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第9章 後編 「これから先へ」
卒業式の最後の校歌が響き渡り、
拍手が静かに鳴りやんでいく。
私たちは教室に戻った。
クラスはまだざわめいていて、机の上には色とりどりの寄せ書きや写真が残されている。
彼と並んで座り、少し照れくさそうに笑いながら、寄せ書き帳に短い言葉を書き合った。
彼が小さな声で言った。
「ここ、書くね」
「ありがとう」
私も自然と返した。
そのやり取りだけで、胸がぽかぽかと温かくなる。
教室の窓から差し込む光が、いつもより優しく感じられた。
集合写真を撮るとき、彼がそっと手を差し出してくる。
「こはるちゃん、行こう」
その声に、私は笑顔で応じる。
「うん、楓君」
カメラのシャッターが切られる瞬間、クラスメイトから小さなざわめきが起きた。
「知らなかったんだけど」という声に、私たちは顔を見合わせ、照れくさそうに笑う。
けれど、それだけで十分だった。
クラスメイトが一人、また一人と帰っていき、教室に残っている人数も少なくなっていく。
彼がそっと手を差し出す。
その手を見つめながら、私は小さく息を吸った。
「これからも……続けていこうね」
小さな声でそう言うと、彼はにっこりと笑って、
「もちろん」
と応えてくれた。
校舎の外に出ると、春の匂いがほんのりと漂っていた。
まだ少し冷たい風に頬を撫でる。
私は、そっと隣を見た。
——この先も、きっと。




