最終ボスが。
召喚されてしまった。
……。
最終ボスが。
「父さん、何してんだよ!?」
「俺たちを殺す気かぁぁぁ!!」
俺は凍りついた。
「……いや」
目を見開く。
「俺を殺す気だぁぁぁ!!」
父さんは、まだ笑っていた。
「さっき受けた無礼への罰だ」
「でも悪いのはリズィだろ!?」
俺は勢いよくリズィの方を振り返った。
そして、その肩を掴む。
「お前のせいだぞ!!」
「少しは分かれ!!」
「この家の頂点に逆らうんじゃねぇ!!」
ガクガクガクガクッ!
「おい、ちょ――!」
俺はさらに激しく揺さぶる。
「父さんに睨み返したりしたらな!」
「封印されてた魔獣が解き放たれるんだよ!!」
「分かったか!?」
そこで俺は、ピタッと動きを止めた。
ゆっくりとリズィの顔に近づく。
俺の目には、純粋な恐怖が浮かんでいた。
「……謝れ」
「今すぐ」
「母さんがここまで降りてくる前に」
俺は階段の方へ視線を向ける。
「……さもないと、巻き添え食らうぞ」
リズィの顔が恐怖に染まった。
だが。
その直後。
「だ、大丈夫だし!」
急に平静を装い始めた。
「わ、分かった! 謝る!」
父さんは何事もなかったかのようにリビングへ向かった。
ソファに座る。
テレビをつける。
そして――
普通に見始めた。
リズィもその後をついていく。
……すると。
さっきまでの彼女とは別人のように、態度が変わった。
父さんの前まで歩いていく。
顔には、これ以上ないほど無邪気で可愛らしい笑顔。
「えっと……お父さん?」
父さんがちらりと彼女を見る。
「さっき『イヤ』って言って、お父さんに失礼なことを言って……」
リズィは両手を後ろで組んだ。
「ごめんなさい」
「もう二度としません」
「…………」
父さんはしばらくリズィを見つめた。
そして。
何事もなかったようにテレビへ視線を戻した。
「別に、お前ら二人くらい俺一人でどうにでもできる」
「…………」
父さんは一息つく。
「ただ、今日は仕事でやってるプロジェクトに、できるだけ体力を残しておきたい」
そして――
階段を見る。
「だから、今回は誰かに任せた方がいいと思ってな」
一拍。
「……俺より適任の人にな」
「…………」
その瞬間だった。
家が――
揺れた。
ドン……
ドン……
ドン……
階段を一段下りるたびに、その音が大きくなっていく。
「…………」
俺は固まった。
「……やべ」
「来た……!」
ドンッ!
リズィの体が震え始めた。
ドンッ!
家全体が揺れる。
「う、うわぁぁぁ!?」
リズィはバランスを崩した。
そして――
ドサッ!
仰向けに倒れた。
「…………」
父さん?
テレビを見ていた。
何も気にしていない。
そして。
「フッ……」
小さく笑う。
口元がニヤリと歪んだ。
「ここからが面白いんだ」
「…………」
そして――
リズィが泣き出した。
「お父さぁぁぁん!! お願いぃぃぃ!!」
床から飛び起きる。
そのまま父さんに飛びつき、必死に腕へしがみついた。
「死にたくないぃぃぃ!!」
「お願いだから助けてぇぇぇ!!」
「うわぁぁぁぁぁん!!」
「うわぁぁぁぁぁん!!」
父さんは、腕にしがみつくリズィを見下ろした。
ほんの数分前。
父さんの目を真正面から見つめて――
「イヤ」
そう言い放った少女。
それが今では。
命乞いをしている。
……。
そして父さんは。
リズィの目をまっすぐ見た。
ニコッ。
笑った。
そして――
「イヤ」
「…………」
「…………」
「…………」
リズィの頭の中に、その二文字が響き渡る。
イヤ。
イヤ。
イヤ。
「…………」
顔から完全に血の気が引いた。
そして――
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
完全崩壊。
泣く。
泣く。
ひたすら泣く。
「うわぁぁぁぁぁん!!」
「お父さぁぁぁん!!」
「…………」
しばらくして。
突然――
静かになった。
「…………」
リズィはゆっくりと俺の方へ顔を向ける。
そして。
これ以上ないほど無邪気な顔を作った。
「……お兄ちゃん?」
「こっち見るな!!」
俺は即座に指を突きつける。
「お前、俺まで道連れにしただろ!!」
「…………」
その時だった。
ドン……
ドン……
ドン……
階段を下りる音が、まだ続いている。
そして――
ついに。
彼女が階段の一番下まで降りてきた。
「…………」
そこに立っていた。
母さん。
メアリー・カーター。
その身体から漂う圧倒的な威圧感。
まるで――
深淵そのもの。
空気が重い。
息をするだけで苦しい。
「…………」
そして。
母さんが口を開いた。
「さっきから……」
一拍。
「何の騒ぎなの!?」
「うおおおおおおお!?」
恐竜かよ!?
いや、本当に恐竜みたいな声だった。
家全体が震える。
窓までビリビリと揺れた。
母さんの目が部屋中を駆け巡る。
何がこの騒ぎを起こしたのか。
その原因を探している。
そして――
見つけた。
床に散らばったマグカップの破片。
その周囲に広がるコーヒー。
母さんの目が細くなる。
「…………」
そして次に。
犯人を探すように、周囲を見回す。
その中で。
一番近くにいた人間を。
……。
俺は。
その時になって初めて気づいた。
自分が今、どこに立っているのかを。
俺。
現場から――
約三フィート。
つまり。
めちゃくちゃ近い。
俺は床を見る。
割れたマグカップ。
次に周囲を見る。
父さん。
安全。
リズィ。
安全。
俺。
現場から三フィート。
「…………」
俺も、リズィと同じ計算をした。
全員、安全圏。
ただ一人を除いて。
俺だけが。
証拠品のすぐそばにいる。
「…………」
「…………」
「…………」
……。
やべ。
俺――
終わった。
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『うん……これが俺の人生だ。』の第2話、いかがでしたか?
この作品は、家族との日常や学校生活を中心に、コメディ、アクション、ドラマなどを混ぜながら、デイビッドの人生を描いていきます。
もし少しでも「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけたら、感想や評価をもらえると、とても励みになります。
「ここ好きだった」「このキャラ気になる」みたいな一言だけでも大歓迎です。
それでは、また次の話で。
ノクスラ LT




