5 悲劇の将軍と和製カンナローバ
【登場人物】
監督
中岡将志(49)
選手
明智秀一郎(24)
前田慶(22)
伊賀半蔵(22)
コーチ
福東悟(40)MFコーチ
田之中真(41)DFコーチ
大仏友朋(46)GKコーチ
マリオ(68)フィジカルコーチ
尼崎の南部にあるスポーツの森のFCビシャモンテ尼崎の練習グランドの時計は10時を回った。
「中岡さん。やっぱり一番は明智ですよ」
と、中岡に声をかけたのは、同じジュビロ日本代表で名を馳せた福東悟MFコーチだ。
切れ長の鋭い目に意志の強い精悍な眉、長い赤味がかった長髪を靡かせた181cmの鍛え抜かれた肉体美を誇る「悲劇の将軍」明智秀一郎(24)。
関西大学リーグの優勝校、関西学院大学のMF NO.10でその年ヨーロッパ、ドイツブンデスリーガ、バイエルンでプレー、しかし、過激なタックルにあい選手生命を絶たれた。
そのフィジカルの強さと強いキャプテンシーとテクニックを合わせ持つかっての明智ならJはおろか世界でやれた。
「明智、怪我が治ったならなぜうちでプレーする?お前ならJ1でやれるだろう」
「中岡さん、僕は日本代表になるまで怪我をしたくないんですよ。でも3年でJ1にはあげてみせますよ」
中岡のNーBOXシステムの攻守に渡る中心選手名河紘を想定するなら彼はうってつけである。まさに、欠かせないだろう選手。
「監督、汗もかかず涼しい顔した男が、もう一人来ましたよ」
と、中岡にDFコーチの田之中真が耳打ちした。
(この田之中真もジュビロ、日本代表と名を馳せた選手である。)
次に、練習グランドへ入って来たのは、薄い眉にノッペリとした顔、口は大きく一本線に引き締まり性格は一徹。身長は180に届かずの179cm。どことなく知的でクレバーな印象がある。明智のいた関西学院大学の2年後輩DFキャプテン「和製カンナローバ」こと前田慶(22)。
(カンナローバとは、元イタリア代表のDFリーダーで世界最優秀選手の一人)
「前田、お前はどうしてうちへ来た?」
「ここでまた明智先輩と夢がみれるでしょう。下手によそでベンチ温めるのももったいないし」
つづいて、肩を怒らせたように、足をそそそと忍び足に、丸刈りで、どこか愛嬌のある、そう、吉本のアホの坂田に似た、178cmの中肉中背のすばしこい選手が来た。
「あれは?」
中岡の問いに福東も田之中も顔を見合わせ、フィジコのマリオが、
「あれは伊賀忍者ね」
「伊賀忍者⁈」
「そうね、器用なレフティー、バランス感覚がとってもいいよ」
地元の社会人リーグでサッカーをつづけた無名選手、「ザ・忍者」伊賀半蔵(22)。ポジションはMFからDFと左サイドならどこでも化けるユーティリティープレイヤーだ。
時間に間にあったのは3人。
「では、今日の練習は他の選手は不参加とする。練習は、ここにいる俺、中岡、福東、田之中、後から来る潘道、増田、GKコーチの元ジュビロ、大仏友朋のチームとのフットサルのミニゲームをする」
「潘道たちがくるまでいったん休憩、マリオお手製のハチミツレモンでも食べておけ」
「ちょっと、待った(待ちぃ~な)!」
とそこへ、互いに罵り合いながら顔をぶつけて二人の少年と青年が駆け込んで来た。
(つづく)




