15.サシ飲み
ゴードンは1時間程遅れて「BARパステノス」にやって来た。
店のドアを開けると、楽しそうに飲み食いしている5人が見える。
「おーぅ。楽しそうだのぅ」
ゴードンは楽しい酒宴が大好きである。
しかも、ここは「バー」である。何もしないで退屈そうに待たれているくらいなら、失礼でも良いからパーっとはしゃいでくれている方が何倍も嬉しい。
「バー」である。と、言ったが通常営業はしていない。基本的にはパステノス自警団が溜まり場として使うだけの場所だ。しかし、酒の種類と量はそこら辺の店に負けないだろう。
「ゴードンさん。勝手に騒がせてもらってます」
俺はゴードンに気付き席を立って挨拶をした。ゴードンは「そんなの儂にはいらんわい」と、手をヒラヒラさせて厨房に向かう。そして、木の樽を抱え帰ってきた。そして、
「そんな挨拶より、改めて乾杯じゃー!!」
「カンパーイ」
このおっさんは根っからの飲み好きなのだろう。盛り上がっていた飲み会の雰囲気を壊さずに、ハイテンションで合流する。出来た大人である。
「盛り上がっておったが何の話をしてたんじゃ?」
「そーそー、ひどいの聞いてゴードンさん!親分さんもヤンス君もどこから来たのか教えてくれないの!」
「親分さんなんて名前聞いてもずっと誤魔化してるしー」
「けど、親分さんの料理すごい美味しいの!」
俺とヤンスは、何が面白いのか、そのやり取りを見てゲラゲラ大爆笑している。
「ふぅむ。ちょっと酔っ払いすぎかのぅ。どれ、毒素排出」
ゴードンは俺たち5人に手をかざす。
すると、酔いが冷めた訳ではないが、、ベロベロの酔っ払いだったのがほろ酔いになったというか、意識がハッキリするというかなんと言うか。
とにかく、まともに会話できる状態にはなった。
するとゴードンは「特に改る必要は無いんじゃがの」と前置きをしてから、コホンと咳払いをし
「儂はパステノスの長、ゴードン=フリーマンである。偉大なる氷の魔法使いよ、名をなんと申す」
と、とてつもなく改まって聞いてきた。きっと、町の長として聞いてるから茶化さず教えてね。ってところだろう。
「そういう感じの苦手っす。全部ちゃんと話すから2人で飲みながら話しましょーや」
俺は笑いながら言い、自分の酒を持ちカウンターへ歩いて行った。
「ふむ。そうじゃの、話が聞ければなんでも良いわい」
そう言うと、ゴードンはカウンターの隣の席に座った。
「えー」
「親分さんとゴードンさんも一緒に飲むー」
「騒ごうよー」
と、騒ぐ3人娘。可愛い、俺としてもみんなで飲んだ方が楽しいのだが、流石にゴードンと話をしないと言うのはマズイだろう。
「ヤンス!リナ、レナ、ルナに風呂見せてやれ。今から行けば温かいはずだ!」
「ハイでヤンス!」
俺の言葉にヤンスは満面の笑みで答え。3人娘も大喜び、4人でさっさっと宿屋に行ってしまった。
「お騒がせして申し訳ない」
「いや、構わん。騒がしいのは好きじゃからな。。お主らの話を聞いとかない訳にいかなくてのぅ」
ゴードンの表情から察するに、本当はあのまま宴会続行が良かったのだろう。
「酒の席は今度改めて作りましょう」
ゴードンと宴会するのは楽しそうだし、こんなんでも町の長である。仲良くなっておいて損は無いだろう。
「本当か!淫魔族の3人も来るのかのぅ?」
あー。。
なるほどね、いつのどこの世界も男は当然助平なんだな。
俺は、自然と笑みがこぼれていた。
「ま、乾杯しましょーや」
「うぬ。そうじゃの」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺は飲みながら全ての事を話した。
全ての事と言っても、この世界に来てまだ2日目だ。重要な事と言えば、違う世界からヤンスと共に転生してきた事・魔力が無い事。の2点だけだろう。あ、あとは侵入防止の結界を勝手に通過した事も謝っておいた。いや、能力の事も色々話した。
俺からしたら重要で無くともゴードンがどんな風に思うかは分からない。
ゴードンは「残してきた家族は心配では無いのか」と聞いてきたが、俺は前世で天寿を全うしたのだから、俺が心配する事では無いと伝えた。
「するとこの世界で人間として生きてゆく、そういう事じゃな?」
俺の言葉足らずな下手くそな説明でゴードンはきちんと理解してくれた。
なんと言うか、とても安心感を与えてくれる人である。
「はい、できれば」
俺が、答えるとゴードンは「それは任せておけ」と言ってくれた。ただし名前は明日までに考えておいて欲しいという事だ。
ゴードンは前世での名前をそのまま使えば良いと言っていたのだが、俺は拒否した。
どうせ生まれ変わったなら名前も変えたい。という軽い理由なんだけどもね。
「あとは、能力について詳しく知りたいのぅ」
俺は会話の合間に、ツマミの補充も兼ねて「創造主」の能力を何度か実演して見せていた。「不思議じゃのぅ」何度見ても、そう呟くゴードンの顔が印象深い。
「知識の泉」に関しても、俺が知りえないこの世界の質問をゴードンに聞かれた時に、答えられる場合と答えられない場合があった。
俺も能力については、ちゃんと理解しているとは言い難い。
使っているが、使いこなせてはいないだろう。
俺とゴードンは酒を飲みながら、科学の実験をするかのように楽しく能力の考察を行っていく
気が付いた時には夜は明けていた。。
主人公の名前、次の話でようやく出てきます。




