第一話『勇者の弟』
自分の想像を形にしたいと思い始めました。
今この世界は――第三次人魔大戦の真っ最中である。
人類と魔人、両種族の繁栄を賭けた争いだ。最前線では、業火の炎のように激しい戦いが繰り広げられていた。
戦火が轟く戦場。その中で、ひときわ目立つ一振りの剣が煌めいている。
侵攻される都市、人々の悲鳴が飛び交う戦場で双方はぶつかり合う。
「ゴブリンロード…噂には聞いていたがここまでとは」
そう告げる男の前に立つのは――
右手に剣を携え、全身を鎧に包んだ異形の存在。
緑色の皮膚を持ち、二メートルを優に超える筋肉質な巨漢。
そして何より異様なのは、その腕だ。
左腕は右腕よりも遥かに太く巨大で、色も青紫に変色している。
「それはこちらの台詞だ、勇者クラフト。
俺と真っ向からここまでやり合える相手がいるとはな……だが、殺された同胞のためにも――打ち取る」
一瞬、視線が周囲へと向けられる。
そこに転がるのは、無数の死体。
ゴブリンの骸。
そして――それ以上に多い、人間の死体。
「ッ……英剣!」
その隙を逃さず、クラフトは剣に魔力を込める。
淡い光が刃を包み、周囲数メートルに微風のような波動が広がっていく。
「させぬわ!」
左手に岩の球体を構築し、躊躇なく投擲。
クラフトの身体に匹敵する巨大な岩塊が、凄まじい速度で迫る。
直撃すれば――原形など残らない。
「クソ……!」
振り抜いた剣が、大岩を粉砕する。
爆裂音とともに砕け散る破片。
その破片を腕で防いだ、次の瞬間――
すでに間合いを詰められていた。
咄嗟に、礫を相手の顔面へと投げつける。
同時に、片手の剣で襲い来る一撃を受け流す。
角度を操り、水のように力を逸らす。
――だが。
互いに体勢を崩し、そして同時に立て直す。
次の瞬間、両者は再び踏み込んだ。
刃と刃がぶつかり合い、
熾烈な火花を散らす。
そして――英雄の帰還である。
壮絶な戦いを経たその姿は、まるで御伽噺の勇者のよう。
街は祝祭に包まれ、盛大なパレードが行われていた。
国中の民が総出で、拍手と喝采を送る。
その中心にいるのは――勇者クラフト。
だが、その歓声の中に――
一人だけ、場違いな思惑を浮かべ、笑みをこぼす男がいた。
(へへ……これで俺も、楽に生きられるってもんだ)
「兄さん! 本当にすごいよ!」
「ありがとう、ケンダル」
歓声をかき分け、パレードの列へと駆け寄る。
そして――兄へと抱きついた。
(国を救った伝説の勇者の弟……この肩書き、使わねえ手はないよな)
そう。
この物語の主人公は――
勇者ではない。
その弟である。
趣味感覚で書いてるので、お手柔らかに見て貰えると幸いです。




