十三話目
他の貴族たちもお忍びでよく来る店らしい。
今回もお忍びあったため、他の一般人と同じようにホールにある席へ案内された。
俺はあたまに疑問符を浮かべつつ、殿下の母君にオススメされるがままケーキセットを注文した。
殿下も同じだ。
セットなので、俺と殿下は産地直送フルーツの搾りたてジュースが着いてきた。
大人たちは、紅茶とコーヒーである。
(おかしい、なんで?
襲撃されなかったんだ??)
はっ!
もしや、殿下達は城に帰る途中で襲われるのか?!
だとしたら、そこまで着いていかなければならない。
いや、それは無理だ。
すでに一緒に美味しくお茶をいただいてる。
なんならケーキもバクバクと食べている。
これ以上、我儘は言えないしさすがに両親に不審がられる。
と、なれば。
嫌だが、最悪自死するしかない。
そうすれば、時間を巻き戻せる。
そして、やり直すしか……。
いや、まずは現状を考察厨達に報告して知恵を借りるか。
そこまで考えた時だった。
遠くから花火、いや爆竹のような音が聞こえてきた。
他の客達がざわめく。
続いて、ドンッ、という爆発音。
客や店員までが、何事だと野次馬根性丸出しで外へ飛び出していく。
「なんだろう?」
「な、なんでしょう?」
殿下の言葉に釣られるように、俺もそんなことを、口にした。
親たちを見れば、目を丸くして顔を見合せている。
そこに殿下達の馬車の馭者が店に入ってきた。
駆け足で、母君の横に来るとなにか耳打ちしている。
母君は顔を青ざめさせつつも、馭者へなにやら指示を出す。
馭者は頷いて店を出ていってしまった。
その背を見送ったあと、母君は俺の両親ともなにやらヒソヒソと話していた。
子供である俺たちには聞かせたくない内容なのだろう。
両親も、母君の話を聞いて顔を青ざめさせている。
しかし、すぐに俺の父である侯爵が立ち上がる。
「殿下、提案なのですが。
アイリスも殿下とまだまだ遊び足りないようなので、どうです?
今日は我が家でお泊まり会でもしませんか??」
へ?
どうした、急に??
「え、いいの?!
あ、いいんですか?侯爵??」
戸惑う俺の横で、殿下が目を輝かせる。
「えぇ、もちろん母君もご一緒ですよ」
殿下が母君を見る。
母君は、優しく微笑んで殿下に向かって頷いた。
そのあと、うちの馬車で帰路についた。
俺は殿下と雑談しつつ、思考入力で掲示板で事の経緯を書き込んだ。
すぐに反応が来た。
――――――
507:考察厨
それはアレだ
ほぼ、ひゃくぱー、寄り道で命救われたな
508:名無しの転生者
お茶したがために、命拾いしたやつだな
俺でもわかる
509:スレ主
どゆこと?
510:考察厨
説明する前に、だ
その爆竹とか爆発音は、決起なんだったんだ?
511:スレ主
店から出て馬車に乗る時
行き交う人達の話声が聞こえてきたんだが
それによると、たまたま停車してた乗り合い馬車が急に爆発したんだってさ
最初に軽い爆発、そのあとに大きな爆発があったとか
で、その爆発に殿下たちが巻き込まれたってことになってて、大騒ぎになってた
512:考察厨
なるほどなるほど
その乗り合い馬車って、人は乗ってたのか?
513:スレ主
さぁ?
そこまでは、わからん
でも、殿下や母君が怪我した、とか、死んだって話以外とくに流れてこなかった
514:考察厨
なるほどなるほど
その、死んだのなんだのってのは基本的に一般人が言ってた、と
誰が言い始めたのか、はわからないよなぁ
515:名無しの転生者
でも、煽って言いふらしてるのがいるってことか
516:スレ主
???
なんでそうなるの??
517:考察厨
>>516
あー、あのな?
