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【色欲】


 武は駅前コンビニで週刊少年ホープを立読みしていると、異魔人が「人間とは良く分からない生き物だな……」と独り言のように呟いた。武が「どうしたんだよ急に!?」と聞くと、異魔人は「悪意は俺が蒔いた種だから始末を付けるが、養豚場の女が旦那を殺したのは、そんなに悪い事だったのか?」と言った。武は「何を言い出すんだ!? 人殺しは犯罪に決まってるじゃないか!」と言った。異魔人は「自然界では共食いなんて当たり前の事だ、カマキリだって雌が雄を食う」と言った。武は「それは食べなきゃ生きて行けないから生きる為の行動で、人殺しは食べる為の行動じゃないでしょ!?」と言った。


 異魔人は「じゃぁ食べる為だったら人を殺しても良いのか?」と言った。武は「人間は駄目だよ! 共食いは他に食べる物が無いから仕方なくする事でしょ!? そんな事をしなくて良い様に人間は畜産や農業で食物を確保してるんだよ!」と言った。異魔人は「でも人間は食べる為だけじゃなく牙や皮を目的として動物を殺すじゃないか!」と言った。武は「それは寒さを凌ぐ為だったり、道具を作る為にしていた事なんだよ! 最近ではファッションとか見栄や趣味に走っていると思うけど……」と言った。


 異魔人は「別にそれが悪いとは言ってない、自分達が絶滅に追い込んでおいて保護を始めたり、豚や牛は食べる為に殺しておいて、イルカや鯨は食べる為に殺すのは可哀想と言うのも矛盾だよな?」と言った。武が「それは僕にだって……」と言うと、異魔人は「生き物を殺しちゃいけないと言いながら肉を食う、そもそも植物だって生き物だ! 何より分からないのは水族館と動物園は何の為にあるんだ?」と言った。武が「生き物の生態を知る為かな…… ?」と言うと、異魔人は「ジャングルで生活しているなら野生の動物に出会でくわす可能性は有るが、そんな事は絶対あり得ない場所で暮らす人間に必要か? あれは大きな金魚鉢にしか思えない」と言った。武は「確かに観賞がメインになってるけど、子供の頃に見たのを切っ掛けに興味を持って研究した結果、イルカや猫の生態の研究を応用した電化製品もあるし……」と言った。


 異魔人は「人間の想像力には感心するが、倫理や価値観は矛盾だらけで良く分からない生き物だな」と言った。武が「人殺しは犯罪だと法律で決められているから悪い事だと思うけど……」と言うと、異魔人は「人に限らず…… もし豚や牛に感情が有って言葉が喋れるなら聞いてみたいものだが……」と言った。武は「豚や牛にも感情は有るのかなぁ…… ?」と言うと、異魔人は「子供の頃に親を殺された象が、その時の記憶が蘇って暴れる事が有ると言うし、豚や牛にも感情は有るのかもな」と言った。


 武が「異魔人は物知りだね! 豚にも感情が有るのかぁ……」と言うと、異魔人は「俺も豚と話せる訳じゃないから分からないが、人間も……」と言い掛けて「武! 向かいのホテルから悪意を感じる!」と言った。武がコンビニのガラス越しに外を見ると、ホテルの入り口は車が横付け出来る様になっており、ガラス越しにラウンジが見えた。武は「ドラマに出て来そうな高級ホテルだけど、間違い無いの?」と言った。異魔人は「あぁ! 間違い無い!」と言った。


 武はコンビニを出るとホテルへと入って行った。ホテルに入り、武が「悪意が何処に居るか分かる?」と聞くと、異魔人は「上だ! この上の方から悪意を感じる」と言った。武はエレベーターホールに向かい、エレベーターに乗ると「何階かな…… ?」と言った。異魔人が「そこまでは……」と言うと、武は「とりあえず2階から虱潰しらみつぶしに当たってみるか!」と言った。異魔人は「そうだな! しかし良く虱潰しなんて言葉知ってるな、武の年代なら普通、片っ端からじゃないか!?」と言った。武が「刑事ドラマとかで……」と言い掛けると、エレベーターの扉が開いた。武はエレベーターを降りると「悪意は感じる?」と聞いた。異魔人が「この階では無さそうだ!」と答えると、武は「じゃぁ次!」と言ってエレベーターの上りボタンを押した。


