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地の文「なんか私が見える小娘が主役みたいですよ?」  作者: 咏柩
第二章『咎人と断罪者』
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第二章第五十一話「障壁塔と結界技術」


 広すぎる世界と、高すぎる技術、それに何処か圧倒されながらも、その技術力と頭の働く一般市民達の協力によって、目下、とっとと始末したい対象ナンバーワンの座を占めている『観測知性』の対策情報の一部を得た紅葉は、その次の具体的な対象の始末法に目を向ける。


「ふぅむ、移動限界もわかった事だし、その範囲全域を結界か何かで覆えば捕まえられそうだけど、半径500kmの五倍、直径5000kmの範囲全体に結界とか張れるもんなの? 単純な広さだけじゃなくて、『観測知性』を捕まえるとなるとSSランクの結界は必要だってさっき言ってたけど……」


 そうして話すのは、何も単純な結界技術の確認だけでなく、この世界の技術水準にどことなく悪寒を感じたからでもあるのだが、そうした紅葉の獣的本能を知ってか知らずか、そうした事柄に最も詳しそうな祇祁が目を瞑って腕組みし、顎に手を当てながら、その問題点に対して返答する。


「んー、確かに単純に範囲のみの話ならそんなに難しくないんだけど、出力は問題かなー。高出力の奴は運用が難しいんだよねー」



 その祇祁の話によれば、この世界の結界装置は大抵の場合、大型のエネルギー供給源と繋げられた親機が結界を発生させ、その結界を各所の子機で中継、拡張する事により広範囲を包み込むタイプらしく、中継用の子機さえ増やせば範囲は無制限に広げられるのだが、肝心の親機を使用するには大量のエネルギーが必要であり、対SSランク相当の高出力結界発生機ともなれば、周辺施設との兼ね合いもあり、そう易々と使えるものではないらしい。


 そうした祇祁の回答に対し、恐らく魔界では違う系統の技術に接していたらしき瑠璃は、その技術系統にも興味を示して制御盤近くのライベリーに話しかける。


「そういえば、この世界の結界装置ってどんなの使ってるんです?」


 そうして話しかけられたライベリーは、模型を変化させて元の自分の店の映っていた縮尺に戻し、その模型の中に聳え立つ、幾つかの塔を指先でくるくると指し示しながら、瑠璃に結界装置の説明をする。


「基本的には障壁塔しょうへきとうの類ですかねぇ? 街の防壁や外殻に幾つも尖塔みたいなのが建ってたと思いますけどぉ、あれの内の幾つかが障壁塔なんですよねぇ。偽装とかされてるので、どれが本物なのかは知りませんけどぉ?」


 だが、その障壁塔と呼ばれる塔の技術については少し知っていた瑠璃は、そこで科学系世界の異世界人である紅葉は認識していなかった問題に気付く。


「障壁塔……、って、これもしかして魔導塔の類ですか? って事は、もしかして移動とか出来ない系?」


 そうして尋ねる瑠璃に対し、ライベリーは首を傾げ、唇に人差し指を当てつつ、その自分達も認識していた欠陥について、愚痴る。


「おやぁ? 知ってる感じですかぁ? そうですねぇ、魔導塔は製造が簡単で量産しやすい反面、高出力を得るには莫大なエネルギー装置が併用して必要になりますからぁ、施設そのものも大型化しやすいんですよねぇー……」



 そのライベリーの説明によると、こうして都市の結界に魔導塔による障壁を使うのには幾つか理由があり……、


 まず第一に、創誓世界の都市は範囲面積が極めて広い為、手軽に同じものを幾つも製造出来、数さえ揃えれば運用も容易な魔導塔は、様々な結界システムの中でも特に費用対効果が高いらしい。


 次いで第二に、都市の結界は決して途切れさせる事が出来ない為、都市の結界には、襲撃による破損や何らかの事故でシステムが停止した際にも、結界が稼働維持し続けられるシステムが必要であり、その点において魔導塔であれば、結界内部に予備も含めて、結界発生源となる親機と子機を複数配置し、予め重複して起動させておけば、何らかのトラブルがあった際にも、親機の全滅さえ免れれば結界を維持する事が出来、修理やメンテナンスの際に一部の塔を停止させる時にも、結界自体には影響が出ないので、補助設備への切り替えなどで隙の出来る他のシステムより、防衛側に有利なのだという。


