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一人の少年
ずっと昔から怒れなかった。
それは、沸点が低いとかどうとかではない。怒るよりも先に、許しの感情が出てしまう自分だと、自覚していた。友達が宿題をやり忘れても、自転車でふざけてぶつかってきたときも、俺は許していた。怒れなかった。怒ろうとすると、なんだか嫌悪感が募ってきて。
でも、そんな日常は急に崩壊に向かった。いつも通りの徒歩通学、俺はただ歩いていた。でも、後ろから友人の声がして。タイヤの音から共に駆けてくる声は、俺の隣で、止まらなかった。俺の制服の襟首を掴んだまま、数メートル進んで。
俺が最後に聞いたのは、友人が泣き喚く声だった。この状況じゃ、誰も怒れないと思う。最期の俺から出ようとしていた言葉は、「大丈夫」だった。




