7 サムライに立ちはだかる高い壁
【登場人物】
プロチーム
中岡将志(49)監督
福東悟(40)MFコーチ
田之中真(41)DFコーチ
大仏友朋(46)GKコーチ
播東英二(37)
増田隆之(37)
アマチュア選手
明智秀一郎(24)
前田慶(22)
伊賀半蔵(22)
島左近(19)
草薙太陽(16)
審判
マリオ(68)フィジカルコーチ
中岡はフットサルを実戦練習に濃縮した。通常室内で5対5で行うフットサルを、芝の練習グランドの半面をさらに、一回り狭く引き蜜集させた。
ルールは、ボールを取ったり、ゴールと正面のセンターサークルにドリブルでクリアしたら攻守入れ替えとなる。
時間は7分の4セット。ペナルティーエリア外では最大3タッチでパスを出すルール。インターバルの休憩は3分。
プロチームは、
FW中岡将志
藩道英二
MF福東悟
DF田之中真
増田隆之
GK大仏友朋
尚、大仏はプロ、アマ両方のキーパーを行う。
アマチームは、
MF明智秀一郎
伊賀半蔵
島左近
草薙太陽
DF前田慶
どちらのチームも急増間に合わせメンバーなので、得意ポジションに偏りがある。
主審はフィジコのマリオが務め、練習はすべて、地元ケーブルテレビによって、全体、攻防、個人プレーをおさえるカメラで生放送される。
コイントスの結果、攻撃はアマチームからに決まった。
年長の明智を中心に円陣が組まれ、急増ポジションを決める。
「10代の太陽と左近が前で、俺、伊賀、前田でそれを攻守にフォローする。相手は元日本代表そろいのプロと言っても、40過ぎたロートルばかりだ、運動量で押し切るぞ!」
ホイッスルが、吹かれミニゲームは始まった。
明智、前田、伊賀のボール回しで、プロのディフェンス田之中の統率に福東、増田のプレッシャーに隙はない。
ドリブル突破しようにも、3タッチルールに縛られ、個人技を発揮出来ない。
「おい!アマチュアども、カメラが入ってるんだ。攻める気がないなら、攻守入れ替えて俺のプレーを見せた方が視聴者は喜ぶぜ、明智くん」
と、中岡は率先してヤジを飛ばし挑発してくる。
明智は、伊賀、前田と冷静にパスを3人で回し、隙を探るが、田之中の統率するラインは日本代表クラスと変わらない。
それに、藩道、中岡FW陣自ら汗をかき献身に、チャージをしかける。
「仕方ない」
明智は、大きく左サイドに貼っていた左近に、低い弾道の重く早いクロスを蹴った。
蹴る瞬間、中山がパスコースを狭めたから、弾道は、若干逸れた。
それを、左近は、ペナルティーエリアで追いつき、正面の増田にドリブルでアタックした。
191と174の身長差に加え、代表クラスの体格と成長期の未成熟な対格差。
まるで、プロレスラーに子供が挑む無謀さだ。
増田は余裕を見せて左近に
「サムライ来いよ」
「いざ、勝負にござる!」
左近は、トトんと、ボールを左に弾き、次の瞬間一気にスペースへボールを蹴り出した。
増田は、不意を突かれたが、長い足で追いつき、サイドに追い詰める。
追い込まれた左近は、舞踏でも踊るような小刻みなステップでボールを跨ぎ、あろう事か増田へ突っ込んだ。
転瞬、左近は背中を預け、ボールを中心に回った。
「くそ!クライフターンか!」
増田を突破すると、カバーに回り込んだ福東が、粘っこいマークを見せ、左近の足を止めた。
左近は、右のヒールに当てたボールをすぐ左で弾き、福東の逆をつく。
「抜けた!」
だが、ドンと何かが左近の身体にぶつかり、一瞬、視界が消えた。
「甘いわサムライ!プロはあたり負けない身体を作ってこそプロ、軟弱なクルクルダンサーはフィジコに逆戻りしとけ!」
増田は左近にプロの洗礼を喰らわせた。しかし、これはファールだ。過剰なボディコンダクターはフィールドの格闘技サッカーでも反則だ。だが、これは、相手のスピードスターやテクニシャンの動きを抑えるデフェンステクニックで削る技だ。
左近はゆらりと立ち上がって、増田に、まるで居合抜きの一瞬の切れ味を秘めた迫力で
「わかっておる。ワシは卑怯者でないから勝負から逃げはせん!次で決める」
「その気持ちが身体が壊れるまでつづけばだけどな」
と、増田は自分の胸ほどしかない左近を嘲笑った。
(つづく)




