の様にも少女の様にも見える中性的な見た目をしており、体格的に恐らくは少年なのであろうという事は予想出来るが……、


 その、背中に一対、腰に二対、計六枚の龍翼を出す為と思われる、背中の開いたタンクトップの様な形状の白い胸鎧むねよろいや、腰の後ろから尾骶骨びていこつの辺りまである太い龍尾に合わせた、臀部の守りが無く、左右から挟み込む形の金属甲冑、ベルトポーチとウエストマントを合わせた様な深紅の腰鎧によるへそ出しルックなど、全体的にかなり露出の高い衣装を着ているにも関わらず、実際の性別はよくわからない。



 また、それ以上に気になる点として、その髪は白紫色の長髪を基本に、揉み上げ下の龍髭りゅうひげに当たる部分の髪が左右で濃い赤色と青色に分かれており、頭頂部からも流星と呼ばれる一房の赤い髪が肩の辺りにまで垂れた奇妙な髪色をしており、黄金の龍瞳と白銀の枝の様な龍角、そして鱗の一枚一枚が濃い極彩色の虹彩を放つ龍翼と龍尾からも、その色彩の異常さが感じられる。


 そして、それは何もその身体的な特徴だけでなく、全体的な服装についてもそうであり、先程の胴体の白い胸鎧と赤い腰鎧だけならまだまともなものの、その左肩には濃い紫色の肩当、首には黄金の首鎧があり、首鎧から背中へは藍色のマントが垂れ下がっている。


 また、左腕は肘から指先まで全てが橙の皮で包まれた籠手で覆われており、右腕は上腕二頭筋から手首までが全て包帯に包まれた上で銀の鎖が巻かれ、両の手には小指だけが全て包まれた黒いフィンガーレスグローブを嵌めている。


 更に、靴は同種のテクニカルシューズだが、右脚が黄色で左足が紫、同じく左足の膝にだけ紫色の膝当てを付けており、深紅の腰鎧の下はスポーツ用のぴっちりとした、黒いショートスパッツだが、右脚は青のハイソックスで、左脚はくるぶしの見える赤のアンクルという、頭のおかしくなるカラフルな色彩で纏められている。


 それは、はっきり言って何処も彼処も目に痛くて毒々しく、色々と酷いものだが、全体的に見れば、ある意味何処か神々しいゲーミングカラーとも言えるだろう。


 そして、そうしてみれば、そのゲーミングな色合いとちぐはぐな服装は、何処となく、気品のある、パンクなゴシック系の衣装と言えなくはない。


(ゴシック系の衣装……。もしかしてジャンクファーストの関係者とかかな……? ……長く伸びた揉み上げの下部分って龍髭って言うんだ……)


/(……なるほどゲーミング美少年。……そういうのもあるんですね)/



 そうして、いきなり現れた七色の極彩色に輝くゲーミング美少年に対し、瑠璃と紅葉はそれぞれ独自に感想を抱くものの……、


 そのゲーミング美少年の持つ圧倒的な富貴感と厳然さは、背がちっちゃくて顔が可愛く、胸も無いので攻撃力が無い分、かなり低減されてはいるものの、明らかに動悸がする程異質であり、思わず息を呑む。


(なんだろ、この少年……、空気が張り詰める様な……)


/(これは……、始めて黄泉さんを見た時と同じ感覚ですね……。息が詰まる……。ほんと、どうなってんですかね、この世界……!)/


 とはいえ、やはりこの世界特有の権威者の証か、このレルゥシャと呼ばれる高位存在からも、敵意はまるで感じられず、レルゥシャは友好的に近付いて来て意味の分からない事を言う。


「さて、君達の詠詞いのりは深淵に響いた。魔宴にいざなわれているんだろう? 勿論良いとも! 歪みの龍は君達を影の国へ堕とそう♪」


「「?」」


 意味が分からない、というのは、話している内容が理解出来ない、というよりは、そもそも厨二言語がキツ過ぎて、何を喋っているのかわからない。


(さっきの自己紹介程度ならまだ理解出来たんだけど……)


「えっと、龍人語……? 言語の大半がわからない……。え、みんな知り合い?」


 そうして、頭に疑問符を浮かべて尋ねる紅葉に対し、ライベリーが腕を組んで、頬をぽりぽりと掻きつつ、しどろもどろに返答する。


「えぇー、まぁ、はい。この世界の準支配種族である、始祖種族の一つ、『の方ですねぇ……。後、確か今回の大会議に出席する、Rランクの一人でもあったと思いますけどぉ……。ただぁー、あんまり知り合いとして紹介したくない相手っていうかぁー……」


 そして、知り合いである事は肯定しつつも、何処か言葉を濁すライベリーに対し、鴉亜とアレックスが率直な意見を述べる。


「始祖種族はだいたい変人で、長に至っては皆、生粋のトラブルメーカーって事で有名だから……。え、今回は一体何のトラブル……?」


「もしかして今回もまた何か爆発するんですか!?!? ヤダー!!!!!!!」



 ……爆発が何かはわからないが、今までの権威者達とは違い、今回のレルゥシャと呼ばれる権威者はあまり歓迎されていないらしい。


 とはいえ、レルゥシャ本人は、やはりそんな三人の反応を気にする様子も無く、むしろ口の前にてのひらを開いてかざしながら高笑いを浮かべ「あっはっはっはっはっ! 今日も民草は皆、元気が良いね♪」と、上機嫌に胸を逸らす。


(あっ、悪気はないけど話が通じないタイプだこれ……)


/(なるほど? 始祖種族は変人でトラブルメーカー……、確かに、このゲーミング美少年からもあの黒天使のお姉さんと同じ様な気配がしますね……)/


 

 当然、善人にも種類があり、こういうタイプも善人ではあるし、迷惑がられてはいても憎まれてはいない為、権威者としての資格は満たしているのだろうが、何分、祇祁以外の周囲の反応が悪いので、瑠璃と紅葉も一応は警戒する。


 だが、やはりレルゥシャは、そんな二人の様相もまるで気にする事は無く、二人に手を伸ばして、満面の笑みでまた意味の解らない言葉を放つ。


「なに、万魔の砦は広いが狭い。僕が導けばすぐに黄泉國の主にも会えるとも」


 そして、そう言うと同時に、レルゥシャは音も無く空間を転移して瑠璃と紅葉の二人に近付き、満面の笑みを浮かべながら、二人の手を取る。


「それじゃあ、行こうか♪」


 その言葉に対し、何かを察したライベリーと鴉亜が咄嗟に反応し「「ちょっ! 待っ……!!」」と、レルゥシャを止めようとするも、そもそもの自力が違いすぎる為、止める事は出来ず、次の瞬間、瑠璃と紅葉の姿はその場から掻き消え、直後に、レルゥシャ自身も、まるで初めからいなかったかの如く、霧散して消える。


「あ……」


さらわれちゃいましたねぇ……」


 その後では、反応虚しく立ち呆ける二人と、何が起こったのかもわからずに首を傾げるアレックス、そして、何故か「wwwまさかのwww」と、けらけらと笑う祇祁の姿があり、地学室には、そんな祇祁の笑い声だけが少し場違いに反響する。



 ……


 …………


 ………………えっ、攫われた!?


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