19話 肝試しみたいでテンション高まってきたぞ
水の滴る音がいびつな壁面に反響し、幻想的な空気が立ち込める。
「俺正直ちょっとビビってるんだが、二人とも、全然平気なんだな。」
「まあ、私淑女ですから。こんな所で───うひゃあ!?」
コウモリが飛び去る。淑女ラウラは最後まで口に出す前にフラグを回収した。
その一方で、俺は微動だにしなかった。ホラー映画を漁っていた時期があったため、急なビックリ展開には慣れている。そして俺は、驚いても表に出さない術を体得した。たしかお化け屋敷等で格好つけるためだったんだが、修行の成果ってやつだな。
アリスも結構驚いているようだし、肝試しみたいでテンション高まってきたぞ……!
───前言撤回。
飛び出してきた大型ネズミが、俺の足に思いっきり噛みつき、それをラウラが切り伏せた。
内心ビビっているのを誤魔化すために、すました顔を続ける。
「シオト、大丈夫?結構血出てるし、かなり痛いと思うんだけど。」
「え?あ、ああ。凄い痛いね。うん。すっごく痛い。」
内心、
いっってえええええええええええ!!!と思っている。
「先輩。もしかしてやせ我慢っスか?」
「いやまあ、そんなことはないが・・・治してもらえると、嬉しいな。すっごい痛いし。」
内心、
早く!頼む!!早く!!!はやくううううううおおおおおおおお!!!と思っている。
「変な先輩。治癒加速。」
傷口が塞がっていく。治るときに痛まなくて良かった。
放っておいても治るような怪我は、大体ヒールで治せるらしい。相手の治癒力に依存した魔法なので、マナ効率が良く、俺も覚えることができた。が、自分に対しては効果が薄いようなので、今回はアリスに治してもらった。
「魔法ってすごく便利ね。スノウラッドの傷が、ここまで早く癒えるなんて。」
「この洞窟ってあんなのばっかなのか?だとしたら命が危ないんだが。」
「あれだけ素早くて殺傷能力が高いのは、滅多にいないっスよ。ちなみにスノウラッドは、一発殴っただけで倒せるっス。でも、あれだけ大きい個体となると、壁にちょっとぶつかっただけで死んでしまうので、あまり動かないはずなんスけど。先輩、なんかやっちゃったんじゃないスか?」
アリスはこちらを見てニヤリと笑った。
「なんもやってねえよ!・・・でも、アリスは博識なんだな。ここの洞窟は初めてなんだろ?」
「どこの洞窟にもいる魔物なら、結構知ってるっスよ。魔導士は、知力を蓄えて力にする職業っスからね!でも、知識が多いのと賢いのは別物っスけど。」
「アリスちゃんは、十分賢いと思うよ。しっかり努力したうえで謙遜する人が、お馬鹿さんなわけないでしょ?」
「ララさん・・・!!眩しいっス!」
ラウラの褒め言葉には、確かな力強さがあり、褒められるとどうしようもなく嬉しいのだ。閃光の精霊が味方するのも頷ける。
「さ、どんどん行くよ!」───
「ネイルキャットっス!閃光が効果抜群っスよ!!」
「行くよっ!──────!!からの、切っ先斬り!」
「タペタムが墓穴を掘ったな。」
「向こう岸に行きたいけど、池で濡れるのは嫌ね・・・。」
「土魔法で床造るっス!」
「マナの暴力・・・。」
「初めて見る魔物っス。岩石で体を覆ってて、攻撃しづらいっスね・・・。」
「こういう魔物は、内側からだ!爆突剣!!」
「口に剣を突っ込んで爆発って、すごい派手にやるのね・・・!」
───結構奥まで進んできた気がする。
ネズミに噛まれた時はどうなるものかと思ったが、俺たちはかなり連携が取れているんじゃないかと思う、互いに気遣って互いに動きやすくなり、気遣う余裕が増える。いい連鎖だ。
全員が適材適所を意識しているので、最大効率で動ける。
「この土壁、変わった感触だな。」
「壁もさっきから狭くなってきてるね」
「なにか来たら、すぐ対処するっスよ。」
「りょーかい!」
でもまあ、この二人がいれば、どんな奴が来ても大丈夫なんじゃ───
────────────!!
一瞬の慢心に連動するように、地面が揺れ動き、その揺れは次第に大きくなっていく。
地中から、なにかが来る・・・!!!




