第二話『甘い汁』
「ランダウェイー〜!」
女性たちの歓声が、部屋中に飛び交う。
――そう、この異世界にも存在するのだ。
キャバクラが!!
しかも、兄の名前を出して
「広告効果になりますよ」とでも言えば――
ほぼタダだ。
「フォー!!」
次々と開けられるシャンパン。
気分は最高潮、まさに爽快そのもの。
「俺も国、救っちゃおうかにゃ〜」
ふざけた笑みを浮かべ、そう口にした――その瞬間。
バンッ!!
勢いよく扉が開かれる。
現れた店員は――
その顔を見た瞬間、誰もが青ざめるような鬼の形相だった。
「おい、このクソ野郎。
人の名前出して、好き放題やりやがって……」
「あ、いやこれは――」
グシャッ!
言い終わる前に、拳が顔面にめり込む。
そのまま――
数メートル先まで吹き飛ばされた。
「チキショー……あの野郎。
実の弟に手ぇ出すとか、終わってんな」
頬を押さえながら、スラム街を歩く。
口にくわえたキャンディを、カリ、と噛み砕いた。
ここはアーレスワット連邦国。
二大覇権国家の一つと称される強国――だが。
近年、その内情は大きく歪み始めていた。
広がり続ける、貧富の差。
俺が今いるこの場所も、その象徴だ。
元々の貧民に加え、三年前――
隣接する同盟国家が魔人に侵略されたことで、逃げてきた孤児たち。
そういう連中が、特に多く集まる地域。
だからだろう。
俺が舐めているこの飴を、
子供たちが物欲しそうに見つめている。
この世界じゃ、こういう甘味は高級品だからな。
(いいねぇ……この感じ)
(すげぇ優越感だぜ)
自分だけが“持っている”という実感。
それが、頬の痛みを忘れさせるくらいに――
じわじわと、満たしていく。
「なんか…」
前から感じてはいたが――
明らかに、こちらを見つめる視線の数が増えている。