 武は暫くエレベーターを待っていたが、なかなかエレベーターが来ない。痺れを切らした武は「こんな事してたら……」と言って辺りを見回すと階段のマークが目に留まった。武は「あれだ!」と階段へと走った。武は3階に着くと「この階に悪意は居る?」と言った。異魔人は「この階には居ない様だな」と言った。それを聞くと武は階段を駆け上がり、上の階に着くと「この階は?」と聞いた。異魔人が「ここも違う様だ」と言うと、武はまた階段を駆け上がった。これを繰り返し、10階を過ぎる頃には「こんな事なら最上階から下りてくれば良かった……」と武は愚痴を吐いていた。


 武が必死に階段を駆け上がっている頃、2003号室で中年の男性と女子中学生が争っていた。部屋の前には黒いスーツを着た男性2人が中の中年男性の警護に着いていた。中年男性は名前を田中恵一たなかけいいちと言い、衆議院議員に就いていた。女子中学生の名前は深田絵里ふかだえりと言い、岐阜からアイドルを目指し昨日家出をして来たばかりだった。


 昨日、スカウトされるのを期待した絵里が渋谷の駅前で座っていると、男性が「誰かと待ち合わせですか?」と声を掛けて来た。絵里が「いえ……」と言って立ち去ろうとすると、男性は名刺を差し出し「こう言う者ですが、少しお時間頂けませんか?」と言った。絵里が受け取った名刺には、アスカープロモーション株式会社マネージャー清水義昭しみずよしあきと書いてあった。絵里は溢れんばかりの笑みで「アスカーって、芸能事務所のアスカーですか?」と聞いた。清水は「ご存知なら話しが早い、お話しだけでも!」と言った。絵里は内心「こんなに早くスカウトされるなんて!」と思いながら「話しだけなら……」と言った。清水は「良かった! 事務所直ぐそこなんで、一緒に来て頂けますか」と言った。絵里は言われるがまま清水に着いて言った。


 清水と他愛ない話しをしながら少し歩くと、清水が「事務所はここの5階です」と言った。田中ビルと書いてある表札を横目に入り口を入ると、清水はエレベーターに乗り込み5階のボタンを押した。エレベーターが5階に着き廊下に出ると清水が扉を押さえて「どうぞ」と言った。絵里はエレベーターを降り、再び清水の後に着いて行くと、清水が「ここです」と言ってドアを開けた。入り口には表札も無く、ドアを入ると正面には神棚が祀られていた。


 清水に応接室へ通され「こちらで少々お待ち下さい」と言われ、絵里はソファーに腰を掛けた。絵里は待つ間「芸能事務所ってもっと華やかだと思っていたのに、実際は違うんだな……」と呟くと応接室を見渡した。応接室の外では清水が誰かと話している声がして「また宜しくお願いします」と清水の声がするとドアが閉まる音が聞こえた。それから少しする応接室のドアをノックする音が聞こえ、清水とは違う男性が入って来た。絵里が「清水さんは?」と聞くと、男性は「清水は別に用事が出来たので、私が面接します」と言った。


 男性は「斉藤です、宜しく」と言うと絵里の向かいのソファーに座り「お名前と年齢から教えて下さい」と言った。絵里が「深田絵里、13歳です」と答えると、斉藤は「歌手、女優、グラビアアイドル等、何を目指したいと考えてますか?」と聞いた。絵里は「アイドルになりたいです!」と言った。斉藤は「それではカメラ写りを確認したいので、スタジオの方へ移動します」と言って立ち上がった。絵里は斉藤に案内されスタジオへと向かった。


 スタジオへ着くとビデオとカメラを持った男性が2人スタンバイしていた。絵里が「これがスタジオなんだ……」と思っていると、斉藤が「とりあえずソファー座って」と言った。ビデオカメラが回り始めると斉藤は「とりあえず下の名前だけで構わないんで、名前と年齢から教えて下さい」と応接室でしたのと同じ質問をした。それから幾つか質問を繰り返す間、ビデオカメラを持った男は舐め回す様に絵里を撮影していた。


 斉藤が「それじゃぁ服脱いでみようか」と言った。絵里が「服脱ぐんですか!?」と面食らっていると、斉藤は「アイドルだって写真集とかでビキニにもなるし、それ位で恥ずかしがってたらこの業界じゃ生きて行けないよ!」と言った。絵里が決心が付かないでいると、斉藤が「そんな事も出来ないなら帰れ!お前の為にスタジオ押さえたんだからスタジオ代払って行けよ!」と言った。絵里が「いくらですか?」と聞くと、斉藤は「15万だよ! 払えるの!?」と言った。絵里が「そんな……」と言うと、斉藤は絵里の横に座り「こんなのこの業界じゃ当たり前だし、最初は恥ずかしくても直ぐに慣れるから」と優しい声で言った。後は斉藤に言われるがまま、気が付けば絵里は産まれたままの姿にされていた。


