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うん…これが俺の人生だ

「今朝何があったのか――」


「三人とも全部説明しなさい!!」


「…………」


ゴクリ。


「そして、話が終わるまで誰一人この家から出るな!!」


その瞬間。


俺は悟った。


うん。


これはもう――


俺たち、終わった。


母さんは腕を組んだ。


そして、ゆっくりと俺たち三人を見回す。


「さて……」


「話してもらおうかしら」


母さんは大きく息を吸った。


そして――


「どうして……」


「この家は……」


「朝の六時から、あんなにクソうるさかったの!?」


「…………」


俺はゆっくりと手を上げた。


「か、母さん……」


「その……」


「俺は何もしてないんだ」


「ただ学校に行く準備をしてただけで……」


「そしたらリズィが俺のパーカーを着てて……」


「それで――」


母さんはリズィの方を向いた。


「リズィ」


「は、はい! お母さん!」


「そのパーカーを私に渡しなさい」


「それから、二階へ行って」


「…………」


リズィは飛び上がるように立ち上がった。


そして、ゆっくりと俺のパーカーを脱ぐ。


……俺を睨みながら。


めちゃくちゃ睨みながら。


母さんが目を細める。


「ちょっと」


「私をイライラさせるんじゃないよ」


「は、はい! お母さん!」


リズィは急いでパーカーを脱いだ。


母さんに手渡す。


そして――


ダッシュで二階へ逃げていった。


「…………」


助かった。


神様ありがとう。


これで俺は平和にパーカーを受け取って、学校へ行ける。


「ありがとう、母さん」


俺は手を伸ばした。


さあ。


今度こそ学校へ――


母さんは手に持ったパーカーを見下ろした。


「さて……」


「これは、どこで燃やそうかしら?」


「…………」


「……は?」


母さんがゆっくりと顔を上げる。


そして。


パーカーを待つ俺の手を見る。


俺の腕は――


まだ伸びたまま。


「何?」


「何か欲しいの?」


「い、いや……」


「何も」


「ただ、その……」


「……その?」


母さんが眉を上げた。


「その、何?」


「…………」


やべぇ!!


何も思いつかない!!


英語が出てこない!!


俺は助けを求めるように父さんを見る。


父さん……。


頼む。


ちょっと助けてくれ。


父さんは目を閉じた。


そして両手を組む。


まるで祈るようなポーズを取った。


「こいつは……」


「祈ってたんだ」


「…………」


…………祈ってた?


数ある言い訳の中から――


それを選ぶのか!?


父さんは続けた。


「ほら、ハニー」


「今朝は色々と騒がしかっただろ?」


「そのせいで、家族の朝の祈りを忘れてしまったんだ」


「だから、長男であるデイビッドが……」


「家族のために、ちょっとした祈りを捧げようと思ったんだ」


「……」


「みんながそれぞれ一日を始める前にな」


「…………」


何言ってんだこの人!?


どうしてこんなにスラスラ嘘が出てくるんだ!?


母さんが俺を見る。


「祈ってた?」


「そうなの?」


「は、はい……母さん」


「ちょうどいい機会だと思って……」


「みんなで手を掲げて、心を主に向け……」


「俺たちのすべての罪をお許しくださいって……」


父さんが勢いよく頷く。


「そうだ! 主よ!!」


「…………」


ノリノリじゃねぇか。


母さんはニッコリ笑った。


「そう……」


「なるほどね」


そして。


ゆっくりと手を伸ばす。


その手には――


俺のパーカー。


俺の腕も、まだ伸びたまま。


パーカーを待っている。


母さんは俺の手の上に、そっとパーカーを置いた。


だが。


手を離さない。


「…………」


ニヤッ。


嫌な笑顔。


「それなら――」


「天から聖なる炎が降りてきて……」


「このパーカーを焼き尽くしてくださるように、祈ってみたら?」


「…………」


一瞬。


ほんの一瞬だけ。


俺は思った。


もしかして――


俺たちの作戦、成功したんじゃね?


……。


なんでだよ!?


目に涙が一気に溜まった。


母さんが首を傾げる。


「どうしたの?」


「できないの?」


「か、母さん……」


鼻をすする。


「ぐすっ……」


「ご、ごめんなさい……」


涙が頬を伝っていく。


「もう……」


「もう嘘つきません……」


俺はゆっくりと父さんを見る。


父さんは歯を食いしばっていた。


目を大きく見開いている。


まるで――


「息子……」


「お前、何してんだ!?」


と言いたげな顔だった。


「か、母さん……」


「本当にごめんなさい!!」


母さんは長いため息をついた。


「……もう」


「分かった」


「許してあげる」


「…………」


俺は顔を上げた。


「本当に!?」


母さんは頷いた。


俺の顔に、満面の笑みが広がる。


許された……!


俺は――


助かった!!


「ただし」


「…………」


笑顔が止まる。


「あなたが父さんみたいな人間にならないように――」


「……え?」


母さんの拳が。


ゆっくりと持ち上がる。


「…………」


嫌な予感。


その拳が。


ゆっくり。


ゆっくりと。


スローモーションのように。


俺の顔へ向かって――


「…………」


そして。


――暗転。


---


……。


まあ。


色々あった。


俺は玄関から外へ出た。


顔には包帯が巻かれている。


「…………」


スマホを見る。


午前七時十五分。


「まあ……」


「遅刻はしないだろ」


俺はそう呟いた。


その時。


ビュオォォォォ……


冷たい風が通りを吹き抜けた。


雪が空から舞っている。


「…………」


気温――


マイナス十八度。


「さっむ……」


俺はブルブル震えながら、自分の身体を抱きしめた。


そして。


俺の視線は、自分の服へ向かう。


俺の愛しのパーカー。


「…………」


安らかに眠れ。


どうやら俺は。


新しいパーカーを買う必要があるらしい。


……母さんが燃やしたからな。


「はぁ……」


俺はバス停へ向かって歩き始めた。


「…………」


そういえば。


父さんはどうなったんだろう?


俺は足を止めた。


顔から、ゆっくりと血の気が引いていく。


「…………」


……何となくだが。


知らない方がいい気がする。


「…………」


うん。


俺には関係ない。


そういうことにしよう。


俺は再び歩き始めた。


さて。


今日はこのあと、宇宙が俺にどんな問題を投げつけてくるんだろうな?


「…………」


ため息。


「それも……」


「知りたくないな」


そして。


俺は学校へ向かって歩いていった。


「うん……」


「これが俺の人生だ。」

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