十一話目
「は?」
知らず、声が出ていた。
マヌケな声が。
でも、その声は小さすぎて両親は気づかなかったようだ。
考察厨は書き込みを続けた。
――――――
105:考察厨
いやさ、本当にただの妄想だぞ?
それを大前提にきいてほしいんだが
一周目の世界では、この前の襲撃を皮切りに殿下は命を狙われ
大事な人を次々に奪われたがために闇堕ちしたんだよな?
でもさ、龍神族は体が頑丈なんだろ?
少なくとも人間よりは
106:スレ主
まぁ、うん
そうだけど
――――――
龍神族は体が頑丈であることは、この世界では誰でも知っている。
だから、この前の襲撃程度では殿下たちだけだったならせいぜいかすり傷程度で済んだはずだ。
まぁ、結果論でしかないが。
もしかしたら、襲撃者が対龍神族向けの攻撃力を見誤っていた可能性はある。
しかし、なんだろう。
考察厨の書き込みは無視できなかった。
――――――
109:スレ主
考察厨の書き込みから察するに
狙われていたのは、あの場に同席していた俺だったかもって考えてるのか?
110:考察厨
まぁな、一周目の世界じゃ
別のご令嬢だったらしいが
そのご令嬢も、もしかしたら人間族だったんじゃないか?
――――――
俺は与えられた情報を確認してみた。
「……っ」
その通りだった。
一周目の世界で亡くなった公爵令嬢は、皇室の血が入っているから、龍神族の血を引きつつも種族は人間族であった。
つまり、最初からターゲットは殿下ではなかった可能性が出てきた。
しかし、何故だ??
なぜ、人間族をわざわざ狙うんだ??
返答と、疑問をそのまま書き込んでみる。
――――――
113:考察厨
さて、ね
ただ、今回の襲撃だと殿下の母親が死ぬんだろ?
殿下を庇ってさ
そうさせないために、スレ主はわざわざ保護者同伴のデートに漕ぎ着けたわけだ
この妄想がどこまで真実にかすってるかはわからないが
もしかしたら、掠ってすらいない可能性が高い
ただ、殿下が闇堕ちして、龍皇に進化していく過程には、なにか裏がありそうな気がする
114:名無しの転生者
>>113
>殿下が闇堕ちして、龍皇に進化していく過程
いや、ゲームの進化するモンスターキャラみたいにいうなやwww
――――――
ごくり、と喉が知らず動いた。
その時だ、馬車が目的地に着いた。
両親とともに馬車を降り、劇場へはいる。
貴族専用席へと案内された。
そこにはすでに、ノア殿下と母君がいて楽しそうに談笑していた。
ふつうの親子だ。
本当に、ただ演劇を見に来た親子。
ノア殿下が俺たち一家に気づく。
ぱあっと笑顔になって、こちらにやってきた。
「こんにちわ!アイリス!!」
「殿下もご機嫌麗しゅうございます」
「そんな難しい挨拶しないで!
ね、お菓子が沢山あるんだ!
始まるまで一緒にたべよ?」
「えぇ、いいですよ」
子供だ。
どこにでもいる、母親に甘えたい盛りの、お菓子を食べてニコニコ笑う子供。
俺は殿下に手を引かれ、椅子に座る。
目の前には小さめのテーブルがあり、クッキーやチョコが盛られた皿と、果実を絞ったジュースがグラスに注がれ置かれていた。
「これ、美味しいんだよ!
はい、あーん」
クッキーをつまんで、グイッと俺の口元へ半ば押し付けてくる。
こいつ、俺を子猫か子犬と勘違いしてないか??
しかし、身分が上の者からの提供とあっては断るのも失礼か。
俺は唇に押し付けられていたクッキーを食べた。
サクッとした食感と、そのあとに口いっぱいに甘さが広がる。
「おいしい」
「でしょう??」
ニコニコとノア殿下が、さらにお菓子の追撃をしようとしてきた。
それは、母君によって止められてしまう。
「こら!
まったくお行事の悪い。
お恥ずかしいところをお見せしました。
ささ、お二人もどうぞ」
ノア殿下の母君は、俺の両親へ着席するようすすめる。
両親は恐縮しつつ、座る。
それからしばし談笑を楽しんだあと、劇がはじまった。




