ケイ・トンプソン。
俺の名前は、ケイ・トンプソン。
この日常系ストーリーの主要人物の一人だ。
そして――
主人公、デイビッド・カーターの親友でもある。
ちなみにデイビッドと違って――
俺は白人だ。
今、俺はクレアビュー・トランジット・センターへ向かっている。
デイビッドと合流して、あいつに頼まれたものを渡すためだ。
……いや。
頼まれたというより――
泣きつかれた。
話は今朝にさかのぼる。
学校へ行く準備をしていた、その時だった。
ブブブッ! ブブブッ!
スマホが震え始めた。
俺はスマホを手に取った。
「おおお! どうした、デイビッド! 元気か?」
デイビッド「…………」
「もしもし? いるか?」
デイビッド「ケ、ケ、ケイ……」
「おい、大丈夫か?」
デイビッド「ケイィィィ!! 頼む!! 助けてくれぇぇぇ!!」
「うわっ! お、おい、落ち着けって」
俺は一旦止まった。
「ちょっと待て……」
「お前、外にいるのか?」
その頃、デイビッドは――
道路のど真ん中に立って、スマホに向かって叫んでいた。
パキッ……ギギギ……
むき出しになった両手には、分厚い白い霜が這うように広がっている。
デイビッド「さ、さ、さむい……」
「お前、こんな時間に何してんだよ……って、ちょっと待て」
俺はスマホで時間を確認した。
午前七時二十分。
「授業が始まるの、九時十五分だぞ」
デイビッド「な、長い話なんだ……」
「はぁ……」
「で、何が必要なんだ?」
デイビッド「ジャケットが必要だ……今すぐ。大至急」
「……は?」
「お前のあのクソ安いパーカーはどうした?」
デイビッド「おい! あのパーカーは安物じゃねぇ!! バカにするなぁぁぁ!!」
……。
こいつ、急に『鬼滅の刃』の煉獄みたいな喋り方になったぞ。
デイビッド「あのパーカーはノクスラ・ブランドだぞ!! 最高級繊維を使ってるんだ!!」
「はいはい」
「そのパーカー、チャイナタウンの古着屋で十二ドルくらいで買ったやつだろ」
デイビッド「…………」
「何か言えよ」
デイビッド「……まあ……最近の中国製品は品質が上がってるからな」
「へぇ?」
「じゃあ、TIMOとかALIEAs EXでネット注文すればいいじゃん」
デイビッド「前にそれやって、どうなったか知ってるだろ?」
「へへへ」
デイビッド「もうその話は忘れろぉぉぉ!!」
「こっちは死にそうなんだぞぉぉぉ!!」
「分かったよ……」
「クレアビューで会おう」
---
――現在。
うん。
そういうことがあった。
クレアビュー・トランジット・センターに着いたが、デイビッドの姿がどこにもない。
「ったく、デイビッド……」
「どこにいるんだよ?」
ブブブッ! ブブブッ!
スマホが鳴った。
俺はスマホを取り出し、電話に出た。
「デイビッド、どこにいるんだよ?」
「ずっと探してるんだけど」
デイビッド「えっと……それがな」
「どうした?」
デイビッド「どうやら……迎えに来てもらわないといけないみたいだ」
「は?」
デイビッド「動けない。」




