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ルシアンの物見遊山 II【毎日更新/21:20】  作者: フジイさんち
ガルドと村娘の三日間騒動

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12/23

【作戦会議は、最終戦】


山間の小さなこの村には、街のような酒場も宿屋もない。

だが、家々の間に火を灯し、村の広場に大きく焚き火を設えて、最後の夜はささやかな宴となった。


「明日には行っちまうのか」

「もうちょい居てもいいんだぞ」

「仮道が崩れたら、また呼ぶしな!」


復旧が終わった高揚と酒の勢いもあってか、男衆が次々にガルドの肩を叩いていく。

村の娘たちは娘たちで、火のそばに集まり、こそこそと打ち合わせていた。


「さすがに今日は……仕留めたいよね」

「ガルドさん、お酒強いけど……身体は疲れてるはず……」

「よし、今夜は"連携作戦"で行こう!」


――とはいえ、突撃するのは一人ずつである。


なんの決意表明か、女たちがルシアンを振り返り、うん、と力強く頷いて見せる。それを受けたルシアンも、半ば可笑しそうに肩をすくめた。




ゆらゆらと焚き火の明かりに照らされながら、夜は次第に深まっていく。風が冷たいが、火の熱がそれを和らげていた。


特別な"夜更かし"にテンションの上がった子どもたちは、早々に体力を使い果たし、寝ぼけまなこで家に連れ戻されていく。

老人たちも、ルシアンとガルドに何度も頭を下げ、家路へ。今は若者たちだけが残っていた。


残りの酒を回し合いながら、男たちは焚き火を囲んで過ぎた三日間を振り返る。笑い声も穏やかで、疲労の中にも満足の気配がある。


「おい、旦那!これ食ったか?山椒の香草漬けだ!」

「……うまいな」

「だろ?俺の嫁がな、すげー自信作だってさ。アンタに食わせたかったらしいぞ!」


肩を揺らして笑う男に、ガルドが眉を寄せながらも一口、また一口と手を進める。

そんな様子を遠巻きに見ていた娘たちが、――そろりと、立ち上がった。


「……第一陣、行きます」

「行ってらっしゃい……っ」

「お願い……膝くらいまでは……っ」


膝……?と首を傾いだルシアンを目の端に、火の明かりに照らされ、娘が一人、ガルドのほうへと向かっていった。その背を、ほかの娘たちが、ひそやかに見送っている。


ルシアンは温かな飲み物の杯を手に、銀の瞳を細める。

まるで舞台を楽しむ観客のように、心の中で小さく拍手を送っていた。




第一陣は、酒壺を持っていた。


村の男を押しのけ、ガルドのすぐ真横に座る。もう遠慮している場合ではない。

酒を注ぐ姿勢に紛れて……胸元を強調する。

一瞬じっと赤い視線が落ちるが、――肘で押しのけられる。


「……ちけぇ」


――一人目は、肩を落として帰ってきた。




第二陣は、腿まで露出した腰布を巻いていた。


こちらも男性陣を軽く押しのけ、ガルドにぴったりとすり寄って座る。

足をガルドの膝に乗せれば、もう少しで腿の隙間が見えそうであった。

男衆がハラハラと横目で見ている。

ガルドは自分の足にのしかかる生足を見下ろし、――がしりと掴んで引き離した。


「やめとけ。冷えんぞ」


――二人目は、腰にひざ掛けを巻いて帰ってきた。



第三陣に見舞われる前に、ガルドがため息をついて集会所へと引っ込んでいく。

ありゃ逃げたな……、とその場にいた誰もが思ったが、村の中にいる限り逃げ場などない。

舞台が変わるだけであった。



娘たちは、すでに屋内へと照準を合わせていた。

焚き火のそばで肩を抱き合いながら、小声で打ち合わせを続ける。


「布団、二枚あったよね……?」

「誰か、先に潜っておけば……間違って入ってくるかも」

「もしくは、脱ぎかけの服を……あっちに、こう……置いて……」

「いい……いい……その自然なやつ、いい……!」


ルシアンは、そんな会話を横目に、杯の果実湯を一口。

柔らかな微笑みの裏で、すでに想像がつく。布団の中に誰かが潜んでいる未来。

そしてそれを容赦なく掴み上げて、玄関まで持ち運ぶ無慈悲な未来。


――娘たちの目が一斉にルシアンを見やる。

助けて、と言わんばかりの視線。だがルシアンは、言葉にするでもなく、やんわりと首を横に振った。


――それは、彼の個人的なことですので。


まるでそう言うかのように小さく微笑み、杯を飲み干す。

娘たちが「え~~」と声を漏らす中、次の戦への準備も着々と進んでいった。






――【作戦会議は、最終戦】

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