第六話『最悪な同行者』
ぼんやりしていた視界が、少しずつはっきりしていく。
「んぁ……? ここ、どこだ……」
困惑しながら周囲を見渡し――すぐに現状を思い出して、気分が沈んだ。
俺が目を覚ましたことに気づいたのか、視界に入っていた女の子がこちらを向き、柔らかく微笑む。
「目が覚めたようでよかったです。自己紹介しますね。私は萩野絢音。隣にいるこの子は妹の、萩野唯香です」
そう言って、彼女は隣の少女に軽く目を向けた。
「長い旅になると思いますが……よろしくお願いします」
「おーう、目が覚めたかわしはグルブじゃ、よろしく頼むの〜」
そう操縦席の方にいる老兵が愉快そうに告げてくる。
「………」
萩野絢音。おそらく十五歳ほど。
黒髪のロングヘアに、いかにも魔法使いらしい格好をしている。
萩野唯香。おそらく十一歳ほど。
黒髪のショートヘアで、こちらも同様に魔法使いらしい装いだ。
だが、この二人は――間違いなく、容姿が多少良いという点以外に、これといった長所はないと確信できた。
なぜなら、“召喚者”だからだ。
竜大戦時代の遺物――いや、汚物とすら呼ばれる存在。
しかも、名前や容姿を見るに、おそらく日本人。
この世界では、血筋こそが魔力量――つまり強さの大半を決める。
そんな中で、何の血統も持たない召喚者に宿る魔力は、極めて微々たるものだ。
……まず間違いなく、まともに魔法なんて扱えない。
さらに悪いことに、召喚者の大半を占める日本人は――
根拠も後ろ盾もないくせに、分不相応な理想や思想を掲げ、やたらと偉そうな者が多い。
そのせいで、評判は最悪だ。
――俺とは大違いだ。
そして、唯一この世界の現地人らしき人物は――グルブ。
おそらく六十代後半から七十代前半ほどの、痩せ細った老兵だ。
「…………」
俺は無言のまま、その場の全員を見渡す。
表情は自然と暗くなっていた。
そんな俺の様子に、絢音が不思議そうに声をかけてくる。
「どうかしましたか?」
「最悪だ……」
思わず小さく漏れたその一言に、
「え?」
と、絢音が驚いた声を上げた。
「こんなカスの集まりと旅なんて嫌だ! 今すぐ返してくれー!」
そして、現状に至る。
「はぁ……」
ため息が尽きない。
「そんな不貞腐れてちゃ、何も楽しめんぞ〜。景色でも見てみたらどうじゃ? 案外楽しいもんじゃぞ」
「うるせぇ……」
余計なお世話だ。
このままゴロゴロして、なんとか乗り過ごしたい。
「もういいですよ。あんな人、ほっときましょ」
絢音が苛立ちを滲ませながら言う。
(……そうしてくれ、そうしてくれ。てか最初からそうしろってんだよ)
「元々、旅に来たくなかったのかな……」
唯香が少し寂しそうに呟く。
――当たり前だろ、って話だ。
「うーーむ……旅ってのは、原則みんなで仲良くした方が楽しいもんじゃ。それに旅には、どうしたって危険も付きまとう。そういう時こそ、全員が一丸になるべきじゃな」
その時は無視した。
だが――この言葉の意味を、俺は思いのほか早く思い知ることになる。




