主人公は誰?
「センチュリー・パーク行きの列車は、1分後に発車します」
どうも、また会ったな。
デイビッドだ。
今、俺はケイと一緒に、学校へ向かう列車に乗っている。
前の話で会ったと思うけど、改めて紹介しておこう。
こいつがケイ・トンプソン。
俺の親友の一人……。
そして、幼馴染でもある。
認めよう。
こいつは元気で、カリスマ性もあって……。
そして、残念ながらイケメンだ。
……いや、イケメンすぎる。
たまに、こいつの近くにいるだけでイラッとする。
例えば、今みたいに。
俺は列車内を見回した。
特に、俺たちと同じくらいの年齢の女子たちを。
「えっ……何あの人。めっちゃカッコいい……」
「有名な子役モデルなんじゃない?」
「だよね? 絶対そうだよ」
黒い口紅に、魔女ですら引くほどのアイラインを引いた、いわゆる不良っぽい女子たちまで、こいつを見つめている。
「マジで、あいつとセックスしたいんだけど」
「あたしが先にツバつけたから」
俺の心の中。
いやいやいや……。
こいつら、何歳だよ!?
まるで、俺の存在なんて最初から見えていないみたいだった。
すぐ隣に座っているっていうのに。
俺は完全に空気だった。
俺はすぐに彼女たちから顔を背けた。
そして――
目から涙が一気に溢れ出した。
そもそも、主人公って誰なんだよ?
俺が主人公だろ。
せめて一人くらい、俺に気づいてくれてもいいんじゃないのか!?
すると、後ろから――
「おい、大丈夫か?」
ケイが俺の背中を軽く叩いた。
「触るな、このセックスドライバー」
ケイは首を傾げた。
「セックスドライバー?」
「それ、どういう意味だよ?」
「聞いたままの意味だ」
ケイはため息をついた。
「ったく……」
「少しは感謝しろよ」
「お前の足をあの分厚い氷から取り出すの、簡単じゃなかったんだからな」
「ああ……俺をトラウマにしたことか?」
「少なくとも、ちゃんと助かっただろ」
「チェーンソー使っただろ!!」
ケイは後頭部をかいた。
「まあ、覚えておいてくれよ……」
「最初はちゃんと、ノミと大ハンマーを探してたんだからな」
俺の想像力が暴走した。
氷の中に閉じ込められた自分を想像する。
その氷に、ケイが慎重にノミを差し込んでいる。
そして――
大ハンマーを振り上げる。
まるでゴルフコースでティーショットを打つ直前みたいに。
ズガァン!!
――現在。
「そっちのほうが最悪だろ!!」
「完全にトラウマだわ!!」
はぁ――。
まあ……。
こいつはムカつく奴だけど……。
そばにいてくれることにも、それなりのメリットはある。
少なくとも学校では、俺は目立たない。
ただ背景に溶け込んで――
なぜかこの学校に通っている、子供インフルエンサーや有名人なんかとは関わらないようにしている。
まあ……。
そもそも、俺たちの学校自体が普通じゃないんだけどな。
かなりカオスだ。
今学期こそは、普通の学生として過ごせますように。
列車が停車した。
車椅子に乗った年配の女性が、降りようとしていた。
ケイはすぐに立ち上がった。
「ちょっと待って、おばあちゃん」
「あら、ありがとうね」
ケイは慎重に彼女の車椅子を押しながら、列車を降りていった。
しばらくして、ケイが戻ってきた。
そして、また俺の隣に座る。
女子たちは、もはや溶けそうになっていた。
「うわぁ……」
「優しい……」
「理想の旦那さん……」
……なあ。
さっきまでの俺の発言、全部撤回するわ。
そして、そのまま――
俺たちは学校に到着した。
またしても……。
世界は公平じゃない。