 絵里は泣きながら抵抗出来ずに「もうアイドルになる夢は諦めるしかないの…… ? 家出なんてしなければ……」等と考えていた。その時、斉藤の携帯電話の着信音が鳴り「誰だ! こんな時に!」と斉藤は携帯電話を手に取った。携帯電話の画面に目をやると、先程まで険しかった表情が一変し「もしもしお待たせして申し訳ありません、斉藤でございます」と言ってぺこぺこと話し出した。斉藤は「承知しました、明日にでもセッティング致しますので……」等と話し電話を切った。斉藤は振り向くと「このガキを事務所に閉じ込めておけ!」と言って絵里を見ると「逃げようなんて考えるなよ! 言う事を聞かないなら動画をネットに散蒔ばらまくからな!」と言った。


 翌日、絵里は斉藤にホテルの一室に連れて来られた。斉藤は「これから来る方の御相手をしろ! 呉々(くれぐれ)も失礼の無いようにな!」と言った。絵里は「相手をしたら昨日のビデオのデータ返してくれる!?」と言った。斉藤は「ちゃんと御相手出来たら返してやる」と言った。そして斉藤は「逃げようなんて考えるなよ!」と言うと、ベッドルームに絵里を残し部屋を出て行った。絵里がベッドルームから部屋を覗くと、ドアの前には黒いスーツ姿の男が2人見張りに立っていた。絵里はベッドに座り「どうしたら……」と呟いた。


 暫くすると部屋の入り口の方で「お疲れ様です」と声が聞こえ、絵里はベッドルームから部屋を覗いた。入り口には何処かで見覚えのある中年の男が立っており「君達は外で待って居なさい」と言った。黒いスーツの男性が部屋を出ると「どれどれ」と言って、絵里の居るベッドルームに近づいて来た。その男性はベッドルームで絵里と目を合わせると「可愛いらしい子じゃないか」と言った。絵里は男性を見詰め「おじさんテレビで見た事が……」と言うと、男性は「君みたいな若い子に覚えていて貰えるとは嬉しいね」と言った。


 中年男性はベッドに座っている絵里の隣りに腰掛けるとネクタイを緩めながら絵里の頬に手を伸ばし「13歳だって? やはり若い娘の肌は綺麗で良いね」と言った。絵里が「嫌っ! 触らないで!」と言って男性の手を跳ね除けると、男性は「抵抗しても無駄だよ」と言った。絵里が「彼奴あいつらを使って何時もこんな事しているの!?」と言うと、男性は「あぁ、彼らは何時も良くやってくれているよ」と言った。絵里が「こんな事してたら絶対警察に捕まるんだから!」と言うと、男性は「今迄も、これからだって警察に捕まる事はない! 政治家をやっていると警察にも顔がきくからね!」と言って絵里を押さえ付けようとした。


 絵里は押さえ付けようとする男性の腕に噛み付いた。男性が「うっ!」と呻き声を上げ腕を押さえた隙に、絵里は立ち上がり枕元の電気スタンドに立て掛けて置いた携帯を取るとトイレへと逃げ込んだ。男性がトイレのドアを叩き「諦めて早く出て来なさい!」と言うと、絵里は「今迄の事、全部動画で撮ったんだから!」と言った。男性が「何だと!」と言うと、絵里は「昨日撮られた私の動画を持って来させて! じゃないと、この動画を警察に送るから!」と言った。男性は「そんな事しても無駄だ! 良いから早く出て来い!」と言った。絵里が「警察が駄目ならマスコミでもネットでも流してやる!」と言うと、男性は「糞ガキ! 良い気になりやがって!」と言ってドアをガンガン叩き始めた。


