うん… 詰んだ。
みんな、うちの母さんのことは知ってるよな……。
あの人がどれだけヤバいかも。
さて……。
速報だ。
母さんには妹がいる。
普段は、母さんよりずっと明るくて……。
俺のことをめちゃくちゃ可愛がってくれる。
だが、怒らせると……。
その姿は……。
母さん2.0。
とはいえ、母さんと違って……。
この人なら、俺でもどうにかできるときがある。
こんな言葉がある……。
「オリジナルに勝るものなし」
もう一つ言っておこう……。
別に、スタイルが抜群ってわけじゃない。
たぶんCカップくらいか……。
だが、マジで……。
めちゃくちゃ美人だ。
教室の男子全員が、彼女から目を離せずにいる。
そんな中、俺はいつもの主人公ポジションにいた。
机に腕を置き……。
窓の外を眺めている。
主人公ってのは、そういうものだ。
彼女の授業は聞こえてくる……。
だが、正直……。
まるで別の言語を聞いているみたいだった。
彼女は教室の前に立ち、机のパソコンに映したノートを見せていた。
パソコンはプロジェクターにつながっていて……。
ノートがホワイトボードに映し出されている。
彼女はスクリーンを指さした。
「はい、34ページを見て」
「文化の均質化について考えるとき、みんなに考えてほしいのは……」
「多国籍企業は、本当に世界をつなげているのか……」
「それとも、地域ごとの文化を破壊しているだけなのか、ということよ」
……何言ってんだ、この人?
それに、こいつらもどうかしてるだろ。
俺はクラス全体を見回した。
女子たちが、ひそひそと話していた。
「わあ……」
「めっちゃ綺麗……」
「どんなスキンケアしてるのか聞きたいな」
ああ、信じてくれ。
特別なことなんて何もしてない。
石鹸と水とベビーオイルだけだ。
男子たちも話していた。
「やべえ……」
「マジで美人だな」
「Eブロックに、もうファンクラブがあってもおかしくないだろ」
「俺、ついに見つけたかもしれない……!」
……何を?
「運命の人を」
悪いな、兄弟……。
彼女、お前の母親でもおかしくない年齢だぞ。
どうやら、彼女の姉は19歳のときに俺を産んだらしい。
そして、俺は15歳。
はぁ……。
俺は窓の外を眺めた。
へえ……。
ここからでも、NEXUSタワーが見えるのか。
この学校、本当にデカいな。
ああ、疲れた……。
ちょっとだけ寝るか。
俺は机に頭を伏せた。
その瞬間――。
マーカーが光の速さで飛んできた。
ヒュンッ!!
だが、俺は頭すら上げずに……。
手だけを持ち上げた。
そして、二本の指でマーカーを挟んで受け止めた。
バンッ!!
あまりにも速すぎて、誰も気づかなかった。
彼女は何事もなかったかのように授業を続けていた……。
一方、俺には彼女の心の声が聞こえていた。
『授業中に寝るなんて、よくないことだって分かってるわよね?』
……ちなみに、俺はまだ机に頭を伏せたままだ。
『おいおい、叔母さん……。』
『もっと上手くやれよ。』
『昔はもっと正確に投げられてただろ。』
『どうしちまったんだ?』
『まさか……老化か?』
俺はマーカーを、同じ速度で彼女に投げ返した……。
ヒュンッ!!
彼女は授業を続けながら……。
腰のすぐ横で、それをキャッチした。
バシッ!!
彼女は微笑んだ……。
だが、片目がピクピクと動いていた。
彼女の心の中では……。
『へえ……。』
『口答えするだけじゃなく……。』
『この私を侮辱する度胸まであるの?』
『ずいぶんと大胆な甥っ子ね。』
俺は顔を上げ……。
意地の悪い笑みを浮かべながら、彼女を睨みつけた。
『で?』
『どうするつもりだ?』
『俺を抱きしめ殺すのか?』
彼女も笑みを返してきた。
ただし、その笑顔は……。
純度100%の悪意に満ちていた。
『まあ……。』
『幸いなことに……。』
『あなたの先生である以上、あなたの弱点を利用できるわね……。』
彼女は少しだけ首を傾けた。
『それが何か、今さら説明する必要はないわよね?』
俺は口をぽかんと開けた。
待て……。
何だって?
彼女は微笑んだ。
そして、口を開いた。
「デイビッド」
「そう、あなたよ」
彼女は俺をまっすぐ指さした。
「窓のすぐ隣に座っている、そこの男子」
俺の顔から血の気が引いた。
何してんだよ!?
彼女はウインクした。
『――これは仕返しよ。』
クラス全員が、即座に俺のほうを振り向いた……。
全員、見事に同時に。
うわああああ!!
俺はみんなを見た。
全員の視線が、文字どおり俺の魂をえぐっていた。
今すぐケイにここに来てほしい!!
俺はゆっくりと立ち上がった。
「は、はい、オリビア先生……」
彼女は口元を覆った。
明らかに笑いをこらえている。
『あら、今度は「先生」って呼ぶのね?』
俺の目がピクッと動いた。
『そう呼ぶしかない状況にしたのは、そっちだろ。』
彼女はクラスのほうへ向き直った。
「さて……」
「グローバリゼーションとは何か、説明してくれる?」
「…………」
……うん。
詰んだ。
「よっ、デイビッドだ。えーっと――」
「リズィィィィ!!!」
「一秒でいいから黙れぇぇぇ!!」
「いやいや、兄ちゃんはちょっと下がってなって!」
(……いや、これ俺の物語なんだけど……)
「みんな元気ー!? ビートに乗って登場、リズィだよ!! パパラララ!!!」
「みんな、私たちの物語を楽しんでくれてるかなー!?」
(いや、俺の物語だろ、この寄生虫!!)
「もっと私を見たい人は、下のブックマークボタンを押してね!」
「何か言いたいことがあったら、コメント欄から作者に直接伝えてね!」
「それか、笑顔の絵文字を残してくれたら、私も笑顔になっちゃうよ!」
「読んでくれてありがとう! それじゃあ、また次回――」
「うん……これが俺の人生だ。」
「よし、マイクを返せぇぇぇ!!」
「へへっ! まずは私を捕まえてみなよ!」
「あはははは!」
「リズィィィィ……!!!」




