十四話目
そこからは、本当にバタバタしていて、なんなら食事は珍しく部屋で摂ることになった。
食事中、メイド達がしきりに、
「ご無事で安心しました」
そう言ってきた。
夕食のあと、給仕をしてくれたメイド達へなにがあったのか聞いた。
しかし、子供には話したくないのか、話さないように候爵から厳命されているのか、なにも教えてもらえなかった。
しかし、スレでのやりとり、そこでの推察があたっているのだろう、ともわかった。
ふと思い立って、神様から与えられた情報になにか答えが書いてないかと思ったが、なにもなかった。
どうやらこの情報は、あくまで一周目に起こったことだけ教えてくれるものらしい。
それはいい。
別にいい。
いま、重要なのは、殿下の母君を守ることだ。
殿下のために、守ることだ。
死なせないことだ。
「……なら、どうすればいい??」
自問する。
答えは出ない。
誰が敵かわからない。
わかっているのは、襲撃者がいること、それだけだ。
俺は湯浴みやら諸々を終えると、この日はもうさっさとベッドに潜り込んだ。
潜り込む前、メイドが気を使って砂糖たっぷりのホットミルクを用意してくれた。
そのお陰か、すぐに睡魔がやってきた。
翌日、目を覚ました。
視線の先には、殿下。
殿下が心細そうな瞳を俺へ向けていた。
違う!
翌日じゃない!
これは、昨日帰ってきたあとの光景だ。
時間が、巻き戻ってる!!
えと、えとえと、これはつまり俺は就寝後に死んだ、ということだ。
俺はすぐに、掲示板へ現状を書き込んだ。
――――――
769:スレ主
と、そんなわけで寝て起きたら、時間が巻き戻ってた件
770:考察厨
お、oh(´・ω・`)...
771:名無しの転生者
そうか( ´・ω・`)
772:スレ主
なぁ、これってどういうことだと思う?
773:考察厨
そんなん、寝てる間にスレ主が暗殺されたんだろ
774:名無しの転生者
>>773
(σ゜∀゜)σそれなッッ!!!
775:スレ主
やっぱり、そうかぁ
でも、なんで俺が狙われたんだ??
この時点では、母君が標的のはず
776:スレ主
それに、いくらなんでも部屋に不審者が来たら気配でわかるはずなんだけどなぁ
777:名無しの転生者
わかるの??
778:スレ主
前世で磨いた一部能力が引き継がれてるんだ
例えば、剣術とかな
さすがに三歳の身体だから、現時点で剣を振り回したりは難しいけど
今回の場合は気配を察知する能力だ
779:名無しの転生者
な、なるほど
780:名無しの転生者
要は、前世で培った索敵センサーが働かなかったってことか
781:考察厨
とにかく、寝ている最中にスレ主が殺されたことは事実なわけだ
まずは、何が起きたのか知る必要があるな
782:スレ主
知るって言っても、どうすれば??
783:考察厨
まぁ、まずは寝たフリして
襲撃者が来るの待って、返り討ち、とか?
もしくは、家の中をこっそり探索するとかかな
――――――
なるほど。
とりあえず、やってみるしかない。
俺は、考察厨の書き込みに従うことにした。
とにかく寝たフリをしようと、ベッドに潜り込む。
今回は、ホットミルクは断った。
おそらく寝入ってしまったのは、メイドには悪いがホットミルクが原因だと思ったのだ。
そして気づくと、また殿下の心細そうな瞳が俺を見ている場面へ戻ってしまっていた。
は????
え、なに、これ?
また死んだの??
え、なんで??
混乱する頭で、俺は掲示板へ書き込みしようとする。
しかし、スレ民達が雑談でスレッドを消費してしまっていた。
そのため書き込みが出来なくなっていたので、自室へ向かいながら新しくスレ立てした。
――――――
1:スレ主
色々あって、死に戻って
自分を殺したヤツと婚約したスレ主だ
とりあえず、報告
また死んだ件
2:名無しの転生者
お、おう?
3:考察厨
あ、スレ立てしてる
ってwww
死んだんかwww
4:名無しの転生者
スレ主だー\(^o^)/
5:名無しの転生者
また死んだのか
6:名無しの転生者
で、どうやって死んだん??
7:スレ主
わかんない(´・ω・`)
8:考察厨
とりあえず、屋敷についてから
寝るまでの行動を思い出せる限り、詳細に書き込んでくれ
なにかわかるかも
――――――
考察厨に言われるがまま、俺は寝るまでの行動を書き込んだ。
すぐに反応があった。
――――――
14:名無しの転生者
およ、じゃあホットミルクになにか盛られたかね?
15:考察厨
>>14
その可能性は低いな
二度目の時、スレ主はホットミルクを飲んでいない
16:名無しの転生者
じゃあ、なんでスレ主は眠ったんだ??
17:考察厨
さぁ?
そこまでは
┐(´-д-`)┌
18:名無しの転生者
魔法かなんかじゃね?
眠ったの
――――――
なんらかの魔法の可能性は高いだろう。
魔法については、この二ヶ月のうちに勉強できたお陰で他にも覚えることができた。
とはいえ、攻撃性の高いものは教えてもらえなかったが。
その中に、眠れない病気の人を休ませる魔法、つまりは安眠の魔法があったことを思い出す。
もしかしたら、それが使われたのかもしれない。
先程と同じ流れを繰り返し、ベッドへ潜り込むと同時に俺は魔法の詠唱を始めた。
「――…――……」
小さく小さく。
待機しているメイド達にも聞こえないほど、小さな声で呪文を唱える。
自分や、自分を中心に一定範囲以内にいる人物に対する魔法を、無効化する魔法である。
攻撃性の高い魔法の代わりとばかりに、守るための魔法として教えて貰ったのだ。
「【祝福のベール】」
淡い光の粒子に包まれる。
でも、シーツを被っているのでメイド達には気づかれないはずだ。
気配を探る。
メイド達は待機したままである。
よしよし。
このまま、様子見しよう。
ただひたすら待った。
異変は必ず起こると信じて、待った。
どれくらい経った頃か、それはいきなり起こった。
ばたん、と何かが倒れる音がした。
かと思いきや、シン、と屋敷中が静まり返った。
俺はベッドから出る。
待機していたメイド達を見る。
メイド達は、眠っていた。
すぐそばに、大きなたんこぶを作ったメイドが倒れていた。
先程の音は、彼女が倒れた音だったらしい。
打った場所が頭なので、念の為、治癒魔法をかけておく。
それから、気配を消して部屋を出た。
向かうのは、客人が宿泊する用の部屋だ。
つまり、殿下と母君が居るであろう部屋である。
あちこちで、この家で働いている者たちが倒れている。
見つける度に、治癒魔法をかけておく。
目的の部屋へたどり着いた。
気配を探る。
直後、視線が下へ急降下した。
床と平行になる。
この感覚を、俺は知っていた。
俺は、首を落とされたのだ。