 絵里は耳を塞ぎ「絶対アイドルになる…… アイドルになる……」と何回も呟いていた。暫くするとドアを叩くのに疲れたのか、ドアを叩く音が鳴り止んだ。3分程の沈黙があり、不安に思った絵里はトイレのドア越しに「もしもし?」と言った。するとドアの向こうから「うぉー!」と言う叫び声がした。次の瞬間、ベキッと言う音と同時にトイレのドアが裂け赤黒いハサミの様な物が絵里の目の前に突き出して来た。絵里はあまりの出来事に声も出せず、突然目の前に現れたハサミの様な物が何なのか、何が起こっているのか把握出来ずにいた。絵里の目の前にあったハサミが勢い良く消えると同時にバキバキッと言う音が聞こえ、急にトイレの中が明るくなった。絵里がハサミが消えた方へと目をやると、そこに有ったはずのドアが無くなり、ハサミにドアを突き刺さしたままのサソリの様な化け物が姿を現した。


 絵里はサソリの化け物が目に入った瞬間「キャーーー!」と叫んだ。部屋の外に居た黒いスーツの男達は顔を見合わせ、片方の音が「また随分派手にやってるなぁ〜」と言った。サソリの化け物はハサミを振り上げ絵里に襲い掛かったが、ハサミに突き刺さったドアが邪魔で、絵里までハサミが届かなかった。サソリの化け物がドアを外そうともがく間に、絵里はトイレから抜け出した。絵里は部屋の入り口までう様にして逃げると「助けて! 化け物が!」と叫んだ。背後に迫る化け物の恐怖に怯えながら、震える手で何とか鍵を回しドアのノブを掴むと倒れ込む様にドアを開けた。黒スーツの1人が、廊下に倒れ込んだ絵里の腕を掴み「逃げてもらっちゃ困るな」と言って絵里を立たせ様と腕を引っ張った。もう片方の黒スーツの男が「先生は何してるんだ?」と部屋を覗き込むと「何だこいつは!」と叫んだ。絵里の腕を掴んでいる方の黒スーツの男が声に釣られてドアの方を振り向き化け物を見付けると、絵里に向かって「先生はどうした! 無事なのか!?」と言った。


 絵里が「多分あの化け物が……」と言った瞬間、階段へと繋がる扉がゆっくりと開き、息を切らした武が「もう駄目だ……」と廊下にへたり込んだ。黒スーツの1人が「これじゃ多分先生も…… 俺は逃げるぞ!」と言って走り出した。もう1人の黒スーツも「いくらボディーガードだからって……」と言って絵里の腕を掴んでいた手を放し、廊下に倒れ込んでいた武の方へと走って来た。武が「何か有ったんですか?」と聞くと「化け物だ! 君も早くここから逃げた方が良い!」と言った。武が黒スーツが来た方へと視線をやると、廊下で倒れ込んでいた絵里を部屋へと引きずり込もうとしていた。


 異魔人が「悪意だ!」と言うと、武は「少し休ませて欲しいんだけどなぁ〜」と言って立ち上がると、部屋の方へと走り出した。武が部屋へと飛び込むと、絵里の前でハサミを振り上げている化け物が目に止まった。武は「変身してる余裕が……」と言いながら、化け物に飛び蹴りを繰り出した。化け物は武に気付き、ハサミで武を振り払った。次の瞬間、武の体は宙を舞い窓ガラスを突き破っていた。ホテルの20階から投げ出された武は必死で意識を保ち「imageingイメージング aliveアライブ」と叫んだ。aliveへと変身した武は、加速度を増し落下していた体が空中でぴたりと止まり「すげ〜 飛んでる! aliveが飛べる設定にしていて良かった……」と言った。


 武は「安心してる場合じゃない、女の子を助けなきゃ!」と思い20階まで飛び上がると、割れた窓からホテルの部屋へと飛び込んだ。絵里に襲いかかろうとしていた化け物に、飛び込んだ勢いのまま放たれたaliveのキックが炸裂した。化け物は「何だお前は!」と言ってaliveに襲い掛かり、化け物とaliveの格闘が始まった。化け物との格闘を繰り広げ、化け物が怯んだ瞬間「wrath of heavenラス オブヘブン」と叫びながら必殺技を放つと化け物は光りに包まれ、次の瞬間細かい光りの泡が宙を舞い、その光の中から田中の姿が現れた。ここ迄はお決まりのパターンだったが、田中は病院に運ばれてから暫くは意識が戻らなかった。


 田中と絵里が病院へと搬送された後、ホテルでは化け物が出たと騒ぎになりマスコミも多く押し寄せた。この事件で騒ぎが大きくなり、田中の性癖や暴力団だけでなく警察との癒着が発覚した。警察としても立件せざるを得ない状況となり、田中は退院して間も無く逮捕される運びとなった。

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