6 サムライと太陽のクツ
【登場人物】
監督
中岡将志(49)
選手
島左近(19)
草薙太陽(16)
コーチ
マリオ(68)フィジカルコーチ
「のきおろう!ワシが先じゃ!」
「アホ言え!お前は、スクワット一回ズルしとる‼」
「馬鹿を申せ、お主の方こそ、腕立て伏せが、膝をついた女子のやり様であったであろうが!」
「てめー、このチョンマゲやろう!」
とまだあどけない表情の少年がチョンマゲに掴みかかった。
「だまれ小童、武士の魂を!」
そこへ中岡が二人の間に顔を出し、頭をサンドイッチにぶつけた。
「俺が中岡だ!」
チョンマゲの青年は、ドレッドな長髪を後ろで束ね、サイドはスッキリと刈り上げている。きりりとした眉に、負けん気の強さを感じる。
身長は並んだ少年より少し高い、174cm。
「中岡殿、この小僧、ずっとワシに何かと絡みより、遅参申した申し訳ない」
「うるさいわ!チョンマゲ‼お前、だいたいなんで草履はいてんねん!」
「なんだ、お主知らぬのか、これは、足袋ともうしてな、侍が戦のおりはその脚力をいかんなく発揮するものなり」
「だから、なんで平成にサムライやねん!」
「ワシはかの関ケ原の名将、島左近から数えて、19代目の島左近なるぞ」
「いたーい、いたー、イタイタ。こいつ頭湧いてるわ」
と左近は、ならば見おれと、サッカーボールを蹴り出し、グランドに並んだ練習用パイロンを、肩を突っ込むように、切り込んでドリブル突破し、中岡目掛けて、食いつくようなクロスを蹴った。
とっさの事に中岡、トラップで受け止めようとした。すると、横にいた、口の悪い少年が、体を倒して、鋭く落ちてくるボールの起動を、薙ぐようにするどいダイビングボレーを決めた。
「やるやん、サムライ」
「小僧も、よくぞ反応したわ」
呆気に取られた中岡にマリオが耳打ちした。
「サムライは島左近(19)いいます。レフティーのオフェンシブMFね。こっちは・・・」
と、マリオが説明しかけたら、少年は、わっ!と叫んで座りこんだ。
「靴がまたパコパコや~」
中岡が見ると少年の靴はソールが中敷とはずれて、歩くとパコパコ音を立てている。それを腹のあたりを赤いビニールテープでグルグル巻にして補修しているのだ。
「あの少年は?」
中岡はマリオに尋ねた。
「彼は、草薙太陽(15)、高校1年生ね」
日韓ワールドカップの折のイングランド代表のイケメンMFベックに似せた印象的なソフトモヒカンを更に、白く染め目だたせている。眉は通り、目は大きく目力があり、口は握り拳が入るほどでかい。
背丈は、左近とほぼどっこい、少し低い168cmと成長期真っ盛りの年頃としては恵まれている。
マリオが太陽の靴を見て中岡に
「Ele é pobre.、中岡さん彼は貧乏ね」
中岡は、太陽に歩み寄って尋ねた。
「草薙太陽!お前は、サッカー好きか?」
太陽は、赤ちゃんのような笑顔で
「俺は、世界一の選手になる!絶対、誰にもまけへん。だから、ここへ来た‼」
「だから、年頃の近い左近とライバル心むき出しで競争してたのか。ほら」
中岡は、自分の履いていたトレーニングシューズを太陽に脱いで渡した。
「どうだ?」
太陽は、シューズを履いて、駆け出し じたんだを踏んだ。
「これなら、思ったプレーができる」
「そうか」
中岡は、握り拳を作って、太陽にも促して、拳と拳をぶつけて微笑んだ。
「ゴン(・・)ちゃんありがとう。この靴大切にするよ」
中岡は首を振った。
「いいや、あとでスグ返せ。それは、ハニーにもらったものだ」
さぁ、と中岡は立ち上がり、予備のスパイクに履き替え、プロ対アマチュアのフットサル対決に踏み出した。
(つづく)
これは、フィクションです。