(へぇ……、この障壁塔って設備は、親機を複数起動しとけば並列して運用出来るんだ……。そして、並列起動で出力が変わる訳ではないものの、幾つ起動しても、使用エネルギーの総量は変わらない、と……)


 そこまでの説明を、実際の街ではなく、疑似構築された平原に塔のみが立ち並ぶ、シュミレーションマップの様な縮小模型によって説明された紅葉は、その親機から発生された、半球状の結界の縁を指で遠巻きになぞりながら、そのシステムを観察していく。


(……、エネルギー総量100の結界を1つの親機で維持しようとすれば、その親機の使用エネルギーは100。10の親機で維持しようとすれば親機一つ辺りの負担は10にまで減らせる……。また、そのエネルギーの負担は子機でもある程度は賄え、負担を10持てる子機が内部に一つあれば、親機1機で総量100の結界を起動していても、親機の負担が90、子機の負担が10で分散出来る……。更に、子機は結界を発生させた親機の結界の内部にあるだけで、結界全体の範囲を拡張出来るから、その子機によって拡張された範囲に子機があってもそれは有効で、その子機の分だけまた範囲が拡張されるのか……)


 また、これは異世界でもそうだが、結界は基本、その表面積で使用エネルギー量が決まる。


 紅葉が観察した所、この世界の結界の仕組みは、それを率直に表しており、仮に、親機が総表面積100m²の結界を張り、その結界範囲の中に総面積10m²を補助する事の出来る子機が1つあれば、合計で総表面積110m²の結界を張る事が出来る。更に、その総表面積110m²の範囲の中にもう一つ総面積10m²を補助する事の出来る子機が1つあれば、総表面積120m²の結界を張る事が出来る。


 当然、結界が拡張すればそれだけ使用するエネルギーも嵩む為、拡張すればする程、その表面積分のエネルギーが必要になるが、この世界の結界はある程度柔軟に形を変えられるらしく、守りたい地点だけを覆う様に結界を変形させれば、それ程表面積も多くはならず、エネルギーも嵩まない。


/(かなり実直で実践的な作りですね……、にも拘らず、実際の都市には親機子機共に必要量の10倍以上の塔が設置されてて、塔自体も、出力が高い塔を親機として、出力の低い塔を子機として運用してるだけで、障壁塔自体はどれも親機として使用出来る感じですか……。ふむ……。性能の低い塔は何の為に……?)/


 ある程度その技術を知る瑠璃は、その極めて効率的であるにも関わらず、何処か意図的に多くの無駄を取れ入れた造りに首を傾げるが……、とはいえ、やはりその形式では、広範囲を持続的に防御する事には長けていても、出力は親機依存になり、高出力の親機が無い限り、高出力の結界を張る事は出来ない。


「この形式だと、例えばこの黎明学園のEXの結界を子機で禊祓中に広げて禊祓をEXの結界で覆う、とかは出来ないの?」


「技術的には可能だけど、実質的には不可能かなぁ。EXの結界維持はエネルギーが馬鹿にならないし、出力の弱い子機を経由しつつ細長く伝達しても結局は表面積が増大する関係でそこまで遠くへは張り巡らせないっていうのと……、何より今回のケースだと、そんなに遠くから繋げるとそれだけ『観測知性』の逃げ回る場所が増えて捕まえにくくなっちゃう」


/(! なるほど……、性能の低い塔は設置場所があまりいらないので、沢山置いて結界の伝達経由の為に使用するんですか……!)/


 その割とアグレッシブな運用まで考えられた使用方法に、瑠璃はこっそりと心の中で驚くが、その運用法はこの世界では割と一般的らしく、アレックスと鴉亜が、その運用方式の弱点をも話す。


「後、今回の様に敵を結界内に閉じ込めるとなると、敵からして障壁塔が剥き出しの状態になりますので、経由に多数の障壁塔を使うのは危険ですね!」


「うん。それに細長く繋げると経由する障壁塔が破壊された時、そこで結界の伝達が途切れて一気に結界が崩壊する、って事も考えられる……」


 そうした、割と実践的な話が勇者ペアの二人から聞けた事で、障壁塔の運用法がだいたい見えて来るが、それは即ち、通常の使用法ではあの兎は捕らえられない、という事を意味する。


「まさかの万事休す……!」


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