変だと思わないか?
殿下やそのお母さんは、お忍びで劇に行ったんだよな?
馬車もわざわざ偽装して乗り合い馬車を使ってた
かなり情報操作から諸々徹底されてたはずだ
でも、一周目では襲撃され
今回は他の馬車が、おそらく間違われて同じように襲撃された
518:考察厨
たぶんだが、今回襲撃された馬車が停車してた場所は、本来なら殿下達が乗ってた馬車がいたはずだ
つまり、情報が筒抜けだった可能性がある
でも、殿下達は無事
さて、何故でしょう?
519:スレ主
俺が、我儘を言って
殿下の母君が、お茶に誘ってくれたから?
520:スレ主
つまり、予定外の行動があったから?
521:考察厨
そういうこと
522:名無しの転生者
えーと、つまり、どゆこと??
523:名無しの転生者
>>522
考察厨がどっかで書き込んでたけど
殿下の闇堕ち経緯に裏がある、ってことがわりかしガチだった可能性が高くなった
524:名無しの転生者
でもだとしたら、この場合は黒幕、でいいのかな?
殿下を闇堕ちさせたい黒幕がいるってことだろ?
なんで闇堕ちさせたいんだ??
525:名無しの転生者
さて?
526:名無しの転生者
いや、待て待て
今回のは馬車が狙われてる
で、爆発までさせてるんだ
普通の暗殺だった可能性もあるだろ
527:名無しの転生者
一周目だと、殿下のお母さんは、殿下を庇って亡くなったってことだけど
馬車が爆発したんじゃ、庇うもなにも無いような気がするんだが
528:名無しの転生者
たしかに
529:考察厨
>>527
(σ゜∀゜)σそれなッッ!!!
530:スレ主
ちょっと、待ってくれ
神様がくれた情報、確認してみる
531:名無しの転生者
>>530
そういや、それがあったな
532:スレ主
わかった
なんか、くわしいことおしえてーって願うと
くわしい情報が出てくるみたいだ
533:名無しの転生者
なるほど
それで、一周目だとどんな感じだったんだ??
534:スレ主
最初の軽い爆発で、馬車が横転
この時に馭者兼護衛が死亡
なんとか殿下と母君が馬車から這い出し、城へ向かおうとしたところ
殿下達へ刃物を持った人物が襲いかかる
母君は咄嗟に殿下を抱きしめ、守った
襲撃者は、その母君の背中に刃物を振り下ろし滅多刺しにして殺害したって流れだ
酷いな、五歳の子がこれを間近で見たのか
535:考察厨
ふむふむ
最低限の護衛でもあった馭者も死亡
さらに、体が頑丈なはずの龍神族の血を引いてる母君を殺せる刃物まで用意してた、と
536:スレ主
情報によると、母君を殺害した後
襲撃者は逃亡した、とある
537:名無しの転生者
生き残ってるし、その後の流れも知ってるから不思議ではないんだけど
こうして整理されると、変だよな
ただの暗殺なら殿下も殺せばよかったのに、してない
538:スレ主
>>537
たしかに
539:考察厨
>>538
(σ゜∀゜)σそれなッッ!!!
540:名無しの転生者
やっぱり、黒幕がいて
殿下の闇堕ちをプロデュースしてる可能性高い??
541:名無しの転生者
闇堕ちプロデュースって、なんか嫌だな
542:名無しの転生者
しかし、闇堕ちさせることになんの意味があるんだ??
――――――
気づくと、屋敷に着いていた。
候爵が執事とメイド達へ、なにやら指示を飛ばす。
殿下たちは、俺の母様に促され屋敷の中へ入っていく。
俺もそれに続く。
屋敷に入ると俺は、俺付きのメイド達に囲まれ自室へ連れていかれた。
殿下がどこか所在なさげな、心細い瞳を向けてくる。
俺は安心させるようにニッコリ笑って手を振った。




