さすがカナダ。
学校へ向かう俺。
……のはずだった。
「寒っっっっ!!」
もう嫌だ。
寒すぎる!!
「もう……なんで母さん、俺が持ってる唯一のパーカー燃やしたんだよ……」
俺は両腕をさすりながら、ガタガタ震えた。
冷たい風が服の隙間から容赦なく入り込んでくる。
そして。
全部あいつのせいだ。
---
――回想。
「おはよー、お兄ちゃん!」
ニヤァ。
リズィの顔に、とても悪そうな笑顔が浮かんでいた。
「…………」
俺の顔に青筋が浮かぶ。
こいつ……。
「殺してやる!!」
「首絞めてやる!!」
「いや、いっそ絞め殺して――」
「…………」
俺は深いため息をついた。
……まあ。
起きてしまったことは仕方ない。
---
俺は家の前にあるバス停で足を止めた。
「…………」
頼む。
今日はもう、これ以上悪くならないでくれ。
……。
……誰に言ってるんだ、俺。
これは俺の人生だぞ?
そんな簡単に終わるわけがない。
---
「…………」
三十分後。
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!!」
「バス来るまで何分かかるんだよぉぉぉ!?」
俺はガタガタ震えながら、ポケットからスマホを取り出した。
いったい、いつになったら来るんだ?
俺はスマホを取り出し――
バスの時刻表を確認する。
「えーっと……」
次のバスは――
「…………」
「…………」
「五十分後!?」
「…………」
「は……」
「はは……」
俺の魂が。
口からスゥ……っと抜けていくような気がした。
「…………」
もう笑うしかない。
ついさっき。
これ以上悪くなることなんてないと思ったばかりなのに。
……。
「…………」
「もう駅まで歩いた方がいいな」
俺は呟いた。
「向こうであいつに会えるかもしれないし」
その瞬間。
ビュオォォォォッ!!
猛烈な冷風が吹き抜けた。
「うおっ!?」
俺は慌てて両腕を抱きしめる。
「さっむぅぅぅぅぅ!!」
……。
まあ。
ここでバスを待って凍死するよりはマシだ。
俺は歩き出そうとした。
……が。
「…………」
動けない。
「……ん?」
俺は足元を見る。
「…………」
両足が。
巨大な氷の塊に包まれていた。
「…………」
「…………」
俺はしばらく、それを見つめた。
そして。
「……へぇ」
「俺の足、凍ってる」
淡々と呟いた。
「…………」
さすがカナダ。




