十二話目
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「おもしろかったねー」
「はい。
また観たいです!」
劇の内容は、身分を隠した架空キャラの皇帝陛下が世間に跋扈する悪者を退治するという、大衆娯楽作品だった。
思っていた以上に謎解きあり、アクションありでとても楽しめた。
それはともかく。
俺は殿下と会話を交わしつつ、周囲の気配をそれとなく探る。
妙な気配はない。
続いて、神様から与えられている情報を確認する。
本来の流れでは馬車で帰城途中に、殿下と母君は襲撃された。
そして、母君は殿下を庇って命を落とす。
今回もこのままならそうなるだろう。
「……殿下、あの」
おずおず、といった体を装って俺は殿下の袖をつまんで、クイクイっと引っ張った。
「なぁに?」
「もうちょっと、殿下と一緒に居たいです」
と、甘えてみる。
それを見て母君が、微笑ましいとばかりに見てくる。
しかし、今世の母親は慌てて、
「まぁ、アイリスったら!
ご迷惑でしょ!!」
窘めてきた。
しかし、殿下の母君は寛容だった。
「あら、気にしないでくださいな。
そうですね、でしたら皆さんでお茶でもどうでしょう?
良いお店をご紹介しますわ。
アイリスちゃんは、うちの息子と一緒がいいそうですし、よろしければこちらの馬車に乗っていただいて構いませんよ」
俺の両親は恐縮しっぱなしだ。
まぁ、側室とはいえ立場が上である彼女の提案には従うしかない。
本当はストレスまみれになるくらいなら、さっさと帰りたいだろうが。
すまん、二人とも。
この国、というか大陸と、俺の(元)恋人の未来がかかっているのだ。
悪いが、巻き込まれてくれ。
そんなこんなで、俺は殿下達の馬車へ乗り込むことに成功した。
この時に知ったのだが、お忍びということもあり殿下達の乗る馬車は一般人用の乗り合い馬車に偽装されていた。
家紋もなにもない。
傍から見れば、小金持ちが貸切にして乗ってきたのだろうとしか思えない。
さて、ここで不思議なことが起きた。
なんと、襲撃が無かったのである。
これには面食らった。
警戒していたのに、馬車はなんの問題もなく喫茶店へ着いてしまった。
どういうことだ、これ??




